アジアゾウ15頭の群れが北上 “突然の謎行動”の真相
中国発 アニマルミステリー 「なぜ1年3ヵ月かけて500km移動したのか?」
総額1憶2000万円分以上の農作物を食い荒らしても、街に侵入し民家や老人ホームを破壊しても、警官700人を動員しても、ゾウたちは進撃を止めなかった。
昨年3月、ミャンマーとの国境に近い中国の国立自然保護区から16頭のアジアゾウが突如、北進を開始した。各地に被害をもたらしながら、今年6月上旬には800万人が暮らす雲南省の大都市・昆明へ到達。総距離500㎞以上という大移動だ。
途中、出産や離脱を経て、現在は15頭が山中で英気を養っている。ゾウたちはなぜ、謎の行動に及んだのか?
「異常気象による気温の上昇」「単なる迷子」など様々な憶測が飛んだが、その原因は明らかになっていない。
本誌「アニマルミステリー」調査班は、真相を探るべく徹底取材を敢行。すると新たに3つの説が浮上した。
説1 帰巣本能
日本動物園水族館協会の会員で、長年、ゾウの生態を研究する川上茂久氏が語る。
「群れが滞留している場所は、’90年代にアジアゾウが生息していた地域です。当時、昆明周辺には多くの個体が生息していたため、押し出される形でいくつかの群れが別の場所へ移住しました。その時の小ゾウが成長し、リーダーとなり、生まれ育った故郷へ、群れを引き連れて帰ったんだと思います」
説2 雄雌混合コミュニティの誕生
駒澤大学で動物行動学を教える非常勤講師の入江尚子氏は別の説を提唱する。
「アジアゾウというのは本来、オス同士、メス同士で群れになります。彼らが一定の地域内に暮らす要因の一つは、その方が交尾相手を見つけやすいからです。しかし、今回の群れは違います。成体のメスが6頭、オスが3頭含まれている。生殖のための定住の必要性がなくなったことで、より良い居住環境を求めて、旅をしているのではないでしょうか」
説3 天変地異の予兆
現地ではオカルトチックな説も唱えられているという。地元新聞記者が明かす。
「動物が天変地異を事前察知する『宏観異常現象』の一つだと考えられています。これを裏付けたのが5月22日に同じく雲南省で起きたM6.4の地震。しかし、以降もゾウたちが北進を止めないため、第二の巨大地震発生が危惧されています」
「アニマルミステリー」調査班はこれからも取材を続ける――。
『FRIDAY』2021年7月2日号より
- 写真:Aflo