春の恋ドラマは『着飾る恋』に軍配!TBS胸キュン枠が好調の理由 | FRIDAYデジタル

春の恋ドラマは『着飾る恋』に軍配!TBS胸キュン枠が好調の理由

総合視聴率でF1層からの支持の厚さが露呈。TBS火曜夜10時枠はテレビの救世主となるか

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濃いピンクのセットアップにグリーンのカーディガンで表参道を歩く川口。隣は劇中で姉御と慕う夏川結衣

川口春奈×横浜流星『着飾る恋には理由があって』が終了した。

実はライブとタイムシフトを合計した総合視聴率では、F1(女性20~35歳)が最もよく見たドラマだった。春クールは恋愛ドラマが5本並び、『ドラゴン桜』や『イチケイのカラス』も絶好調だった。

その中にあり若い女性を魅了した同ドラマは、TBS火曜夜10時枠が築いてきた“胸キュン”路線の一つの到達点であり、テレビ界にとって大きな意味を持つと言えそうだ。

F1が最も見た恋愛ドラマ

この春クールはドラマが豊作だったという声が多い。

阿部寛『ドラゴン桜』・竹野内豊『イチケイのカラス』・玉木宏『桜の塔』と、おじさんが主演したドラマが世帯視聴率で二桁と活躍した。同時に視聴率こそ一桁だったが、5本の恋愛ドラマや『ネメシス』『コントが始まる』なども若者の間で話題となった。

SNSではドラマ復権を示すつぶやきが少なくない。

「今クールはドラマを私史上1番観ています」
「今回、面白いドラマありすぎではー」
「今期めちゃめちゃドラマ見てる」
「この春の見たいドラマ多くて毎日楽しみだったけど、次々に最終回を迎えて寂しいー!」

ただしテレビ番組の指標となってきた世帯視聴率では、今クールのドラマは決して高いわけではない。視聴者は今や、ライブで見るほかに録画再生や見逃しサービスなどで見る人が多い。ドラマによっては、リアルタイム視聴よりタイムシフトの方が多い番組も珍しくない。特にやりたいことが多くて忙しい若者ほど、自分の都合にあわせて見るタイムシフト視聴の割合が高くなっている。

そこで世代別に総合視聴率を算出している東芝視聴データTimeOn Analyticsを使って、F1(女性20~35歳)が最もよく見たドラマを調べてみた。すると世帯視聴率では断トツでトップの『ドラゴン桜』より、『着飾る恋には理由があって』がF1層の総合視聴率は上を行くことがわかった。

そもそも初回は、石原さとみ×綾野剛『恋はDeepに』が圧勝だった。ところが4話で逆転した後は、『着飾る恋』がずっと首位を行く。SNSにも両ドラマの明暗を示すつぶやきは少なくない。

まずは両方好きという声。

「もうどっちもきゅんきゅんしすぎて1人できゃーきゃーゆってる」
「(両ドラマとも)はじめはただただヒロインがかわいいだけのドラマだと思って見るの辞めようかと思いながらもうちょっと見続けたんだけど、話が進むにつれておもしろい!」
「今期の私の活力の源だった」

次に『着飾る恋』に軍配を上げた人の声。

「『着飾る恋には理由があって』もそろそろ最終回。この2本のドラマだけは、欠かさず観てた。つまらなかったのが『恋はDeepに』」
「恋ぷにストーリーあまり好きじゃなかった…着飾る恋には理由があってのほうが好きやった…」
「めっちゃ期待してた恋はDeepにが期待はずれすぎたけど、着飾る恋には理由があるがめっちゃ面白すぎる」
「1番好きなのは着飾る恋には理由があって。横浜流星が観るたびにカッコよくなってる。あとおしゃれな家に住んでる人の暮らしを観るのが楽しい」

実は世帯で5%台と低迷し、「面白くない」「つまらない」など辛辣な声が少なくなかった『レンアイ漫画家』も、世帯視聴率12%超の『イチケイのカラス』と同じくらいF1は見ていた。

やはり若い女性は恋愛ドラマが大好なようだ。ただしその中では、どれだけ共感できるか、“キュンキュン”トキメキを感じられるかが明暗の分かれ目のようだ。

『着飾る恋』の特化ぶり

では恋愛5ドラマの視聴者は、どんな特徴を持っていたのか。各特性の人の含有率で比べて見みた。

まずF1では、『着飾る恋』と『恋はDeepに』が他3本を引き離した。ただしT層(男女13~19歳)では『恋はDeepに』が一番。逆にF2(女性35~49歳)では『着飾る恋』が差をつけた。

ここで興味深いのは、どんな傾向の人がより多いかのデータ。結婚に関心を持つ10~30代女性では、北川景子『リコカツ』がトップとなった。離婚を切り口に結婚の実態に迫るユニークな描き方に、多くの人が引き寄せられたようだ。

この層で2位だった『着飾る恋』は、他3ドラマに大差をつけた。そして10~30代女性の中で、「服装に気を使っている」「化粧品のCMに関心がある」「トレンドやブランドに敏感」といった層では、いずれも恋愛5ドラマの中で1位となった。時代や流行の先端を行く若い女性に最もヒットした物語だったのである。

こうした先進的な視聴者層は、広告主のニーズにも合致している。このため『着飾る恋』のTBS火曜10時枠は、この春のタイムCM交渉で早くからスポンサーが決まっていた。タイムCMとは番組の視聴者層を狙って出稿されるCMのことで、テレビ局の経営にも貢献する番組だったのである。

『恋つづ』からの進化

TBS火曜夜10時は、‘14年にバラエティからドラマ枠に変更された。ところが当初2年あまりは、視聴率が5~8%台と大苦戦が続いた。その低迷を一変させたのが‘16年秋クールの新垣結衣『逃げるは恥だが役に立つ』。初回こそ10.2%とそこそこだったが、その後一度も数字を下げることなく、最終回には2倍の20.8%に大化けした。

以後は二桁をとるドラマが出るようになった。

波留『あなたのことはそれほど』(‘17年春)、綾瀬はるか『義母と娘のブルース』(‘18年夏)、吉高由里子『わたし、定時で帰ります。』(‘19年春)など、話題作も並ぶようになった。

そして‘20年冬、上白石萌音『恋はつづくよどこまでも』で、同枠の勝利の方程式が確立した。続く多部未華子『私の家政夫ナギサさん』・森七菜『この恋あたためますか』・上白石萌音『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』など、気になる男女俳優による“胸キュン”シーンでヒット作が続いたのである。

特定層の含有率の推移を振り返ると、この1年あまりF1の含有率は上昇の一途だ。しかも10~30代の先進的な女性の比率がぐっと上がっている。特に今回の『着飾る恋』は、F1が最も高く、しかも4指標でバランスよくトップクラスとなった。いわば『恋つづ』以来の進化の、ある意味で到達点だった可能性が高い。

若年女性テレビ離れの救世主!?

このTBS火曜夜10時枠は、若年女性のテレビ離れに歯止めをかける可能性があると筆者は考える。

先月NHK放送文化研究所は、「2020年 国民生活時間調査」を発表した。それによると、平日にテレビに15分ですら接触しない若者がこの5年で激増した。男性は10~30代で4~5割がテレビを見ない。女性も10~20代の約半分がテレビを見ていない。

ここで特に重大と考えるのは、10~20代の女性は過去5年で2~3割がテレビ離れを起こしているという事実。実は男性10~30代より変化の度合いが激しい。つまりタイムシフト視聴を含めて若年女性を集める恋愛ドラマは、こうしたテレビ離れに歯止めをかける可能性があるという事だ。

TBSの他にも、日本テレビやフジテレビなどでも、こうした試みが始まっている。

大人がじっくり堪能する上質なドラマも良い。ただし中高年狙いが続いた結果、若年層のテレビ離れは致命的な状況になっていた。TBS火曜夜10時枠のような試行錯誤で、若年女性がテレビに見入る番組を確立しないと、テレビ業界は間違いなく衰退の道を転げ落ちていくだろう。

残念ながら、おじさんは“胸キュン”の感性が枯渇してしまった人が多いだろう。筆者もその一人だが、“味わい深い”ドラマなら違いは分かるつもりだ。若者にもその“味わい”を理解してもらうためにも、まずは“萌え”や“キュン”を導入部に、テレビドラマの豊かな森に若者を誘ってもらいたいものである。

次世代を担うフレッシュなドラマ制作者、頑張れ!

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

  • 撮影近藤裕介

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