グルメ番組に新トレンド「ウマイより笑い優先」になった必然の理由 | FRIDAYデジタル

グルメ番組に新トレンド「ウマイより笑い優先」になった必然の理由

『オモウマい店』一人勝ちの理由は「のちに使える情報」より「今すぐ楽しめるエンタメ」優先の作戦勝ちか

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今春スタートした新番組が視聴率獲得に苦戦するなか、『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』が一人勝ちの状況だ(公式ホームページより)

『火サプ』からの大幅な路線変更

今春の新番組が軒並み壊滅的な低視聴率を記録し、ネット上の話題にすらならないなど厳しい状況の中、視聴率・反響ともに一人勝ち状態になっているのが『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日本テレビ系)。

「アポなしグルメ旅」などのグルメ系企画で人気を集めた『火曜サプライズ』(日本テレビ系)の後番組だが、こちらのコンセプトは「オモてなしすぎてオモしろいウマい店、大集合!」と明らかに毛色が異なる。

グルメ番組のメインシーンと言えば食リポであり、「どのようにおいしさを伝えるか」に工夫を凝らすものだが、同番組はそんな「ウマイ」より、「笑ってしまうほど大盛り」「笑ってしまうほどサービスをしまくる」という「面白い」にフィーチャーしている。視聴率、ネット上の反響ともに好結果が出ているだけに、この方針変更が奏功していると言っていいだろう。

ただ、これは『オモウマい店』だけでなく、実はこのところのトレンドになりはじめていることだった。

グルメは「笑うために見るエンタメ」

「ウマイ」より「笑い」をフィーチャーするきっかけになったのが、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)。芸能人たちが大盛りと激辛に挑む「チャレンジグルメ」が番組最大の人気コーナーとなり、ファミリー層を中心に高視聴率を獲得し続けた。その「チャレンジグルメ」は、料理の紹介や味のレポートより、芸能人たちのリアクションを優先させる演出で笑いどころを増やして、ここまで成功を納めている。

これを受けた『ウワサのお客さま』(フジテレビ系)も、大盛りや激辛の得意な人や、笑ってしまうほど爆買いする人が出演するグルメコーナーを次々に放送している。

また、『バナナマンのせっかくグルメ!!』(TBS系)は、食リポシーンでの笑いにこだわるスタイル。日村勇紀が笑ってしまうほどハイテンションで料理を味わう姿が「見ているこちらまで笑顔になってしまう」などの声を集めている。

注目すべきは、『オモウマい店』、『有吉ゼミ』の「チャレンジグルメ」、『バナナマンのせっかくグルメ!!』で紹介されているほとんどが、視聴者が「行けないだろう」「行かないだろう」という前提の店であること。それぞれ、『オモウマい店』はローカルな上にすべて食べ切れない。『有吉ゼミ』の「チャレンジグルメ」は大盛り・激辛すぎて食べられない。『バナナマンのせっかくグルメ!!』は各エリアが遠すぎて行けない。

「わざわざ食べに行きたいというほどのものでもない」という理由も含めて、“食べるための情報として見る”のではなく、“笑うために見るエンタメ”という位置づけなのだ。

「ウマイ」だけでは見てもらえない

これまでのような「ウマイ」をフィーチャーしたグルメ番組は、芸能人の食リポも含め、「すでに見飽きている」という人が少なくない。また、今やネット記事やSNSなどのネットコンテンツにもグルメ情報があふれ、テレビより手軽に見られることもあり、「ウマイ」だけで人々を引きつけるのは難しくなった。

そのため、『火曜サプライズ』や『ぴったんこカン・カン』(TBS系)などは、出演する芸能人のバリューやキャラクターにフィーチャーする演出に活路を見出してきたが、グルメ番組としての色合いは年々薄くなっていた。

一方、『オモウマい店』がフィーチャーするのは芸能人ではなく店主やスタッフ。芸能人ではなくディレクターが店を訪れ、店主やスタッフに密着し、コミュニケーションを重ねることで笑いを生み出している。その内容は、ヒューマンとグルメに焦点を当てたドキュメンタリーであり、「ヒューマングルメンタリー」という番組名通りと言っていいだろう。

コロナ禍で外食もままならない中、「ウマイ」より「笑い」。のちに使える情報より、今すぐ楽しめるエンタメ。これらを優先させる番組コンセプトは理に叶っている。さらに、「コロナ禍に苦しむグルメ業界や飲食店を明るい気持ちにさせる」という意味でも存在価値は高いのではないか。

笑いの陰に労力を惜しまない姿勢

最後に1つ、「ウマイ」より「笑い」の構成・演出が奏功している理由として挙げておきたいのは、制作サイドの労力を惜しまない姿勢。『オモウマい店』は、スタッフが日本中を駆けめぐり、気になる店は断られても通い続けて交渉し、ときには店の手伝いをして撮影し、放送にこぎつけている。

『バナナマンのせっかくグルメ!!』も、「地元住民に聞き込みをしてから、タレント自らアポイントを取って店に向かう」という過程を踏んでいる。電話やメールでアポイントを取って、タレントをいきなり店に向かわせるのではなく、しっかり手間をかけているのだ。

どちらの番組も、そんないい意味で「グルメバカ」なスタッフの奮闘が笑いのベースになっているのではないか。

単に「ウマイ」料理を紹介するだけのグルメ番組では見てもらえない時代になった。また、「人気芸能人のトークを絡めたグルメ番組なら見てもらえる」というわけでもない。コロナ禍の閉塞感が続いていることもあり、笑いがグルメ番組の新トレンドになっているのは当然と言っていいだろう。

  • 木村隆志

    コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、地上波全国ネットのドラマは全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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