金正恩が「状況切迫」と異例発表…北で妊婦が憤死した悲劇の背景 | FRIDAYデジタル

金正恩が「状況切迫」と異例発表…北で妊婦が憤死した悲劇の背景

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6月15日に開幕した朝鮮労働党の総会で国内の切迫状況を明かした金正恩氏(画像:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

「人民の状況が切迫している」

6月15日に開幕した朝鮮労働党総会で、北朝鮮の指導者・金正恩氏は強い危機感を示した。「戦闘的課題」としたのは、極度に不足する食糧事情。北朝鮮のトップが、国内の問題を公の場で明らかにするのは極めて異例だ。

国連食糧農業機関(FAO)によると、北朝鮮は食物を自給生産するにはほど遠い状態だという。外国からの輸入に頼らざるをえず、必要量は1年間に106万3000トン。だが、実際に計画されているのは20万5000トンにすぎない。今年の夏以降は、餓死者が大量に出るという予測もある。

「ひっ迫しているのは、食糧だけではありません。医療も深刻な状況です。表面上、北朝鮮では新型コロナウイルスが蔓延していないことになっていますが、実際は対応不能で感染が疑わしい人を隔離するしかない。薬も器具も不足。医療体制は崩壊寸前なんです」(韓国紙記者)

タバコや酒、菓子まで要求され……

悲しい「医療事故」が起きたのは、今年5月。北朝鮮東部・咸鏡南道(ハムギョンナムド)の威興(ハムン)産院で起きた。被害者は30代の妊婦Aさんだ。情報を掴んだ『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏が語る。

「Aさんは妊娠中になんらかの病気をわずらい、手術を受けなければならなかったそうです。そこで威興産院を訪れた。しかし、病院で求められたのはワイロでした。入院するのに日本円に換算すると5500円、診療を受ける担当医に2200円……。医師からタバコや酒、看護師からはお菓子を要求され、食事の費用も払えと命じられたといわれます。病院では薬が不足し提供されず、市場で自費購入せざるをえなかったそうです」

要求されたワイロは、総額で1万円をくだらない。北朝鮮では家族4人の月の生活費が、1万円強だといわれる。Aさんにとって、とても払える金額ではなかったのだろう。高氏が続ける。

「北朝鮮の病院では、払ったワイロの額によって診療、治療の順番が決まる風潮があります。当然、Aさんに順番は回ってこない。その間にも彼女はどんどん衰弱し、怒りに震えながら、ついに命を落としてしまったそうです。おそらくお腹の子どもも……」

Aさんの遺族も黙ってはいない。検察所に産院の悪行を告発。調査の結果、日頃から産院で不正行為が行われていたことがわかった。被害者はAさんだけではない。今年1月には20代の女性が、3月にも30代の女性が、ともにワイロを支払わなかったため、適切な診療が受けられず重体に陥っていたのだ。同院の医師4人は、当局に逮捕される。

「今回は市民から告発があったため検察が動きましたが、北朝鮮の医療界ではワイロが横行しています。医師は病気を治すことより、カネを優先しているのです。今回、検察は怒った市民をなだめるため、見せしめとして医師を逮捕したという見方もあります。

ただ、医師側にも言い分はある。国から与えられる給料が極めて少ないため、生活が成り立たない。患者からワイロを受け取ったり、個人でクリニックを闇営業しないと生きていけないのが現状なんです。医療従事者の待遇改善は、切迫した問題です」(高氏)

北朝鮮の対外向けサイト『朝鮮の今日』では、たびたび自国の医療体制や保険を「ありがたい制度」と自画自賛してきた。だが実際は真逆。市民が満足に診療を受けられない、恐ろしい事態が常態化しているようだ。

  • 写真KNS/KCNA/AFP/アフロ

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