五輪番組ってどうなるの…?各局関係者が明かした「苦悶」 | FRIDAYデジタル

五輪番組ってどうなるの…?各局関係者が明かした「苦悶」

東京キー局の報道・ワイドショー関係者に緊急調査 五輪が目前に迫るなか、驚きの舞台裏が明らかに

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東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場(2021年6月10日撮影) 写真:ロイター/アフロ

東京オリンピック開会式まで40日を切った。反対・賛成両論渦巻く中、いよいよ目前に迫ったオリンピックだが、実はテレビ局は複雑な立ち位置にある。

連日、コロナ禍でオリンピックを開催する是非についての世論をニュース・情報番組で報道しており、反対論が多数を占めるので結果的に「オリンピック開催いかがなものか」という論調の意見をオンエアすることになるわけだが、その一方でテレビ局自身が「オリンピック番組を放送する立場」にもあるからだ。

「オリンピック番組を放送する立場」として考えれば当然「できるだけ世論が盛り上がって、たくさんの人に番組を見てもらいたい」わけで、そういう意味では「オリンピック機運」を盛り上げなければならないが、その一方で世間の声が否定的であるのをねじ曲げてまで「オリンピック賛成」というわけにもいかず、さぞ苦しい立場に置かれているだろう。

そんな中、いまテレビ局の制作現場には「どんな姿勢でオリンピックを扱うのか」について局の上層部からどういった指示が出ているのだろうか。そして、オリンピックに関してテレビ局はどんな準備をしているのか。現場は「開催前提」ですでに動いているのか、それとも「開催・中止両論併記」のままなのか。

その実態を知るため、筆者の知る東京キー局各局の報道・ワイドショー関係者に緊急調査を行い、11名から回答を得た。

果たして「テレビ局のオリンピックへの向き合い方」は現在どうなっているのだろうか? テレビニュースの制作現場が長い筆者にとっても、驚くべき結果が明らかになった。

直前なのに驚くほど何も話がない(11名中6名)

何にそんなに筆者が驚いたかというと、「直前なのにびっくりするほど現場にはなんの話も来ていない」ということだ。テレビ番組は結構多人数で大掛かりに制作する必要がある。常識的に考えればひとつの番組や企画の準備には少なく見積もっても月単位の日数が必要だ。それにも関わらず現場は「何も聞かされていない」状態に置かれていて「本当に大丈夫なのか?」という不安が漂っているようなのだ。実際の声を紹介しよう。

「局内に動きはあるのだと思いますが、自分のところにはまだ具体的な話が来ていません」(報道デスク)

「スポーツは何か準備しているんだろうけど、デイリーニュースチームではまだ何も」(ニュース番組 ディレクター)

「特段の通達はないです」(海外特派員)

「特に報道局としてのスタンスを明示するような話はこれまでありません。もう少し経てばあるのかもしれませんが」(ニュース番組 デスク)

このように、話を聞いた半数近くからは「何もありません」という実に短い答えが返ってきただけだった。そして、このような「不安」を訴える声も聞かれた。

「特段お伝えできるような特徴もなくて……開催されるんだろうから準備する、という程度で、粛々とやっている感じです。敗戦の時もこんなふうに非科学的に誰も止めないで闇雲につっこんだのかなぁ……と想像してしまいます……」(報道デスク)

そして、「何も話がない理由」をこう分析する関係者もいる。

「要は政府も都も100%開催を明言できず、『Xデーがあるかも』がくすぶっているからかと。うちの番組も実施の確信が持てたら振り切るんでしょうね。

番組としてオリンピックについての積極的な取材の指示は出ていません。まあニュースなのと視聴者の興味は高いので、トピックスがあれば食いついて、賛否両論を揃え(バランスは偏りがちですが)たっぷりやる……というスタンスですね。

スポーツ局は、ガッツリ取材のスタンバイ、特番のスタンバイを整えています。開催する前提で動いていますね。当然とは思います」(ニュース番組 チーフディレクター)

開催を前提に粛々と準備している(11名中3名)

そして、少数ではあったが、「開催を前提に具体的に粛々と準備を進めている」という番組もあった。

「うちの番組では今月下旬あたりから五輪企画(注目選手特集や代表が決まる大会の情報など)を流すことになっているみたいです。五輪そのものに関しては開催賛否含めニュートラル。特に忖度することもなく関連ニュースを扱っています。雰囲気としては、開催されてもされなくても現状をそのまま伝えようという姿勢です。

民放にとって、五輪は放映権料が高いので開催することになって放送できても、営業利益が激増することはほぼないんです。ニュース番組に限った話ですが、五輪がなければ通常のニュースを流せば良いので『開催されないと困る』ということはそれほどないみたいです。なので今は、スタッフは通常通りの勤務を粛々と続けてます」(ニュース番組 ディレクター)

「五輪の放送・取材態勢の準備は進めてはいます。どれくらいのことができるのかまだわかりませんが。

局としての報道姿勢みたいな指示があったか?というと、それに関しては全くありません。今後の報道姿勢については『こうするべきだ』という形を示すというよりも、『やるべきことをやっていない』ことに対しては批判をするというようなスタンスかもしれません」(ワイドショー プロデューサー)

「局内では開催を前提に、粛々と準備を進めている感じです。番組で気を付けていることは、中止論、開催論に偏ることなく、ファクトベースでバランスよく伝えるようにということでしょうか」(ワイドショー チーフディレクター)

ご覧のように、「開催を前提に準備を進めている」番組でも、報道姿勢に関しては(当然ではあるが)一切上層部からの指示はなく、「反対・賛成どちらかに偏らないニュートラルな報道姿勢で」という方針になっているようだ。

「管理担当者」が語った具体的な動き

それにしてもあまりにも具体的な動きが少なすぎる。ひょっとしたら現場よりも少し引いた立場の人間の方が情報を持っているのではないか?と考えて某局の管理担当者に聞いてみた。すると、やはり現場よりは具体的に動きを把握していた。

「開催されることを前提に、種目に合わせた取材などについて、結構細かな打ち合わせまでやっています。オリンピックが開催されるかどうか様子見をしながらも、実施するのであれば万全な態勢で放送しなければならないですから。報道局では、各番組でできる範囲の企画をまとめていますし、編成も、いろいろと準備を進めています。

基本的には、テレビ局は全て横並びの対応で、大手の新聞社もほぼ同様だと聞いています。

オリンピック取材のために、これまで及び腰だった職域接種についても、社員スタッフ・出演者・家族すべて行うことになりました。決まったのは先週頭ですが、報道局だけで2000人規模でワクチン接種を行います」(報道局の管理担当者)

つまりまだ、テレビ各局は横並びで「様子見」をしながら、「競技中継」などについては具体的な動きを始めているというのが現状で、「オリンピック取材のため、ワクチン接種についてはここに来て急遽体制を整え始めた」というのが飾らぬ実態のようだ。

本当にこんなにスローペースで間に合うのか?という気がしてならないが、考えてみればやむを得ないのかもしれない。こんな声を出演者から聞いたテレビマンもいる。

「この間ゲストの国会議員が、与党情勢として『官邸は既に“五輪の無観客での開催”は決定していて、あとはどれだけ観客を入れられるか?というオプションを探っているらしく、特定競技でコロナ患者が出た段階でその競技は中止とするとの基本方針を決めている』と言っていました」(ニュース番組 ディレクター)

各局とも、こうした様々な情報を耳にしつつ「果たして本当に東京オリンピックがあるのか」という不安を抱えながら準備をせざるを得ない。しかも、今回は「競技当日になっていきなり中継する予定の競技が中止になる」という、かなりテレビ局泣かせの緊急事態もありうるのだ。

そんな中、テレビ局は「当日になるまでダブルスタンバイ態勢を取らざるを得ない」という、金銭的にも体勢的にも厳しい状況に置かれている。正直もはやオリンピックが開催されても中止になっても儲かるような状況にはなく、「対応せざるを得ないがただただ大変」なお荷物コンテンツになってしまっているのだ。

選手を筆頭に、数多くのオリンピック関係者がきっと今困惑していることだろう。開催日程がここまで迫れば「具体的にどうするのかを早く決めて欲しい」というのが、そうした人たちの本音ではないだろうか。そして、テレビ局もそうした「なかなか決まらない方針」に振り回される被害者の一角にいて、今日も翻弄されているのだ。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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