1億円クラファン大成功も春風亭昇太会長が背負う「寄席の温度差」 | FRIDAYデジタル

1億円クラファン大成功も春風亭昇太会長が背負う「寄席の温度差」

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演芸場支援のクラウドファンディングへの協力を求める(右から)三遊亭小遊三さん、春風亭昇太さん、柳亭市馬さん、春風亭一之輔さん。とにかく、まずは目標額が集まってよかった
演芸場支援のクラウドファンディングへの協力を求める(右から)三遊亭小遊三さん、春風亭昇太さん、柳亭市馬さん、春風亭一之輔さん。とにかく、まずは目標額が集まってよかった

東京の5軒の寄席を支援するために、多くの落語家らが所属する落語協会(柳亭市馬会長)と落語芸術協会(春風亭昇太会長)が立ち上げた「寄席支援クラウドファンディング」が先月末、締め切られました。

支援金総額はなんと1億超え! 1億362万5000円でした。

第一目標金額の5千万円を開始から4日目でクリアーし、第二目標金額8千万円を急きょ設定しましたが、それも軽々とオーバー。運営会社は

「国内伝統文化関連クラウドファンディング市場最高額となりました」

とコメントを発表しました。

まずはめでたしめでたしですが、関係者の話を総合すると、当初は決して一枚岩の支援…ではなかったようです。

今回、両協会が支援の対象にしたのは、浅草演芸ホール、池袋演芸場、上野鈴本、上野広小路亭、新宿末広亭の5軒です。その5軒すべてに、両協会に所属する芸人が出演しているわけではありません。

上野鈴本は落語協会所属芸人、上野広小路亭は落語芸術協会所属芸人。要するに、自分たちが出演しない寄席も支援しているわけです。

大同団結ですから、このあたりは些細なことでしょう。問題は5軒の寄席すべてが、当初はクラファンを欲していたわけではないというところにあります。

「5軒の中には、コロナ禍を耐える体制を整えたところもあります。もともと支援の必要のないくらいの財務力をもったところもあります。たとえば上野広小路亭は永谷商事という不動産業者が経営していますので、ちょっと事情が違う。池袋演芸場も都内に多くの不動産を所有している優良企業ですから、経営は盤石…ともいえるのです。

クラファンの支援を必要としていた寄席と必要としていなかった寄席が、”寄席は日本の文化””寄席を守ろう”というスローガンで一緒になった。美談ともいえますが、なかには『巻き込まれた感じもある』と本音を漏らす関係者もいますよ」(演芸関係者)

もとはと言えば、4月末に東京都から無観客要請を受けた寄席が、それに応じることなくゴールデンウィークに営業しようとしたところ、加藤官房長官が会見で

「寄席(本人は「よせき」と発音)も協力してほしい」

と呼びかけワイドショーが取り上げるなどちょっとした騒ぎになったことがきっかけ。その騒ぎに油を注いだ人物がいたそうです。寄席関係者が明かします。

「ある評論家が、落語芸術協会の事務局長に電話をかけ、『この流れでクラファンをやれば集まる』と伝えたそうです。もともと政治家から、クラファンでもやったら? と持ち掛けられていたこともあり、事務局長主導であっという間に物事が進んだというのが真相です」

さて、寄席演芸ファンの浄財1億円は、今月中旬から下旬に、両協会から寄席へ贈呈されることになっています。

「経営状態によって分配するとなると温度差が出てしまうので、公平を考えて、客席数と営業日数から算出するそうです。総額1億円と言っても、そのうちの約10%はクラウドファンディング運営会社の取り分です。それでも平均すると2000万円ほどの金額が、寄席に注ぎ込まれます。

問題はその先です。会計士に確認したところ、その金額には税金もかかるそうです。寄席としても、通常の興行の穴埋めだけに支援金が消えてしまっては展望がありません。何か、あらたな試みをして、先々にリターンを得られるような先行投資をしないと、寄席ファンから呆れられてしまう恐れもあると思いますよ」(前出・演芸関係者)

5軒の寄席には、支援金をどのように使うのかプランを提出し、さらにはその結果を報告してほしいと考えますが、さて、いかがなものでしょうか。

  • 取材・文ワタベ・ワタル(エンタメライター)

    夕刊紙文化部デスク、出版社編集部員、コピーライターなどを経てフリーランスのエンタメライターとして活動。取材対象は、映画、演劇、演芸、音楽など芸能全般。タレント本などのゴーストライターとして覆面執筆もしている

  • 写真共同通信

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