秘密は「作品選び」にアリ?岡田将生の快進撃が止まらない背景 | FRIDAYデジタル

秘密は「作品選び」にアリ?岡田将生の快進撃が止まらない背景

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『Arc アーク』6月25日(金) 全国ロードショー (c)2021映画『Arc』製作委員会

俳優・岡田将生。現在31歳の彼は、デビューから15年を迎えるいま、さらに「活躍の幅」が広がってきている。2021年に入って、公開・放送された作品をみてみよう。

1月~3月:ドラマ『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』放送
1月29日:映画『さんかく窓の外側は夜』公開
4月~6月:ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』放送
6月25日:映画『Arc アーク』公開
7月~8月:舞台『物語なき、この世界。』上演
8月20日:映画『ドライブ・マイ・カー』公開
10月22日:映画『CUBE』公開

『さんかく窓の外側は夜』などは新型コロナウイルスの影響で公開延期になった作品だが(元々は2020年10月公開予定)、それを抜きにしても相当ひしめいているといっていい。2020年の10月~11月にドラマ『タリオ 復讐代行の2人』が放送され、同じく10月に映画『星の子』が封切られたと考えると、そこからの1年間でほぼ毎月、観客・視聴者が何かしらの新作を観られる状況を創り出しているわけだ。

もちろん押しも押されもせぬ人気実力派であり、彼の実力を考えればこの活躍ぶりは当然なのだろうが、過去のフィルモグラフィ等を探ってみると、ここ1年がかつてないほどハイペースになっているのは確か。岡田将生という役者は、名実ともに新たなフェーズに突入したといえるだろう。

そして注目いただきたいのが、その特異な作品選び。よく「役者は30歳を超えると自由度が変わる」などと言われるが、実に“目利き”な部分が目立つようになってきた。企画自体にエッジのきいたものや、作家性が強いものがこれまで以上に増えてきているのだ。そこで本記事では岡田将生の今年の出演作から、どれだけ彼の作品選びが秀逸であるかを改めて見ていきたい。

友情出演となった『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』では、盟友・生田斗真扮する脚本家を翻弄する人気俳優を演じた。脚本や共演者に難癖をつけるクレーマー的な要素がある癖の強いキャラクターだ。余談だが、間もなく上演となる舞台『物語なき、この世界。』では、真逆となる「売れない俳優」役に挑戦するそうで、そうした振り幅の広さが、現在の岡田の凄みを証明しているのではないか。ちなみにこちらでは、映画『何者』でも組んだ劇作家・演出家・映画監督の三浦大輔と再タッグ。

アニメ化も決定した人気漫画を実写化した『さんかく窓の外側は夜』で演じたのは、複雑な境遇から、人間らしい感情が欠落(というか未成熟)した除霊師役。霊に触れられる能力を持っており、他者とのコミュニケーションがどこかズレている。人間らしい“生々しさ”を極力排除し、浮世離れした存在になりきった岡田の貢献度は、非常に高い。善と悪の判別が「わからない」怖さも持ち合わせており、どちらの領域にも立たず、どちらにも流れる可能性がある微妙な塩梅を、現出してみせた。

『さんかく窓の外側は夜』 ©2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 ©Tomoko Yamashita/libre

『大豆田とわ子と三人の元夫』においては、彼の得意なポジションである神経質でドライな天才肌に見せかけて、松たか子演じる元妻の前ではかまってちゃん&やきもち焼きになってしまうという、ギャップ萌えな弁護士を生き生きと演じた。

会議中に「挨拶っていりますか?」と発言して場を凍り付かせたかと思いきや、恋敵が現れると元妻の自宅に突撃し、子どもじみた言動で行かせまいとする。他者を拒絶しながらも、心を許した人にはとことん隙だらけという愛すべきキャラクターであり、本作で岡田のファンになった方も多いのではないだろうか。

理論武装でかき回すキャラクターというのは、本作の脚本を務めた坂元裕二作品にはおなじみのポジションであり、これまでにも『最高の離婚』の永山瑛太や『カルテット』ほかの高橋一生が任されてきたもの。それが本作においては岡田に託された感があり、そういった意味でも彼の飛躍を感じさせる。

『大豆田とわ子と三人の元夫』 (c)カンテレ

三浦や坂元など、名うてのクリエイターとのコラボレーションも岡田の作品選びの面白さにつながっているが、近年ではよりその部分に拍車がかかってきた。たとえば『星の子』は、芥川賞作家・今村夏子による同名小説を、『まほろ駅前多田便利軒』の大森立嗣監督・芦田愛菜主演で映画化したもの。第30回日本映画批評家大賞を受賞した点からもわかるとおり、作家性の強いインディペンデント色が濃い目の映画だ。両親が新興宗教にハマっている女子中学生の日々を、シビアかつ温かく描いた。

岡田が本作で演じたのは、生徒に人気の教師。だが劇中で、主人公の両親をそうとは知らずに揶揄し、彼女を深く傷つけてしまう。モテるがゆえに他者をないがしろに扱うキャラクターは、『悪人』や『告白』、『何者』にも通じ、岡田がキャリアの初期から多く演じてきたタイプ。それを、メジャー配給の作品とは一味違うざらついた質感・世界観で再構築した岡田。各作品と比較することで、演技の深化も感じられ、より一層味わいが広がるのではないか。

6月25日に劇場公開を迎えた映画『Arc アーク』は、世界的ベストセラーのSF小説『三体』の英訳者としても知られる米国の作家ケン・リュウの小説を、『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督が芳根京子主演で映画化したもの。

斬新な座組もそうだが、物語としても「不老不死が技術的に可能になった世界」を描いており、映像や演出等々、どこを切ってもこれまで国産の映画ではあまり見られなかったフィールドの映画となっている。カルト的人気を誇るホラー『CUBE』の日本リメイクも含め、こうした心躍る企画をしっかりと引き寄せられるのも、岡田がノリにノっている証拠だろう。

『Arc アーク』 (c)2021映画『Arc』製作委員会

『Arc アーク』の中では、遺体を永久保存する「プラスティネーション」という技術を人体に応用しようとする研究者に扮している。ピンと背筋の張った姿勢や無駄のない動き、感情を表に出し過ぎないところなど、超然とした役の雰囲気が、岡田のビジュアルに絶妙にマッチ。説明が多い作品ではないぶん、役者が醸し出すオーラが世界観を構築できるか否かの生命線にもなってくるわけだが、主人公の10代から100代(!)を演じ切った芳根とそのパートナーに扮した岡田の演技は、一切のゆるみを感じさせない。

そして、ある種最大のサプライズといえるのが、『寝ても覚めても』や第77回ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞(最優秀監督賞)に輝いた『スパイの妻<劇場版>』(共同脚本)を手掛け、『偶然と想像』が第71回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリを受賞した実力派監督・濱口竜介とのタッグだ。『ドライブ・マイ・カー』は第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、岡田にとっても新たな扉を開いた作品といえる。

この映画は、西島秀俊扮する舞台演出家・俳優が、妻(霧島れいか)を亡くした後に広島での演劇プロジェクトに参加する姿を描いている。彼が複雑な過去を抱えた運転手(三浦透子)と交流していくドラマが大きな見どころだが、作品をかき回す“異物”としての役割を任されたのが岡田。作中では、主人公とその妻を慕い、舞台のオーディションに応募する若手俳優に扮している。

物腰が柔らかだが、素行にやや問題があり、時々得体のしれない“怖さ”を見せるという難役。美しく、才能あふれるも狂気性がちらつく役どころを見事に演じ切った岡田のパフォーマンスは、作品の屋台骨といっていい。今後の岡田のキャリアの上でも、ターニングポイントとなる最重要の1本といえそうだ。

コメディセンスをいかんなく発揮した『ゆとりですがなにか』を含め、時間をかけてゆっくりと役の幅を広げつつ、「自分にしか演じられない」ゾーンの強化を図ってきた岡田。2020年のステイホーム期間には、柄本時生、落合モトキ、賀来賢人と結成した「劇団年一」の初公演となる実験的作品『肌の記録』を限定配信。こちらは一発撮りのリモート演劇となっており、大いに話題を集めた。

自ら仕掛け、各方面で活躍するトップクリエイターとも切磋琢磨する――。岡田将生は、まだまだ未知なる進化を見せてくれそうだ。

 

『Arc アーク』
6月25日(金) 全国ロードショー

芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン、小林薫
原作:ケン・リュウ『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊 『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』より)
脚本:石川慶 澤井香織 音楽:世武裕子 監督・編集:石川慶
製作:2021映画『Arc』製作委員会 製作プロダクション:バンダイナムコアーツ
配 給 :ワーナー・ブラザース映画
(c)2021映画『Arc』製作委員会

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

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