「ワクチン対応すべてがムダに」地方の悲鳴と菅首相への「恨み」 | FRIDAYデジタル

「ワクチン対応すべてがムダに」地方の悲鳴と菅首相への「恨み」

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新型コロナ感染者がじわじわ増えている。五輪強行開催なら、国内の感染拡大は避けられない。菅政権はワクチン計画に失敗、感染者激増で、政権維持が危うい。まさに「五輪クラッシュ」だ。

開幕まであと3週間。「五輪クラッシュ」のカウントダウンだ 写真:つのだよしお/アフロ
開幕まであと3週間。「五輪クラッシュ」のカウントダウンだ 写真:つのだよしお/アフロ

「ゲームチェンジャーと期待されたワクチンだが、オリンピック開会を目前にした7月1日時点で、2回接種完了者は11%。接種開始から半年が経って、まだそんな程度かという有権者の非難の声が日に日に高まっている。しかも、職域接種が始まるなか『接種券さえ届かない』『自分より若い人がすでに1回目接種した』などという不公平感が拡大していている。地元の声を聞くにつれ、政府は何をやっているんだと困惑しています」

安倍前首相周辺の自民党代議士は、こう言って下を向いた。

オリンピック後に解散総選挙必至という緊迫した状況で、党内からは菅義偉首相のリーダーシップへの不満がふつふつと高まっているのだ。

別の自民党有力代議士も菅政権に対して悲観的だ。

「ワクチン接種のスピードは少し早くなった。ところが、ここにきて供給計画が杜撰(ずさん)で、ワクチンが打てないという。河野太郎はいったい何をやっているのか、と言わざるえない」

国民も党内も、それぞれの立場から異口同音に「何をやってるんだ」と叫んでいるのだ。

海外では、年初からワクチンの本格接種が始まってワンクールを終え、通常の社会活動が再開された国も多い。日本はいつまで「飲酒抑制、外食規制」をし続けるのか、飲食業界だけではなく、一般国民の我慢も限界に近い。

「日給17万円」地方自治体の努力に「すいませーーん」の電話1本

地方自治体は、政府から接種準備を急がされ、会場の確保、打ち手医師の確保など、必死に態勢を整えた。

「医師の確保には、日当17万円を提示しました。交通費には上限を設けていません。都内から宇都宮や水戸まで、タクシーを利用する医者がいても、黙って払うしかない。

関西でも、県をまたいだ長距離タクシー代を市民税から支払っているところがあるそうです。それでも地方は、できないこともなんとかやり遂げたというのに、国から来た電話は極めて不愉快でした。

『すいませーーーん、ワクチンが不足して、申請数を送れなくなりましたーーー』ですよ。

何がわんこそばで打ち続けろ、ですか。ふざけるんじゃありませんよ。我々地方自治体の負担をどう思ってるのか。国のワクチン管理はどうなってるんでしょう」(関東地方の自治体首長)

財政規模の小さな自治体にとって、国から丸投げされたワクチン対応の支出は決して軽くない。ここでも、何をやっているんだ!どうなっているんだ!という声が噴出している。

四方八方から聞こえる「NO」に

菅首相は今、国民からも党内からも、地方自治体からも「NO」を突き付けられている。

「この秋までに国民の7割以上がワクチン2回接種を完了したとしても、政府のあまりなポンコツぶりに政権の評価が上がる可能性は少ない。オリンピックを強行する一方で長い忍耐を強いられた国民の怒り、無計画なワクチン対応で、逆風の選挙になりそうだ』(自民党幹部職員)

中堅の自民党代議士も、菅政権への風当たりは極めて厳しいと分析している。

「ワクチンを目の前にしながら届かず、亡くなられる国民がまだたくさんいるのです。どれほど無念であろうか。まるで終戦間際に徴兵されて戦死した、あの虚しさの再来です」

だから、ワクチン接種「1日100万回」と大号令しても、内閣支持率は一向に上向かないと言うのである。

首相は「国民の命と健康を守るのが政治の役割」と繰り返し言い続けているが、コロナ禍に命を奪われた国民にその声は届かない。高齢者は家にこもって人に会わず、息を潜めて暮らす。そして東京五輪のために、世界から大挙して人が押し寄せるのだ。

国民の痛みを想像できない首相

この国難のとき、表向き「会食を控えている」菅首相は、夕方には赤坂宿舎に戻り、自重しているように見える。が、じつは、宿舎にケータリングを取り寄せて、神奈川県選出議員と和気あいあいの「食事会」を催しているんじゃないか…なんて話も聞こえてくる。

菅首相は、出演料や講演料といった収入が激増、こういった「雑所得」だけで757万円。年収3871万円という高額所得者。新型コロナ感染拡大を受けて議員歳費がカットされ、野党党首が収入を減らすなか、唯一の「前年超え」、国会議員でもっとも高収入なのだ。

金はある。夜の外出はできない。ならばと身内に太っ腹で振る舞う。首相として、国民の痛みを実感できないまでも、少しは「想像」できないものだろうか。

「オリンピック後は、来年度の概算要求に焦点が移り、9月の臨時国会では、国民の命と健康を守るという大義名分で20兆円規模かそれ以上の経済対策と補正予算を考えています。この予算はじつは、来年の参院選挙対策として、国民の不満と経済再生に主眼を置いた、いわば選挙対策費なのです」(経産省キャリア)

「国民の命を守る」という首相の言葉に、実体はあるのか。

感染者爆増予測のなか、五輪に突き進むニッポン

7月に入り、東京の新規感染者は700人を超え、あまりに早いリバウンドに、ネットには医療関係者や一般国民からの恐怖と怒りの声が溢れている。

「まもなく1000人超えか」「これ以上は無理」「オリンピック怖い」、そして、「高齢者接種がほぼ完了したんだから、外出OKじゃね?」

ところが、「デルタ株」と呼ばれる変異体は若年層に拡大、重症化もしている。東京都のモニタリング会議では、五輪開会式後の7月下旬には、東京都内の感染者数が1000人を超えると指摘している。また、厚労省アドバイザリーボードの状況分析では、夏までに全国の1日の感染者が「最大7000人」、少なくとも2000人にのぼると試算を発表した。

「今冬の欧米各都市では、変異し続けるウイルスに晒されて、ロックダウンは避けられないと思われます。そのうえ、サッカー欧州選手権で2000人のクラスターが起きました。大規模スポーツイベントの恐怖です。イギリスで発生した感染拡大は、その1ヶ月後には日本に伝播します」(厚労省キャリア)

「緊急事態宣言ならオリンピックは無観客開催」と約束した菅首相。

「しかし、セレモニーでは天皇陛下がオリンピック関係者をお迎えするという式次第が決定されているので、無観客は名ばかり。数千人のIOC関係者などが国立競技場に入ります。こうした光景がテレビに映し出されて、国民はなにを感じるでしょうか…。オリンピックへの冷ややかな感情がより深まることは避けられない」(組織委メンバー)

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は「観客については政府判断に従う」と表明した。これは、オリパラ開催の責任が、主催都市である東京から政府に移ったことを示している。

菅義偉首相に、オリパラ、新型コロナ対策の全責任がのしかかっているのだ。国民の命か、五輪経済か。判断を一歩間違えれば、この国はたちどころに倒れるだろう。「五輪クラッシュ」。今や薄氷の政権だ。

  • 取材・文岩城周太郎写真つのだよしお/アフロ

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