五輪最大スポンサーが本番計画を発表 モノ言えない東京都の裏事情 | FRIDAYデジタル

五輪最大スポンサーが本番計画を発表 モノ言えない東京都の裏事情

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東京五輪の拠点として改築工事が進む国際放送センター(IBC)入口。海外のメディアが堂々と入っていくのとは対照的に、イベントを楽しみに来た2人は退散していった。
東京五輪の拠点として改築工事が進む国際放送センター(IBC)入口。海外のメディアが堂々と入っていくのとは対照的に、イベントを楽しみに来た2人は退散していった。
国際放送センター(IBC)とメーンプレスセンター(MPC)が入る予定の東京ビッグサイト
国際放送センター(IBC)とメーンプレスセンター(MPC)が入る予定の東京ビッグサイト

全米向けの五輪放送権を独占し、国際オリンピック委員会(IOC)最大のスポンサーでもある米国の「NBCユニバーサル」が8日、開幕を1か月半後に予定される五輪本番の放送計画を発表した。

7月23日の開会式は米東海岸の午前中になるにも関わらず、同局として初めて生中継するほか、デジタルメディアなども駆使して、過去最大規模となる7000時間に及ぶ放送計画だという。一方で、TBSが7日に公表した五輪の開催についての世論調査によると、「中止すべきだ」「延期すべきだ」をあわせると55%におよんだ。開催国・日本の国民の過半数が「中止」や「延期」を求めても、海外の五輪スポンサーを軸に開催にむけて淡々と準備が進む異常事態。日本側が明確に異議を唱えられない事情が隠されていた。

世界中の放送機材が続々搬入

一番上の写真を見てほしい。5月下旬、東京・江東区にある東京ビッグサイトでの光景だ。通行パスを下げた海外出身の人が自由に出入りしているのとは対照的に、あるイベントを楽しむために来た一般の人が、ガードマンの求めに応じてビッグサイトへの入場を断られた。なぜなのか。

ここは、東京五輪パラリンピックの国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC)が開設される、五輪パラリンピック大会の報道機関の拠点なのだ。ビッグサイト周辺は5月5日から9月29日まで、通行止め区間が設置され、常時ガードマンがいる厳戒態勢が敷かれていた。ある民放関係者が明かす。

「米国の放送局はすでに機材も東京ビッグサイトにあるIBCに送っていて、専用スタジオも設置した、という話を聞きました。これまでも五輪の参加国は、放送機材を船便で送ってきているんです。IBCでの準備は大会前に山ほどありますし、失敗は絶対に許されませんから。

私たちも放送を前提に準備を進めていながらも、五輪開催の可否は我々はまだ知らされていません。もちろん、知りたいところですよ。少なくとも機材搬入が終わって中止や再延期が決まった場合、その費用は誰が負担するのか、という話は、TV局側の論理として出て来ますからね」

中国も国営中央テレビが先月15日、「東京五輪の報道体制は中継スタッフなど入れると合計約3000人に規模になる」ことを報じた上で「TV中継用の機材はすでに東京へ送り届けている」ことも発表した。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐワクチン接種が日本でもようやく進みはじめたとはいえ、接種率は世界と比べると大きく見劣りする。今のまま、海外からの選手や大会に携わる関係者を迎え入れてしまうと、結局、感染拡大はおさまらず、病院の現場はひっ迫し、本来助かるはずの命まで助からなくなるのではないか…。

そんな懸念から、いまだに日本国内に五輪開催の中止を求める声は絶えないが、それでも開催都市・東京、そして政府も一貫して開催を強行する姿勢を崩していない。

それは、一にも二にもおカネの問題が絡んでいるからだ。

IOC拠出金に関する契約

 

東京五輪パラリンピックにおける開催都市契約(14条)

IOCと東京都との間では、「開催都市契約」が結ばれている。その文書の14条の中には「IOCが単独の裁量で大会前に拠出金を大会組織委員会に付与する」とある。

この金額がなんと日本円で850億円で、IOCからすでに受け取っている。これは、米国NBCがIOCに対して支払った放映権料が原資になっている。したがって、大会が中止になればNBCが返金を求めてくるだろう。

大会組織委員会に財力があれば何の問題もないが、たとえば、前売りで売っていて、確実に入ると見込まれた入場料収入の900億円は、新型コロナウイルス感染拡大による観客減で減ることは確実だ。五輪期間中に、海外からの観客は入れない方針は決まったため「(一度売った入場料収入のうち)今残っているのは600億円ぐらい」(大会組織委員会幹部)。

現在、一部地域で緊急事態宣言が延長されても、国内のコロナ感染者数が目に見えて減っているわけではなく、現時点で日本国内の観客を入れるか入れないかもまだ決まっていない。したがって入場料収入は限りなく0に近づく可能性もある。大会組織委員会が、かわりになる収入源としてスポンサーに頭を下げて支援額を上乗せしてもらうぐらいしか手段はないだろうが、もはやそれも望めない状況だ。

6月7日には、東京五輪の一部スポンサーが大会を9月から10月延期すること主催者に提案したことをイングランド紙が報じた。組織委員会はすぐに否定する見解を明らかにしたが、ここにもおカネの事情が隠されている。

「組織委員会の人員は現状4000人台です。前回のリオデジャネイロ、前々回のロンドンもそうでしたが、五輪開催イヤーは、組織委員会は1万人近い規模で運営されていました。東京大会もそれぐらいの規模をめざしていましたが、大会が延期されたことによって、追加経費を削る必要に迫られた。その結果、人件費にもメスが入り、組織委員会の人数を増やせなくなりました。

ですから組織委員会は本来、1万人必要な仕事量を4000人台でやっていることになる。一人が抱える仕事が多すぎて、完全に疲弊してしまっていて、もはや大会を延期できるマンパワーは残っていません」(五輪担当記者)

東京ビッグサイトの会場運営、およびお金が入る仕組み(株式会社東京ビッグサイトのPDFより一部抜粋)
東京ビッグサイトの会場運営、およびお金が入る仕組み(株式会社東京ビッグサイトのPDFより一部抜粋)

東京都とIBC会場の密接な関係

冒頭で紹介した東京ビッグサイトは1996年開業、総工費1985億円をかけて造られた日本最大の展示場だ。五輪放送の拠点となるIBCとMPCの整備工事は2018年6月に競争入札の結果、大和ハウス工業(本社・大阪市)が283億8960万円で落札した。4工区に分けて既存の東京ビッグサイトの中に仮設のIBCとMPCを建てる工事を請け負い、同社の社員が組織委員会にも出向している。

今回、東京ビッグサイトが東京五輪パラリンピック報道の最重要拠点に選ばれた理由として、選手村から近く、メダリストに出演してもらうには便利な立地条件もあるが、それ以外の理由も見え隠れする。全国紙記者が明かす。

「実はこの土地・建物の所有者は他ならぬ東京都なんです。ビッグサイトを運営する株式会社ビッグサイトは施設全体の無償提供(一部有償)を受けている。その見返りとして東京都へ設利用料(ロイヤルティ)を支払っている。ビッグサイトの稼働率が高ければ高いほど東京都が潤う仕組みです。ちなみに、今の社長さんは、東京都で勤務されていた元下水道局長です」

東京ビッグサイトは年間約300件近い展示会やイベントなどが行われ、その稼働率も70%。使用料も公開されていて、IBCのために使用する東展示場、MPCのために使用する西展示場(計12ホール)の1日料金の合計は3982万円、5月5日から始まった通行禁止期間49日だけ使用すると仮定しても、使用料だけで19億5118万円という計算になる。これに加え、電気、空調、通信回線費などは別途追加されて、会議室やVIP(特別応接室)など利用がある場合も加算される。

公式サイトによると、使用料の契約が結ばれた場合、割引は一切ないと記されている。財政面にゆとりがない大会組織委員会からすれば、使用料を払うことも簡単ではないだろう。

東京都の小池百合子知事は今月1日の都議会での所信表明で「来日人数の削減、行動管理・健康管理、医療体制の見直しの徹底する」とした。あくまでも五輪を開催することを前提とした表明だ。ただ、実は水面下では「この所信表明のタイミングが、東京都として五輪中止を打ち出すXデーになるのではないか」と囁かれていた。

しかし、開催都市の首長である小池都知事でさえ、何も言えないほど、海外の関係者によって着々と準備が進められ、もはや黙って外圧に屈するしか道はなくなっている。

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