松本人志「視聴率問題」が露わにしたテレビ界のダブルスタンダード | FRIDAYデジタル

松本人志「視聴率問題」が露わにしたテレビ界のダブルスタンダード

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
「視聴率報道」について苦言をていした松本人志。世帯視聴率と個人視聴率のWスタンダードが露わになり…

ダウンタウンの松本人志さんの発言が、いつもながらの影響力で波紋を広げています。

今回、松本さんが鋭く指摘したのは、視聴率に関する事柄。6月12日に放送されたコント特番『キングオブコントの会』(TBS系)の視聴率が「6.8%」と報じられ、それにネガティブな見方がなされたことに納得できなかったようで、

「ネットニュースっていつまで”世帯”視聴率を記事にするんやろ?」

と疑問を呈したのです。

同じ案件が続きました。松本さんがかわいがっている後輩芸人である千鳥の番組『相席食堂』(テレビ朝日系)に関する報道に、釘をさしました。

デイリースポーツが《視聴率5.8% 激戦区でリベンジならず》と見出しを付け報じましたが、松本さんは

「これぞ勉強不足のバカライター」

と、記者にとっては最大級の屈辱の言葉を浴びせかけました。

この件に対し、さまざまな媒体が松本さんよりの論陣を張りました。そのような記事をそこそこ読みましたが、個人視聴率やらコアターゲットやら、インナー的な物言いが出てきて、ピンと来ませんでした。

この件で先日、テレビ局の編成マンと話した際、

「”テレビ業界のダブルスタンダード”が明らかになったということです」

と、さらっとした意見をうかがいました。

ダブルスタンダード。それこそが松本さんが指摘したコアターゲットに対する視聴率と従来の世帯視聴率のことです。昨年春から、放送業界内部では世帯より個人が重視されるようになっています。

「テレビ局を歩くと分かりますが、視聴率の張り紙の数字に今、世帯視聴率はありません。個人視聴率が掲載され、さらに最大視聴者数が何千万人と言う感じで表示されています」

前出・編成マンはそう付け加えます。

視聴率を調査している会社は、テレビ局に対しては、世代別の視聴者数が分かる詳細なデータを商品として提供していますが、NHKの一角にある放送記者会(放送業界の記者クラブ)を通して加盟新聞社に対して届けているのは、昭和の昔から一緒、世帯別視聴率なのです。

つまり、「テレビ局には個人視聴率」が届けられ、「メディアには世帯別視聴率」が届けられていることが、松本さんが指摘する行き違いの大もとなのです。

スポーツ紙やネット媒体が世帯視聴率に沿った記事を執筆するのは、それしかデータがないからです。毎週、新聞紙面に、週間視聴率なる一覧表が掲載されます。それは世帯視聴率の上位から1位、2位とされています。

これが、テレビ局が営業ツールとして使うインナーの視聴率とは違っていることが今回、松本さんの指摘の元になりました。各局が把握している詳細なコア視聴率は「飯のタネ」(前出・編成マン)だけに、外部には簡単には出せないのです。無断転載も禁止されています。

松本さんの指摘には、一点の誤りもありません。松本さんの番組のコア視聴率はよく、だから番組は続いています。

しかし松本さんの主張するように、コア視聴率がメーンになったら、”視聴率報道”は成り立つのでしょうか。そんな疑問が頭をよぎります。

例えばNHK紅白歌合戦。年明けのスポーツ紙を飾る近年の視聴率報道では「40%超え」といった見出しでが目立ちました。

「そのインパクトは分かりやすい。国民の40%、4割が見ていると、率直に思えるからです。これをコア視聴率に物差しに変えると、だいたい『視聴率15%』とかになるわけです。

どれだけの人が見ているのかピンと来ない。これってインパクトがありますか? ワールドカップでもオリンピックでも、テレビ業界のリアルな数字を視聴率としたら、インパクトは出ません。それでもいいとするならそれもひとつ。どう判断するか、でしょうね」(スポーツ記者)

さらに、松本さんが指摘するコア視聴率が報じられるケースになると、それこそ諸刃の剣。次のような現象が起こると危惧します。

「テレビというメディアの”マス感”がなくなります。もうなくなっているのかもしれませんが(笑)。視聴率は最大が100%で、それを各局が取り合っているという、いわばぶんどり合戦です。10%、20%となると、勝敗が分かりやすい。

それがコア視聴率だからといって、6%、7%となったら、数字のインパクトがゼロ。新聞の見出しで『視聴率6%!』なんて打っても、すごい!とは受けとめられないでしょう」(前出・スポーツ紙記者)

さらに、”テレビ局のラジオ化”を指摘する、次のような声も聞きました。

「ラジオ局は聴取率調査をしていますが、個人調査ですから、出てくる数字は1.5%とか1.8%という感じです。それで営業の材料になっているのでしょうが、ラジオの聴取率が新聞の見出しとして大きく踊ることはありません。テレビの個人視聴率は、そこまで小さな数字にはなりませんが、一けた台の数字になれば、これまで以上に縮こまった感じを読者は持つでしょうね」(ワイドショー関係者)

松本さんの指摘によって期せずして表面化した、視聴率が抱える”ダブルスタンダード”問題。前出・スポーツ紙記者がこう提案します。

「すっきりさせることは簡単です。ビデオリサーチ社が、世帯別の視聴率の発表をやめればいいんです。主だった大株主は大手広告代理店ですから、そこの了解さえ取り付ければすぐにでもできます。ただ、最前も言いましたが、問題はテレビ視聴率の”マス感”がなくなること。テレビ視聴率のラジオ聴取率化です」

松本さんが指摘した「いつまで”世帯”視聴率を記事にするんやろ?」は、一部の「バカライター」に向けられたものではなく、放送業界全体に対する課題だと受け止めないと事態は変わらないでしょう。

  • ワタベ・ワタル(エンタメライター)

    夕刊紙文化部デスク、出版社編集部員、コピーライターなどを経てフリーランスのエンタメライターとして活動。取材対象は、映画、演劇、演芸、音楽など芸能全般。タレント本などのゴーストライターとして覆面執筆もしている

  • PHOTO坂口 靖子

Photo Gallery1

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事