橋本聖子「海外報道GPS管理計画」が効果微弱と断言できる理由 | FRIDAYデジタル

橋本聖子「海外報道GPS管理計画」が効果微弱と断言できる理由

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6月8日、東京五輪パラリンピック組織委員会の理事会後の記者会見前に言葉を交わす橋本聖子会長(右)と武藤敏郎事務総長(写真:共同通信)

6月8日、東京五輪パラリンピック組織員会理事会が開かれ、終了後の会見で、コロナ禍における海外メディアの行動ついて橋本聖子会長は「事前に登録があった外出先以外には行かないように、GPSなどにより厳格に管理する」と語った。今のところ、海外メディアから直接的な抗議を受けてはいないが、意外にも国内スポンサーが危機感を募らせているという。

理事会後の会見の内容を知った東京五輪パラリンピックのあるスポンサーはこうささやいた。

「橋本会長の発言によって、特に海外メディアのイライラは募るでしょうね。私たちは大会を通して企業イメージをアップする目的でお金を払っていますが、かえってイメージダウンになるかもしれない、とさえ感じています。

たとえばマスクをするか、しないかで文化の違いがあって、ワクチン接種がすすんでいるイギリスあたりではマスクを外し始めている。でも、日本ではワクチン接種がすすみはじめたはいえ、電車の中でマスクをしていない人は冷ややかな目でみられる文化です。海外から来た記者が行動を管理されたうえに自由な外出もままならないとなれば、ストレスはたまりますよ。海外のメディアは感じた不満をストレートに字にしますからね…」

会見で示された行動管理の具体例を大きく分けると、以下の3項目になる。

① 入国後14日間は公共交通機関には乗ってはならない
②宿舎は組織委員会がホテルと協力して監督できる施設に限定して民泊や友人宅、少人数の宿泊は禁止。
③入国後3日間は毎日検査。ルール違反者へは大会取材証の剥奪、国外強制退去手続を厳格に適応する

15日に公表された、五輪パラリンピックの参加者にとって新型コロナウイルス対策の指針となる「プレーブッグ」最終版には、規則に違反した大会関係者に対し「除外」「制裁金」などの厳罰を下すという、厳しい表現も組み込まれており、メディア向けの「プレーブック」もそれに準じる見通しだ。

さらに、武藤敏郎事務総長(77)は「報道の自由とはまったく関係ない。(入国から)14日経てば普通に取材できる」と述べ、橋本会長をフォローしたつもりだが、火に油を注ぐ発言となった。

早速AP、AFPなどの海外の通信社が橋本会長、武藤氏の発言を世界に発信した。6月9日付けのアメリカのワシントンポスト紙はAP通信の記事を掲載。武藤事務総長の「常に行動を監視するつもりはない。でも、メディアの行動に問題が出てくれば、GPS機能にオンにして、監視する」という発言を取り上げている。

大会組織委員会トップによる事実上の「封じ込め宣言」に、海外メディアが「はい、了解しました」と素直に従う可能性は低く、場合によっては、敵意をむき出しにして逆襲してくるだろう。

今年3月、中国全人代の開幕式を取材する海外メディアのカメラマン。管理されることを嫌がりそうな雰囲気だ(写真:共同通信)

取材する側は何よりも管理されたり、制限をかけられたりすることを嫌う。競技場内だけでなく、ネタを求めて、神出鬼没、どのように監視されようが、それをかいくぐるよう努めるのが、記者であり「これ以上、入ってはダメ」「撮影禁止」などと言われるほど、突破口や抜け道を見つけようとする。それがスクープにつながるからだ。

長年、五輪を取材してきたベテラン記者はこう振り返る。

「ある五輪会場で実際にあったことなんですが、記者席で海外出身の記者が自分の社ではないネームプレートが貼ってあるにもかかわらず、堂々と座り込んだ。さらに、設置してある通信機器を勝手に使い、本来座ることが許された人と言い争いになり、仲裁に入ったボランティアに罵声を浴びせたんです。席が空いているからという理由で席に座ってしまったのでしょうが、勝手に使っても彼らは悪びれる様子はない。

実はこんなことが違う場所でも連日、起きていました。日本人のように丁寧に許可を求めることはせず、あらゆる手段を尽くすのが海外メディアの特性のひとつですよ」

もし、GPSで管理されることを事前に知ったのならば、大会組織委員会に登録したスマホを故意にホテルに置き忘れ、あらかじめ用意していた2台目、3台目を使い、勝手気ままに動き回るかもしれない。武藤事務総長は「信用する」と性善説を唱えるが、海外の記者は自分の間合いで行動できるよう、したたかに準備してくるだろう。

五輪憲章は48条にはこう定められている。

<さまざまな種類のメディアによって最大限報道され、オリンピック競技大会の読者や視聴者を世界中でできる限り多く確保するために、IOCは必要なあらゆる手段をとる>

さらに細則にはこう書かれている。

<IOC 理事会は、オリンピック競技大会のメディアの報道に関する全ての技術的な規則と必要事項を定めるテクニカルマニュアル(メディア)を作成する。メディア・ガイドは、開催都市契約に必ず含まれる。テクニカルマニュアル(メディア)の内容およびその他の IOC 理事会の全ての指示は、オリンピック競技大会のメディアの報道に携わるあらゆる人に対し拘束力を持つ>

つまり決定権を持つのは橋本会長がトップをつとめる大会組織委員会でなく、あくまでもIOC。このたび作成された「プレーブック」最終版も、最終的にはIOCからお墨付きをもらって出されたが、実効性には疑問がある。前出のベテラン記者は続ける。

「海外メディアの行動を監視、統制することはまずできない、と考えた方がいい。それは橋本会長も本音の部分では理解しているんじゃないかなと思います。海外メディアが一番、抵抗感を示しそうな『GPS管理』という方針を今回のようにあえて会見で語ることによって、海外メディアを管理する姿勢を見せ、新型コロナの感染拡大がおさまったとは到底いえない日本で『安全、安心に大会(五輪)を開催する』ことを、日本国民に理解を求めるためのアピールにすぎません」

2008年の北京夏季五輪でも、2018年、ロシアで行われたソチ冬季五輪でも、メディアが取材活動の自由を制限されたという不満がトラブルにつながったことはなかった。仮に新型コロナウイルスの蔓延が今よりおさまり、東京五輪の開催にこぎつけたとしても「これまでの五輪でこんな窮屈な思いをしたことはない」と記事化されてしまっては、東京五輪パラリンピックをスポンサーしてきた企業に「傷」がついてしまう。

コロナ禍での五輪開催は「コロナに勝った証」を示す場ではなく、「五輪パラリンピックのイメージダウン」という新たな火種を抱えてしまった。

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