安住アナ&香川照之の朝番組「ヒットの法則」満載でも唯一残念な点 | FRIDAYデジタル

安住アナ&香川照之の朝番組「ヒットの法則」満載でも唯一残念な点

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TBSの朝の新情報番組『THE TIME,(ザ タイム)』で、金曜日のMCを務めることが決定した香川照之。安住アナとは『ぴったんこカン・カン』をはじめ多くの番組で共演経験がある 写真:ゲッティ/共同通信イメージズ
TBSの朝の新情報番組『THE TIME,(ザ タイム)』で、金曜日のMCを務めることが決定した香川照之。安住アナとは『ぴったんこカン・カン』をはじめ多くの番組で共演経験がある 写真:ゲッティ/共同通信イメージズ

TBSの「朝の顔」が安住紳一郎アナと香川照之さんになるという発表を聞き、報道・情報番組の制作に長年携わってきたテレビマンとして思わずうなった。

この秋スタートする『THE TIME,(ザ タイム)』(5時20分〜8時00分)という新番組のMCが、月〜木は安住アナ、金曜日が香川さんに決定したと28日にTBSが発表したわけだが、これは我々テレビマンから見ると、かなり「ヒットの法則」を踏まえた鉄壁のキャスティングであると言える。

しかし、このキャスティングに私は驚かされただけではなく、実は若干の「残念さ」も感じてしまった。一体それはどういうことなのか? 5つのポイントについて論じてみたい。

① 「朝は男性キャスターの時間、夜は女性キャスターの時間」というジンクス

まず、テレビの報道・情報番組関係者の間で長らく言われてきたジンクスがある。それは「朝は男性キャスターが優位、夜は女性キャスターが優位」というものだ。各局朝のワイドショーと夜のニュースのメインキャスターの顔を思い浮かべてほしい。おおよそ各局そのような布陣になっていると思う。

これは、朝はチャンネルの主導権を女性視聴者が握ることが多く、夜はチャンネルの主導権を男性視聴者が握ることが多いとされているからだ。

まずそういう意味で言うと安住アナ・香川さん共に抜群の好感度と知名度を誇る男性出演者なので、この条件を見事に満たしている。「TBSがこの新番組に掛ける本気度」をひしひしと感じ取れるキャスティングだ。

② 情報番組のメインMCに最適の「引き立て役」としての安住アナの素質

実は「情報番組のメインMC」は、あまり自分が前に出る「目立ちたがり」ではなく、他の出演者の魅力をうまく引き出せる「引き立て役」タイプの人の方が向くとされている。

情報番組ではスタジオでのトークの時間がニュース番組に比べて長く、スタジオに呼ぶゲストの人数も多くなるため、そういったゲストたちの「個性と長所をいかに引き出せるか」というのが腕の見せどころなのだ。

そういう意味で安住アナウンサーの能力は卓越していると言えるだろう。土曜日の『新・情報7days ニュースキャスター』では、かなり奔放なコメントをし、型破りな発言をする大御所・ビートたけしさんを「伸び伸びと自由にさせながら、きっちり締めるところは締め、番組全体としてのバランスをうまく取り、時間通りに進行して危機管理まできっちりとする」安住アナの実力は素晴らしいの一言に尽きる。

「引き立て役」として、あんな巧みな司会進行ができるアナウンサーは、それこそテレビ朝日『モーニングショー』のMCである羽鳥慎一アナなど数えるほどしかいないのではないか。

③ 金曜日に香川照之さんをキャスティングする「高度な計算」

そして金曜日だけ香川照之さんをMCに据えたのも、実に緻密に計算されたキャスティングであると言わざるを得ない。

まず、香川さんは東大卒という高学歴で、ボクシングや昆虫を愛する「趣味の人」でもあることで知られている。ということは「ご自身が俳優としてスポットを浴びる立場にいながら、他の人の話も聞き出すことが出来る引き立て役としての資質も持つ人」であるということだ。

さらに、金曜日はテレビの報道・情報番組の世界では「少しリラックスした、週末モードの番組内容にするのが成功の秘訣」と言われている。

週休二日制の人が多い現在、金曜日には「今日1日乗り切れば、土日は休みだ!何をして遊ぼうか?」という精神状態にある視聴者が多いので、金曜日を月〜木とは違う雰囲気にしたり、MCを変えたりするのは昔からよく行われる定番の手法だ。

この日に香川照之さんという「趣味の人」を持ってくることで、安住アナとは違う魅力を番組に加えることもできるし、土曜日の『新・情報7days ニュースキャスター』に備えて安住アナを休ませる事ができる。これだけでも十分に「好手」ということが出来るが、実はもっとこの手法の巧みさは深いところにあると私は思っている。

④ 「8時前の情報番組」の広いターゲットを一網打尽に

実は朝の情報番組は、大きく2つに分けることができるのをご存知だろうか。その境目となるのは「朝8時」だ。「朝の顔」と一言で言っても、朝8時に終わる番組と、朝8時から始まる番組では大きくその性質が違う。

簡単にいうと、朝8時以降の番組のメインターゲットは「専業主婦とお年寄り」にほぼ限定される。なぜなら学生や会社員らはみんな「出勤・登校してしまう」のでテレビを見なくなる場合が多いからだ。

しかし、「朝8時以前の番組」はそうではない。この時間帯は「子供、学生、出勤前の大人、専業主婦、お年寄り」という実に幅広いターゲットがテレビを見ている珍しい時間帯なのだ。

今や夜のゴールデンタイムに帰宅していない人が多いことを考えると、実は1日の中で一番幅広い人がテレビを見ているのは「朝8時前」の時間かもしれない。この幅広いターゲットの「すべての層から好感を持たれている人物」というのは実はそれほど多くはない。

さあ、ここで話を戻そう。「金曜日に香川照之さんをキャスティングする巧みさ」の理由がもうなんとなくお分かりいただけたのではないか。

「カマキリ先生」として子供に好感を持たれ、その結果「子供の親たち」にも好感を持たれ、ボクシング愛好家として男性からの好感度も高く、『半沢直樹』の大和田常務としてお父さんからお年寄りまで幅広く親しまれている香川さん。

そもそも安住アナも幅広い層から好感を持たれているスーパーアナウンサーではあるが、そこに香川さんを加えることによって、よりこの新番組の裾野が広くなるわけだ、

どうだろう? このキャスティングの巧みさがお分かりいただけただろうか。

⑤ 残念なのは「8時で終わってしまうこと」

このように私は、報道・情報番組の制作経験が長いテレビマンとして、「安住アナ・香川さんコンビ」の新しい朝番組にかなりの期待を寄せているのだが、とても残念な点が一つある。それはこの新番組が「朝8時で終わってしまうこと」だ。

実は朝8時前の情報番組には大きな特徴がひとつある。「短く、テンポよく、多くの情報を繰り返し伝えなければならない」ということだ。

先ほども書いたように、この時間帯に番組を見ている人の中には「出勤・登校前」の人も多い。ということは「自分の出社・登校時間に合わせて起き、出かける準備をしたりご飯を食べながら、出かける時間までテレビを見ている」人が多いということだ。

バタバタしているから、短く、テンポ良くなければ見てもらえない。6時に起きて7時まで見る人も、7時に起きて8時まで見る人もいるから、その日のニュースを繰り返し伝えないと伝わらない。

ということはいくら安住アナが「人の話を引き出す名人」でも、そんなに長くスタジオトークをする時間はないし、いくら香川さんが「いろんな話題を熱く語れる才人」でもそれほど長々と語る時間は「無い」と言わざるを得ないのだ。

これは実に勿体無い。本当は「安住・香川ペア」の本領を発揮するには、スタジオトークの時間が長く取れて、ゲストもたくさん呼べる8時以降の方が良いのではないか?という気がしてならないのだ。

5時20分から8時ではなく、例えば8時から10時を「安住・香川ペア」で、10時から『ラヴィット!』にした方がしっくりくるのではないだろうか?

あるいは『THE TIME,』という番組自体は5時20分にはじめて、7時くらいまで若い局アナなど別のMCを立てて、7時〜9時くらいまで「安住・香川ペア」の『THE TIME,』、そしてそのあとを『ラヴィット!』というのはどうだろう?

……と、TBSの編成でもないのに、余計なお世話を焼きたくなってしまう。それくらい「安住・香川ペア」への期待値が私の中で高まってしまっているのだ。「羽鳥さんとの戦い」を見てみたいとつい思ってしまう。

余計なことまで提案してしまったが、「安住・香川ペア」の良さを生かすも殺すも「共演する出演者たち」のキャスティングと「番組としての立ち位置」にかかっていると思うので、今後ぜひそのあたりに注目してほしい。

魅力ある共演者なしには、せっかくの「安住・香川ペア」も良さは発揮できないのは間違いないところであるし、「硬派路線のテレビ朝日」と「ソフト路線の日本テレビ」の2強が支持を集める朝の時間帯に、「TBSはどんな立ち位置で番組作りをして視聴者の共感を呼ぶのか」と「次の枠である『ラヴィット!』への流れをどう綺麗に作っていくのか」が、秋からのTBSの朝枠の成否の鍵を握ることになると私はみている。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 写真ゲッティ/共同通信イメージズ

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