朝倉未来の「敗北を予言していた」前田日明とシバターが指摘する壁
“路上の伝説”朝倉未来が6月13日の格闘技イベント「RIZIN.28」(東京ドーム)で、クレベル・コイケ(ブラジル)相手に衝撃の失神負けを喫した。2R1分51秒、クレベルの三角絞めでブラックアウト。RIZIN参戦後、初の一本負けとなり、試合後には「引退」をほのめかすほどショックは大きかった。
まずは二人の激闘を称えたい。本気で戦う二人の姿は、多くのファンに衝撃と感動を与えたはずだ。
その翌14日、朝倉未は現役続行を決意し、自身のユーチューブチャンネルで
<すごく応援してくれる人の声が多かったっていうのと、朝倉未来は最強じゃないといけないなと思ったんで、もうちょっと頑張ってみようかなと思います>
と決意表明。ファンは引退という決断を下さなかったことに、ホッとしていることだろう。これからの奮起に期待したい。
そんななか、事前に彼の「敗北」を予言していた人物がいる。“格闘王”前田日明と人気ユーチューバーのシバターだ。
前者は朝倉兄弟ブレイクのきっかけとなった格闘技大会「OUTSIDER」を主宰。いわずとしれた大物だ。前田は試合の約3週間前にアップしたユーチューブ動画で、対戦相手がクレベルと聞いた瞬間「いやぁ~未来はキツイねぇ」と述べた。前田は朝倉の戦術について
「未来のカウンター(狙い)って、結構ネタバレしてるからね。クレベルが真剣に研究したら完封されるだろうね」
とキッパリ。試合展開については
「クレベルが上手くカウンターに持っていきにくくするために、ジャブを効果的に入れて、相手の気持ちを散らして、フワッと組みにくる感じなんだけど、組みにくるんかと思った瞬間にパンとショートフックも打つ」
「(朝倉未は)チャンスになったら一気にいくしかない。内気内気でいくと、やれカーフだタックルだってもらう。タックルでテイクダウンされて、ロープ際でウダウダしちゃうとやられちゃうよね」
と語った。見返してみると、まさに前田の話した通りの試合になったのだ。
朝倉未と交流のあるシバターも試合前日12日に公開した自身の動画で「勝つのはクレベル・コイケ」と予想。ふざけた動画のイメージが強いシバターだが、時折、笑いなしの“真面目回”が存在し、今回がまさにそれ。
自身も総合格闘技経験があり、昨年暮れのRIZINでHIROYAに勝利した“実績”もあるだけに、なかなか含蓄のある分析を連発した。
シバターがポイントに挙げていたのは、朝倉未の“事前準備”だ。シバターは朝倉を「天才」と称賛しつつも、「センスだけでは太刀打ちできないレベルがある」と断言。朝倉が最近のインタビューで「ミット打ちを始めた」と話していたことに衝撃を受けたそうで
「逆に凄くない? 今までスパーリングだけでここまできたのって。本当にありえない」
と敬意をこめて笑った。近代格闘技ではトレーナーやセコンドと綿密な試合プランを練り、チームで戦うのが定石。シバターは
「そういう中でようやくミット打ちを始めました、ウエイトを始めましたっていうレベルだと、壁にぶち当たる」
と本音の分析をもらした。
シバターはクレベルがセコンドにポルトガル語を話す外国人を付けていることを挙げ、朝倉未にLINEで「ポルトガル語のわかるセコンドを付けた方がいいですよ」とアドバイスを送ったという。試合中にその言葉を聞けば、相手が次に何を狙ってくるかわかるためだ。
これに朝倉未は「いや、向こうは日本人のセコンドが付くと思いますよ…」と返答。シバターは
「あまりそういうことを考えていない。UFCだと相手の国の言葉がわかる通訳を絶対に自分のセコンドに置いてる。未来くんは『テイクダウンされなきゃ大丈夫っしょ』『テイクダウンされてもすぐ立つから大丈夫』ってレベルでやってる。結局、作戦がなくて、ケンカの延長でやってる」
と厳しい言葉を並べた。前田、シバター、いずれも朝倉に期待と敬意をもっているからこその分析とコメントだろう。彼らが指摘した「壁」を超えられるかどうかが朝倉のドラマだ。
「朝倉兄弟は自分たちの練習スタイルを貫いてここまでやってきたし、結果を残してきた。今回、1つの“限界”にブチ当たったとことで、今後どう変わるのか。それを自身のユーチューブで公開していくのでは。新たな物語がはじまり、またその物語に惹きつけられて新たなファンも生まれるでしょう」(スポーツ紙記者)
タダでは転ばない、それが朝倉だろう。最強の伝説が崩れた今、次なる一手に注目が集まる。今回の敗北を糧に、さらなる飛躍に期待した。
- 写真:Motoo Naka/アフロ