東京都の「変異株アド・トラック」が他県ナンバーばかりの理由 | FRIDAYデジタル

東京都の「変異株アド・トラック」が他県ナンバーばかりの理由

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渋谷を走る、「変異株」への注意を促すアド・トラック。ナンバーは大阪ナンバーだ(撮影:加藤博人)
渋谷を走る、「変異株」への注意を促すアド・トラック。ナンバーは大阪ナンバーだ(撮影:加藤博人)

4月から20台走る「アド・トラック」の秘密

東京都内の繁華街を中心に、4トントラックを中心に感染症拡大を予防する広告を掲示しながら合計20台走っているのをご存知だろうか?トラックの側面には「N501Y変異株拡大中 感染対策の徹底を!」の文字が並ぶ。

通称「アド・トラック」と呼ばれ、一般的に荷台の側面や背面など車体を利用した広告宣伝を目的としたトラックを意味する。歩行者が多く集まる場所や時間帯に合わせてトラックで走行しながら効率よく広告を表示でき、トラックの荷台に表示される広告は歩行者やクルマのドライバー、路線バスの窓からも目につきやすい利点がある。高輝度照明を採用しているので、昼間でも暗くなってからでも視認性が落ちることがない。全国の繁華街で見かけるキャバクラやホストクラブの宣伝を行う騒々しい『バニラカー』に代表されるトラックもアド・トラックの一種だ。

走り始めたのは「まん延防止等重点措置」がスタートした4月12日から5日後の4月17日。以降、4期にわたって走らせていて、6月1日にはじまった第4期は、緊急事態宣言の最終日と設定されている6月20日に終わる予定だ。

このアド・トラックの興味深いところはそのナンバーである。広告主は東京都なのに、ナンバーは大阪や横浜、春日井(愛知県)などのナンバーを付けたトラックが渋谷や新宿、六本木周辺を走り回っている。特に多いのが渋谷で毎日4-5台が渋谷駅周辺を回っている。2-3台連なって走っている光景も見られ、それらすべて他県ナンバーとは何とも不思議な光景だ。この理由は何だろうか?

そこには通称「アド・トラック規制」と呼ばれる東京都独自の屋外広告条例が関わっている。東京都で登録された(品川・練馬・足立・八王子などのナンバー)アド・トラックの場合、掲示する広告の内容について厳しい規定があり、事前に審査を受ける必要がある。その審査の時間がかかってしまうのだ。

しかし、この審査が必要になるのは東京都で登録されたトラックだけで、他県登録のトラックであれば東京都内を走行する場合も東京都の条例は適用されない。そのため、県外ナンバーを付けたアド・トラックが東京都の広告を掲示して走っているというわけだ。

このように書くと「なにそれ。グレーでは?」と思われそうだが、違法でも脱法でもない。そもそも、この条例に関して東京都で登録されたアド・トラックが審査を受けず、違反をしたとしても罰則すらないのだ。

ということで県外ナンバーのトラックを使わざるを得ない事情を整理すると、以下のようになる。

①20台ものアド・トラックを短期間かつ、明確な期間は決まっていない状態で集めなくてはいけない。

②東京都で登録されたアド・トラックに広告を掲載する場合、その広告は公益社団法人 東京屋外広告協会 車体利用広告デザイン審査委員会の審査を受けなくてはならない。業者の話によるとこの審査には1か月程度かかる場合もある。

➂審査が面倒なのでもともと東京都内で登録されたアド・トラック自体が少ない。

これらの理由により、他県ナンバーのアド・トラックを使った方が効率もコスパも良いということなのだ。

アド・トラックの運転が「品行方正な」理由

渋谷駅周辺での撮影を終えた20時過ぎ。渋谷駅から国道246号線に入ったところでたまたま、広告の照明を落とした横浜ナンバーのアド・トラックに遭遇した。アド・トラックの走行時間は夜8時前後となっているので、時間的にも本日の業務終了といったところだろうか。このアド・トラックを追跡してみた。

渋谷駅方面から246に乗ると最初に出て来るのは首都高3号線三軒茶屋入り口だ。しかしトラックは入り口をスルーし、首都高には乗らなかった。そしてひたすら国道246号線で西に向かっていった。私たちもそのあとをずっとついて行ったのだが…その運転はあまりにも完璧だった。

キープレフトを厳守しているのはもちろん、ウィンカーを出すタイミングも絶妙で正確。車線変更の仕方も完璧だった。しかも国道246号線は最高速度60km/hで周囲のクルマが40-50km/hで流れている所、トラックは30km/hをキープ。本当に1km/hたりともオーバーしなかった。多摩川を超えて神奈川県内に入ると少し速度を上げて40~50km/hでの走行となった。後日、関係者に聞いてみたところ、こんな返答が返ってきた。

「高速に乗らないのは経費を節約するためでしょう。運転するドライバーや業者さんに対して、それほど多くの報酬は支払われていないようなんです。

運転は完璧すぎるくらい完璧を求められます。交通法規を厳格に守るのはもちろんですが、都内はとくに(業務が終わって帰路につくときも)ゆっくり完全な走ることを心がけているはずです」

ちなみに、某所で見かけた関西方面ナンバーのアド・トラックはなかなか豪快な運転で驚いた。大きな声では言えないが赤信号突破も目撃。横浜や春日井のナンバーはどこからも突っ込まれない品行方正な運転で感心していたのだが……。

  • 取材・文加藤久美子

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