過去作の視聴率分析でわかった石原さとみ「当たるドラマの起用法」 | FRIDAYデジタル

過去作の視聴率分析でわかった石原さとみ「当たるドラマの起用法」

『恋ぷに』までの主演ドラマ7作品を分析

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『恋はDeepに』で海洋学者を演じた石原。ファンタジーなラブコメは新境地を開拓したかに思えたが……

石原さとみ主演『恋はDeepに』が終了する。これで彼女は、7年で7作の連続ドラマに主演したことになる。現役女優として最多クラスだ。

7作を振り返ると、典型的な恋愛ドラマだった『5→9~私に恋したお坊さん~』に始まり、お仕事ドラマの『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』『アンナチュラル』『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』、女王様キャラの『高嶺の花』『Heaven?~ご苦楽レストラン~』、そして“おとぎ話”的な『恋はDeepに』があった。

ビデオリサーチによる世帯視聴率は、そこそこの数字だが右肩下がり傾向。ところがスイッチ・メディア・ラボによる「特定層別個人視聴率」を分析すると、石原さとみをどう料理するとどんな視聴者が反応するかが浮かび上がる。

言動や見た目の可愛さか、働く女性の凛とした美しさか。視聴者が石原さとみのどんな側面に反応したのかを分析してみた。

主演ドラマ7作の流れ

世帯視聴率では、’16年秋の『地味スゴ』12.4%をピークに右肩下がり傾向にある。しかも’18年夏『高嶺の花』と’19年夏『Heaven?』が女王様キャラで、世帯視聴率が途中まで右肩下がりだったこともあり、SNS上では評価が二極化した。

「とにかく可愛い」
「きれいすぎて、さとみちゃんに悶絶」
「さとみ様を拝めるドラマをありがとう!」

などが絶賛のコメント。米国の映画評論サイトによる「世界で最も美しい顔トップ100」で、8年連続ランクインする石原への普段と変わらぬ誉め言葉だ。

ところがこの頃から批判の声も目立つようになった。

「(石原の)傍若無人キャラに飽きた」
「高飛車イイ女の振る舞いに違和感」などだ。

’18年冬のお仕事ドラマ『アンナチュラル』では、「可愛い」「美しい」に加えて「ひたむき」「自然な笑顔」「クールな集中力」と評価を上げていただけに、「既にピークを過ぎたのでは?」という声も聞こえ始めていた。

次の’20年夏は『アンサング・シンデレラ』というお仕事ドラマに戻った。「低いトーンの演技も好き」「グッと引き込まれる」など、新たな一面をみせていた。そして今回の『恋ぷに』では、物語に毀誉褒貶があったものの、石原の美しさやオーラを前面に出した展開に魅了された視聴者も少なくなかったようだ。

かくして女性の評価は、年代により幅が広がって行った。

F3(女性50歳以上)の個人視聴率は、『アンナチュラル』まで上がり続け、その後は高い位置で安定している。またF1(女性20~34歳)も安定的に推移し、世帯視聴率では最低となった『恋ぷに』でも好成績をキープした。

ところがF2(女性35~49歳)は、徐々にシビアになっている。さらに19歳以下も、30代男女のメルヘンチックな恋愛物語には違和感を拭えなかったようだ。

視聴者層の質的変化

女性の年代別変化だけでなく、質的な傾向でも変化が生じている。

まず目立つのは、40~50代の映画ドラマ好きが、石原さとみドラマから離れ始めている点。典型的な恋愛ドラマからお仕事ドラマ2作で数字を下げ、『高嶺の花』以降の女王様キャラで一段と落とした。そして病院薬剤師ドラマで少し戻したものの、『恋はDeepに』で最低となってしまった。

この層の石原ドラマは、恋愛ドラマが前提にあるのかも知れない。’12年夏に放送された小栗旬との『リッチマン、プアウーマン』、’14年冬の松本潤との『失恋ショコラティエ』、そして’15年秋に放送された山下智久との『5→9』のイメージが強烈だからだ。

設定やストーリーテリングの面白さは優先順位が高くないのか、お仕事ドラマで視聴者が減ってしまっている。さらに高飛車な女を演じた2ドラマで、下落が加速した。「これじゃない感」の強い層なのではないだろうか。かくして“おとぎ話”的な『恋はDeepに』への拒否感も強くなったようだ。

ところが「20~30代の映画ドラマ好き」「美容ファッションに関心」「結婚に関心」層の見方は異なる。右肩下がりが続いたわけではない。特に何かと批判も多い『恋ぷに』でも上昇している点が大きく違う。

どうやら石原さとみドラマについては、「美しさ」「可愛さ」を前面に出したドラマに多くの視聴者が集まって来る。

逆に本の良し悪しに関係なく、『アンナチュラル』や『アンサング・シンデレラ』では数字が低い。石原はドラマでのコーデが必ず流行るという評価があるが、2ドラマではそうした要素が多くなかった。特に病院薬剤師の物語では、基本的に制服で登場していた。この層にとって「これじゃない感」が拭えず、視聴率が落ちたのかも知れない。

見た目を堪能するのか、働く女としての内面の凛々しさを楽しみたいのか。石原さとみ主演ドラマは、視聴者の見たいものによって視聴者層が大きく揺れ動いている。

局により異なる石原さとみの活かし方

これらを前提に、テレビ局の戦略も異なっているようだ。その戦い方は、制作した特定層含有率に表れる。含有率とは、各ドラマの個人視聴率全体を1とした場合の、特定層個人視聴率を割合で示したもの。視聴率は作品によって多寡が異なるので、どんな視聴者が比率的に多かったかを比べるのに使う。

5つの主演女優賞に輝いた『アンナチュラル』は、作品としても多くを受賞し評価が高い。ところが制作したTBSの石原ドラマは、視聴者層が最も上の世代に偏っている。しかも「映画ドラマ好き」層では、20~30代でも40~50代でも、他局より個人視聴率が低くなってしまっている。作品性にこだわる長打狙いの作り手の多いTBSでは、意外にも石原ドラマはさほど一般受けしていないのである。

その逆を行くのが日テレやフジ。男女とも60歳以上の比率は低いが、若年層ではTBSより高い。特に「美容ファッションに関心」層では、ともにTBSを大きく引き離している。「何を作りたいか」ではなく、「視聴者が見たいもの」にあわせる姿勢が如実に表れている。結果として広告主のニーズも満たしているだろう。

いわばビジネスを優先したドラマ作りに徹していると言えよう。作品性に拘るTBSとの違いが際立つ。

7年で7作の連続ドラマに主演して来た石原さとみ。以上のようにいろんな路線・テイストのドラマに出会ってきた。視聴者も多様で、見たい彼女の側面も異なっていたが、各ドラマはそれぞれのニーズを満たし一定の成功を収めて来た。

ただし7年で共通する傾向は、世帯視聴率が右肩下がり続きという点だ。プロの俳優として、ここから次はどこへ行くのか。やはり一定の視聴者を確保しつつ、あっと驚く新境地を開拓して欲しいというのが、わがままな視聴者の願いだ。

ぜひ次は従来とは違うキャラクターで、しかも「これじゃない感」を克服した良作に出演してもらいたいものだ。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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