棚上げ「LGBT法案」なにが問題?「成立断念」本当の理由 | FRIDAYデジタル

棚上げ「LGBT法案」なにが問題?「成立断念」本当の理由

自民は今「党内をまとめられない」という深刻な事実が露呈した…

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性的少数者への「理解増進」を図る初めての法律「LGBT法案」は、与野党合意案ができたにもかかわらず、「国会への提出断念」という異例の事態に陥っている。自民議員の問題発言も相次ぎ、その釈明に追われるなか、与党によるあっけない「放り出し」に、驚きが広がっている。

与野党合意で成立に向かっていた「LGBT法案」が頓挫している。自民議員の差別発言に抗議するオンライン署名活動、24時間シットインが行われた。LGBTの人権を守る法案が通らない本当の理由は…  写真:時事通信

1日、立憲民主党の福山哲郎幹事長は「LGBT法案は今国会で成立させたい」と強い決意を示した。野党各党も「今国会での成立を」と口を揃えている。

いったい、なにが起きているのか。

与党・野党が協力して進めてきた大きな「課題」

もともと「LGBT法案」は、超党派の議連によって検討されてきた日本の大きな「課題」のひとつだ。

恋愛の対象が同性という人、自分の性別への違和感をもつ人は少なくない。人口のおよそ8〜10%という調査もある。この法律が求めているのは、どんな「性的指向」「性自認」をもっている人も、個人として尊重され、人権をもつ、というごく当たり前のことだ。が、たったこれだけのことを「法律」にするのに、すでに長い長い時間がかかっているのだ。

ここまでの議論のなかで、当事者たちはずいぶんと傷ついてきた。

2015年に、一橋大学法科大学院で、ゲイの男性が転落死する事件があった。この男性は同性の同級生に恋愛感情を告白、その後、告白された男性が、彼がゲイであることを同級生らに暴露していた。これは「一橋大アウティング(LGBTに対して、本人の了解なしにその性的指向などを暴露すること)事件」とよばれている。

遺族が起こした裁判で、遺族の請求は棄却された。が、東京高裁は判決理由のなかで「アウティングは人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為であることは明らか」と言及、これはアウティングの違法性を指摘する日本初の判決となった。

今回の「LGBT法案」に関する議論は、こういった裁判所の判断や社会情勢をふまえ、与野党がやりとりを重ねて「合意案」を作って進められてきた。実務責任者による合意、政策委員会も通過していた。

恥ずかしすぎる暴論は、なんのためか

そこで飛び出したのが、山谷えり子議員の暴論や簗(やな)和生議員の差別発言だ。LGBTを揶揄(やゆ)する山谷発言、性的少数者は「生物学的に自然に備わっている『種の保存』にあらがってやっている」という簗発言には、当事者だけでなく多くの国民が戸惑い、呆れた。両議員と自民党に対する抗議の署名は10万筆にのぼった。

「じつはこの発言は、自民党内閣第一部会の席上、LGBTに関する識者の講演と『一橋大アウティング事件』遺族の話が紹介された直後の発言でした。それだけに、野党だけでなく与党議員にとっても衝撃でした」(野党議員)

そして、発言への世論の反発が伝えられると、同2回目の会合では、あろうことか「簗議員を守るぞ!」と気勢を上げる声が廊下まで響いたという。ちなみに簗議員はかつて、特定の民族や人種に対する憎悪表現(=ヘイトスピーチ)の規制に「反対」をしている。

海外では、同性婚や登録パートナーシップ制を導入し、同性カップルの権利を保障する国は多い。日本でも、茨城県や多くの自治体が「差別禁止」を規定、東京・豊島区や港区などいくつかの自治体では、アウティングを禁止、パートナーシップ制度もすでに導入している。こういった自治体の動きに対し、国の対応は「周回遅れ」といわざるを得ない。今回の法案でも「差別禁止」の文言を入れるべきという野党に対し、自民党が強く反発していた。そのやりとりのなかで「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」案という「合意案」が作られたというのが経緯だ。

「先行する各自治体では差別を明確に禁止しています。とくに豊島区の条例は、差別の禁止だけでなく、差別を受けた場合の救済措置も明記されていて完成度が高い。日本各地の条例の『お手本』といわれています。

それに比べると今回の法案は、ぐっと内容が薄い。救済措置はおろか『差別禁止』すら謳っていません。2周も3周も遅れているんです。点数をつけたら100点満点で25点くらい。それすら通せない、通したくないというのは『差別を温存したい』という意図しか感じられません」(地方自治体議員)

長い議論と、当事者の苦悩、社会の意識を考えたとき、この法案をたんに「時間がないから」という理由で放り出すのはあまりに怠慢だろう。LGBTを「毛嫌い」する人が、議員のなかにも、社会にも一定数存在する。が、だからといって、人の「人権を守る」という法律を通さない理由にはならない。「LGBT法案」を通したことで「損をする」人はだれもいない。

自民党内の「まとめられなさ」が障壁だった

2日、自民・下村博文政調会長の会見から「自民・立憲が法案断念で合意」という報道が流れた。これに対して立憲・枝野幸男代表は自身のTwitterで

「合意という事実はない。議連でまとめたものを速やかに成立という考えに変わりはありません。自党をまとめられなかったことに、他党をまきこまないでいただきたい」

と断じた。自民党の法案推進派は、幹事長に直談判をしているという。

「自民党が原因なのに『立憲と合意』と発表するとは、意地が悪い。野党はいつでも法案を通す準備ができています。与野党の実務者で合意したこの法案が通らないのは、自民党の責任」(立憲・石川大我参院議員)

「発言は嘘」という声を受け3日、下村政調会長は自ら発言の誤りを認め訂正した。

性的少数者は、少数であるがゆえに差別を受けてきた。当事者ではない人にとって、それは他人事だ。「差別される者」の痛みは、想像でしかない。

かつて、女性には選挙に投票する権利がなかった。圧倒的な差別のなかに存在していた。今考えるとまったく理不尽だ。性的少数者も、それと同じかもしれない。

LGBT当事者たちの署名を有志が自民党に届けるも自民党担当者は受け取りに現れなかった。報道陣に囲まれて署名を受け取ったのは「施設管理会社の人」だった
5月30日から31日にかけて、差別発言に抗議する24時間シットインが、自民党本部前で行われた。リレートークには石川大我議員(左)はじめ多くの野党議員も登壇、LGBT差別の禁止を訴えた
  • 写真時事通信

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