文在寅も大ピンチ…!?韓国が「偽ワクチン」に騙された屈辱の背景
「政府計画以外のワクチン取引に、相当な進展があった。3000万人の交渉が最終段階にある」
5月31日、韓国南部の大邱(テグ)市市長クォン・ヨンジン氏は報道陣へ誇らしげに語った。ファイザー社と共同開発を行うドイツの企業と市が独自に取引し、6000万回(3000万人分)のワクチン供給を受けるという内容でほぼ話がまとまったというのだ。しかし……。
「このワクチンが、まったくの偽物であることが判明したんです。クォン市長が『最終段階にある』と語った交渉は、急きょ破談になりました」(韓国紙記者)
いったい何が起きたのだろうか。
本社は米国なのに電話番号は……
大邱市によると、同市の地域医療団体が海外の貿易会社と交渉を開始したのは今年3月だという。ファイザー社と提携するドイツのビオンテック社にも話が通り、3000万人分のワクチンを輸入することで大筋合意。最終決定権のある政府に、判断が委ねられた。
「しかし、韓国の保健福祉省が調べると、さまざまな不審点が見つかったんです。ファイザー本社は米国ニューヨーク州にあるのに住所はフロリダ州、電話番号はポルトガル、ホームページは『改良中』で見られない……。さらに容器や容量なども、ファイザー社のモノとは異なることがわかりました。
当局の連絡を受けた韓国ファイザー社は、声明を発表。『今回の取引は合法的に承認されていない』『製品の真偽によっては法的措置も検討する』と。声明を受け、政府は交渉の中止を決定しました」(同前)
なぜ大邱市は、これほどお粗末な失態を犯してしまったのだろうか。『コリア・レポート』編集長の辺真一氏が語る。
「理由は二つ考えられます。一つは昨年2月、韓国内で初めて大邱市が新型コロナウイルスの集団感染を起こしたこと。宗教団体が1000人規模の礼拝を行いクラスターとなり、ソウルなど他の都市に拡大したんです。政府は『コントロールができていない』と大邱市を批判。その後ろめたさがあり、汚名返上のために気が焦っていたのでしょう。
二つ目は、クォン市長が最大野党『国民の力』所属でワクチン接種の遅れで文在寅政権を非難し続けていたこと。韓国のワクチン接種率は、英国の59%、米国の51%に比べ15%と低い。一時は、ロシア製のワクチンの輸入まで検討されたほどです。クォン市長は、後手に回る政府を出し抜き実績を上げたかったのかもしれません。完全な勇み足です」
クォン市長は、6月8日に記者会見を開き騒動を謝罪。「不謹慎な言動で大邱市のイメージが失墜させ、新型コロナで苦しむ市民に深い傷と失望を与えた。すべての過ちは、市長である私にある」と語った。
米誌『ウォールストリート・ジャーナル』によると、各国で偽ワクチン被害が相次いでいるという。メキシコでは1回約11万円で80人ほどが接種したが中身は蒸留水だった、ポーランドで押収された偽ワクチンはシワ伸ばしの薬だった……。今回の騒動を受け、韓国保健福祉省も「ワクチン詐欺に注意を」と警鐘を鳴らしている。
- 写真:ロイター/アフロ