疑問だらけ…東京五輪「稲葉ジャパン24人」選出の意外な舞台裏
忖度、懲罰、ジャパン愛に論功行賞 疑問だらけの選考基準 好調 佐藤輝明、岡本和真は落選、不調 菅野智之、大野雄大は当選
発表直後から、メンバーの人選に疑問の声があがっている東京五輪野球日本代表。内定選手24人は、どのような理由で選ばれたのか。舞台裏に迫ってみよう。
まず気になるのは、今シーズン、大活躍しているにもかかわらず、選ばれなかった選手たちだ。本塁打王も射程圏に入れている阪神の佐藤輝明(22)は、オールスターのファン投票トップを走るスーパールーキーだが……。
「佐藤は非公表の一次登録メンバー185人にすら入っていなかった。左の強打者タイプの佐藤は実績のある柳田(悠岐・32。ソフトバンク)、吉田(正尚(まさたか)・27。オリックス)とかぶってしまう。五輪に出られるのは24人。その中に『人気枠』『将来有望枠』は存在しない。議論の俎上にも載らなかった模様」(日本代表関係者)
三塁手の選考では、巨人不動の四番・岡本和真(24)がヤクルトの若き主砲・村上宗隆(21)に敗れ去った。
「岡本は最後まで枠を争いました。金子(誠)ヘッドコーチが高く評価していたのですが……。落選理由は二つ。一つは右打ちの内野手が多かったこと。もう一つはキャラ。岡本は静かでおとなしいんですよね。ベンチで声を出すわけでもないし、周りを盛り上げるタイプでもない。となると、左打ちで声も出す、チーム最年少としてイジられ役にもなれる村上が優位になります」(同・関係者)
投手陣を見てみると、ストッパー候補として平良海馬(かいま)(21・西武)、栗林良吏(りょうじ)(24・広島)という”現在好調だが実績はない若手”が選ばれる一方、25歳で史上最速の150セーブを記録した松井裕樹(楽天)が落選した。
「松井は『プレミア12(’19年に開催され、稲葉ジャパンが優勝した国際大会)』を”ヒジの違和感”で辞退したんですが、それが落選に影響したと思います。具体的なケガではなく、フワッとした理由ですからね。やる気がない、とみられたのではないでしょうか」(球界関係者)
パ・リーグが誇る強打者・山川穂高(29)と森友哉(25・ともに西武)も落選したが、二人も「コンディション不良」を理由に『プレミア12』を辞退した”前科”がある。
「彼らは辞退した後、西武の秋季キャンプには元気に参加していました。それを見た代表関係者は困惑を隠しきれなかった」(スポーツ紙デスク)
『プレミア12』辞退は大きな減点となったようだ。ちなみに今回の24人のうち半数以上の13人が『プレミア12』のメンバー。「『プレミア』に出た選手とそうでない選手に対する首脳陣の温度差はかなりあった」(同デスク)という。
次に現在、調子があがっていないのに24人に選ばれた選手たちを見ていこう。
まずは、故障を繰り返し、一軍二軍を行き来している巨人・菅野智之(31)。
「そもそも投げられるのか? という状態なのに選ばれました。これまでの実績と本人の『五輪に出たい』という強い気持ちがあったからです。復調を信じて連れていくのでしょうが、怖いですよね。投げられなくてほかの投手にしわ寄せがいき、投手陣崩壊なんてことになったら……」(前出・球界関係者)
中日のエース・大野雄大(32)も本調子とはいえない中で選出された。
「彼は『プレミア12』のときに『先発でも中継ぎでも、どこでもやります!』と身を粉にして働きました。もちろん実力はある選手ですが、論功行賞という部分も間違いなく加味されています」(前出・代表関係者)
阪神のセットアッパー・岩崎優(30)も調子を落としている中で選ばれた。
「これまでも候補に上がり続けていましたがなかなか縁がなかった。このタイミングで選ばれたのは『いつでも行けます!』と”ジャパン愛”を訴え続けていたのが通じたのかも」(前出・球界関係者)
これまで見てきた通り、稲葉ジャパンは”キャラ被り”を避けてメンバーを選んできた。しかし、例外と言えるのが、ソフトバンク・栗原陵矢(24)と日本ハム・近藤健介(27)だ。ともに「捕手経験のある左打ちの好打者タイプの外野手」だ。
「今季、本来のバッティングができていない近藤をなぜ選んだのか。普通に考えれば、試合終盤に出てきて、一気に局面を変えられる代走の選手を入れるべきなんですが……。周東(佑京・25。ソフトバンク)がケガをしたとはいえ、和田(康士朗・22。ロッテ)などを入れてもよかったのではないでしょうか。近藤を選んだのは稲葉監督の日本ハムへの忖度ではないか。うがった見方なのはわかっていますが、ほかに理由が見当たらないんです」(前出・デスク)
さまざまな思惑や感情、金メダルへの重圧が絡み合う中で今回のメンバーは選ばれた。アテネ五輪でコーチを務めた高木豊氏は語る。
「大切なのは、代表チームで与えられた役割を全うできる人間かどうかです。チームが一つになれれば、金メダルは期待できる。あえて言うなら嘉弥真(かやま)(新也・31。ソフトバンク)、高梨(雄平・28。巨人)といった変則フォームの左腕がいれば、戦いやすかったと思います」
悲願の金メダル獲得は、なるか。
『FRIDAY』2021年7月9日号より
- 写真:共同通信社(菅野)