元秘書が分析!小池都知事の「復活劇」を後押しした側近の存在感 | FRIDAYデジタル

元秘書が分析!小池都知事の「復活劇」を後押しした側近の存在感

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戦略なのか、ナチュラルなのか(写真・AFLO)
戦略なのか、ナチュラルなのか(写真・AFLO)

<都議選での「大敗北」が予想されていたにもかかわらず、ギリギリのところで踏みとどまった都民ファーストの会。小池都知事の「突然の休養」からの「復活劇」が戦いに大きな影響を与えたことは間違いないが、はたしてこれは小池百合子知事本人が練り出した「作戦」だったのか。小池氏の元秘書がその背景を分析する――>

過去にも入院したことがあった

「あれ、百合子じゃねーか」
「まじ百合子じゃん。病気、治ったの?」

都議選最終日。荒木千陽(ちはる)・都民ファースト代表の事務所前を通りかかった金髪の若いカップルが、突如登場した小池百合子・東京都知事を見つけて、興奮気味にこう話していた。彼らのもらした一言は、都民の気持ちそのものだった、と言っていいだろう。

少し具合の悪そうな小池知事とは対照的に、異様な熱気に包まれる現場。小池知事と荒木代表、そして、先日千代田区長に当選したばかりの黒いスーツ姿の樋口高顕氏が並んで歩く。この、知事と都民ファ代表が並び立つ姿が活力となったのか、「苦戦」「落選」が言われていた荒木代表は、最後の最後で勝利をつかみ取った――。

当初は「予想獲得議席7議席」(6月5~6日・自民党系)とも言われたほどの惨敗ムードからの、まさかの踏ん張りを見せた都民ファーストの会。メディアの批判にさらされながらも、「小池劇場」は、健在だった。

「逆転劇」の始まりは、都議選を前にした急な入院だった。この入院についてメディアや識者の間では、多くの噂が飛び交っていった。

『小池氏にも「重病説」から「仮病説」まで流れている』(夕刊フジ・6月24日)

『「緑のたぬき」の異名を持つ小池知事は瞬間変身芸が得意だが、今回は過労入院をしていた病人から突如、直系候補を命がけで応援する「選挙のプロ」へと豹変したのだ』(NETIB-NEWS・7月3日)

『政治家が激務であるのは当たり前。厚労大臣にしても菅総理にしてもめちゃくちゃ激務だけど耐えている。ちょっと冷たい言い方をすると、激務に耐えられないと政治家は務まらない。そういうことがあるので、都議選絡みで“仮病じゃないか”など悪口言う人も出てきたりする』(舛添要一氏・6月28日)

突然の入院に向けられたのは、冷ややかな視線ばかりだった。しかし、小池知事が公務中に入院したことは、過去にもあるのだ。

2006年、小泉内閣の環境大臣だった小池氏は、急性肺炎でダウン。メディアでは「危篤」「心肺停止の疑い」さらには「集中治療室に入ったきり出てこない」とまで報じられた。

このとき、世の心配をよそに小池氏は順調に回復。個室の病床から環境省の職員へメールで指示を飛ばしていた。今でいう「リモートワーク」のさきがけであった(ただし、肺炎療養中だったため、電話はできなかった)。

多くの政治家は、本当の病状を明かさないものだ。元気がないと知られると、政治生命の危機に追いやられると考えているのだろう。だから、報道するメディアも、政治家が正確に病状を明かしても、そのまま信じることができないのもしょうがない。

今回の入院騒動も、メディアの騒ぎ方は同じようなものだった。「仮病」を疑う声が多数だったが、入院当初の「都民ファーストの会」事務方の心の落ち込みを直接聞いた私が推測するに、おそらく、本当に疲れ果てて、倒れていたのだろう。

咳が止まらないのも、環境大臣の時の肺炎を思い起こさせる。小池知事は疲れると免疫力が落ち、肺の機能がダウンする体質なのかもしれない。

いずれにしてもこの入院が、結果として都民ファーストを救ったのは間違いない。

前述したとおり、入院までは「突発的なアクシデント」であり、狙ったものではなかったと私は推測する。が、退院の時期を含め、選挙戦最終日の世間がひっくり返るような大ドンデン返しには、確実に「戦略」があったと見るべきだ。私は、その戦略には、荒木千陽・都民ファーストの会代表の存在が、大きな影響を与えたと感じている。

都民ファーストの会・荒木代表(写真・AFLO)
都民ファーストの会・荒木代表(写真・AFLO)

歴代のブレーン

2016年に自民党を飛び出して都知事選に圧勝し、都民ファーストの会を立ち上げさせたとき、誰がその「振付」をしたのか。本当に小池知事ひとりで考えてやったことなのか――これらは永田町で常に漂っていた謎であった。

従来から、重要な局面では小池知事自身が最終決断を下しているのは間違いないが、その時の最側近が誰なのか…によって、決断の内容、およびアウトプットが少し変わっているように感じている。

環境大臣当時の秘書官は、関係各所に完璧な気配りのできる人で、クールビズ、外来種駆除などで、各所とハレーションが起きそうなところを見事に対処し、対立の火種を消してまわった。

郵政選挙もケンカを一番に「売った」というイメージがあるかもしれないが、実際には、「(対立候補である)小林興起氏に売られたケンカを『買った』」とみる関係者は多い。

都知事になった直後、自民党政治に批判的な姿勢を示していた野田数氏を特別秘書にした小池知事は、ハレーションを逆に楽しんでいるかのように見える場面もあった。

現在その「側近」の役割を担っているのは、やはり荒木代表ではないだろうか。都民ファースト誕生以来ずっと小池氏についてきた「信頼の厚い」荒木代表の存在を意識し、声を聴きながら戦略が練ったと考えるのがわかりやすい。

都民ファが圧倒的に不利な事前情勢で、今後の議会運営で過半数を握るとみられていた自公に「意地悪されたくない」と考えるのであれば、病気を理由に寝ているのが正解であろう。「小池知事が何をしようと、称賛するしかない勢力」(自民党関係者)とまで揶揄された都民ファのことを知事が無視しても、政局上問題が起きないとまで指摘する人もあった。

今の側近が歴代にいたような「高い戦略性を持つ」、もしくは「自民党に近い」、あるいは「ある意味でズルい」人物だったら、小池知事は体調不良を理由に、選挙が終わるまで大事をとったりしていたかもしれない。

しかし、小池知事は荒木代表率いる都民ファの候補たちを裏切らなかった。愚直に目の前の目標に突き進む荒木代表がコミニケーションを取り続けたからこそ、自公の勢いに水を差す「選挙中の復帰」を選んだのではないか。最後の最後まで当選ギリギリの状況にあった荒木代表だが、小池知事が応援に入ったこともあってか、最終的には当選を勝ち取った。そこには「荒木代表を落とすわけにはいかない」という知事の気持ちがあったはずだ。

昨年の都知事選で小池氏が再選を決めた時、コロナ禍でほとんど人のいない選挙事務所に入った荒木代表は、小池知事に直接花束を渡している。振り返ればこれは、二人の関係性を示す象徴的な出来事だった。

さて、都議選は「小池マジック」ともいわれるほど、都民ファが踏みとどまる結果となったわけだが、一方で自民党も着実に議席を伸ばし存在感を増した。この先の議会運営が厳しさを増す中で、「小池知事は国政に再挑戦するのではないか」とまことしやかに囁かれている。そのとき、小池知事はどう動くのか。荒木代表はなにを思うのか。注目が集まるのは、これからだ。

  • 執筆小倉健一

    アナリスト。ITOMOS研究所所長

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