吉川美代子アナが警鐘「日本からラッコがいなくなる日」 | FRIDAYデジタル

吉川美代子アナが警鐘「日本からラッコがいなくなる日」

「ニュースキャスターとしてではなく、研究者として言わせてください!」 かつては東京とシアトルを行き来してその生態に迫ったことも

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「ラッコという生き物を知っている人がほとんどいなかった昭和30年代から、ずっとラッコの大ファンなんです。初めて実物に会ったのは、伊豆・三津(みと)シーパラダイス(静岡県)で国内初展示になったウィリー。想像していた以上の可愛らしさで、一層、虜(とりこ)になりました!」

本誌が用意したラッコのぬいぐるみに「ヒゲもないし、頭の色も、耳も、足の形も変!」とダメ出し。それでもカメラを向けると爽やかな笑顔で応えてくれた 撮影:會田 園

普段の落ち着いた語り口とは打って変わり、アツく語るのは、元TBSアナウンサーの吉川美代子氏(67)。実は彼女、’92年に著書『ラッコのいる海』を刊行し、水族館の飼育担当者にラッコの生態を教えたこともある、知る人ぞ知る「ラッコ研究家」なのだ。

突然だが、現在日本の水族館で飼育されているラッコは全部で何頭か、ご存じだろうか。驚くなかれ、たったの4頭である。わずか11頭しかいない、あのパンダよりも少ない! 5月に神戸市立須磨海浜水族園で飼育されていたラッキー(22・オス)が老衰(ろうすい)で亡くなったことで、オスとメスが揃った水族館はなくなった。吉川氏は、そんな惨状(さんじょう)を憂う一人だ。

「ラッコを”客寄せ”の目玉にしてきたツケが回ってきたような気がします。
ラッコが初めて日本の水族館にやってきたのは’82年。愛らしい姿でラッコブームが到来し、最盛期の’94年には28施設で122頭が飼育されていました。実はラッコは毛皮目当ての乱獲(らんかく)によって絶滅したと思われていたほど希少な動物。ワシントン条約で国際取引が規制されています。当初日本の水族館にいたのは、アメリカ政府の許可を得て、アラスカ湾で捕獲されたラッコです。

そもそもラッコを捕獲して輸送するのは難しく、捕まえる段階で半数以上が網に絡まって溺(おぼ)れ死んでしまいます。神経質な動物なので、上手く捕獲しても人からエサをもらうのに慣れず、餓死(がし)してしまうケースも。輸送時に毛皮の表面が乾き、死に至ることもあります。1頭展示するために何倍もの頭数が犠牲になっているのです。

その後、アメリカの輸出規制が厳しくなり、国内のラッコ同士の交配で頭数を増やすことになりました。これが何世代にもわたり、ほとんどのラッコが血縁関係となって、生殖能力がなかったり、基礎疾患のある個体が増えてしまいました」

ラッコ減少の根底には、日本特有の”お客様ファースト”精神があるという。

「アメリカの水族館は野生に近い屋外で飼育するのが基本。広く深い水槽を用意し、見学者側だけにガラスがある。しかもラッコを上から見下ろすような形ではないので、動物が人間の視線にストレスを感じることもありません。一方、日本は人間が見やすいよう強力なライトでラッコを照らし、水槽は狭く浅い。以前、1畳ほどの広さにポツンと展示されているラッコを見たときは『見世物にされている』と涙が出ました。”お客様”のことが最優先になっているんです」

そう嘆く吉川氏。そもそも彼女はなぜ、ラッコの研究を始めたのか。

「『ラッコ写真集のキャプションを書かないか』という依頼をいただいたのがきっかけでした。報道キャスターとして安易なことは書けないと思い、勉強を始めましたが、当時日本に専門家はいないことがわかりました。鯨類(げいるい)の研究者から、アメリカ・シアトル在住のラッコ研究の第一人者を紹介してもらい、すぐに連絡。平日はシアトルで勉強、土日は東京でニュース番組に出演、さらにアラスカにも行くというハードスケジュールを繰り返しました。その中で、日本では知られていないことがたくさんあると気づき、本を刊行することになったんです」

吉川氏は日本のラッコの未来について、こう締めくくった。

「現在飼育されている4頭のラッコは13~22歳と高齢で、出産は無理。いずれ日本の水族館からラッコは消えます。温暖化の影響で野生のラッコも絶滅が危惧(きぐ)されているなか、『水族館で可愛らしいラッコを見て!』という扱いはもはや時代遅れです。『見学者に勉強してもらうために展示をする』というくらいの、劇的な変化が必要なのです」

鳥羽水族館(三重県)では現在2頭のメスラッコが飼育されている。写真は17歳のメイ。そのほか2頭は須磨海浜水族園(兵庫県)とマリンワールド海の中道(福岡県)で見ることができる

「FRIDAY」2021年7月9日号より

  • 會田 園

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