唐辛子博士が語る激辛ブーム「驚くべき最“辛”事情」
信州大学農学部・松島憲一准教授 辛すぎて食べられないほどに進化してもなぜ研究・開発は続くのか?
辛さの新記録が次々と塗り替えられている唐辛子業界。’17年に開発された『ペッパーX』は『ハバネロ』の10倍の辛さを誇るなど、その数値は規格外だ。
その最〝辛〟事情について20年以上にわたり唐辛子を研究する信州大学農学部の松島憲一准教授(54)が解説する。
「’86年に新語・流行語大賞に『激辛』が選ばれて以来、’90年代のタイ料理ブーム、’00年代のハバネロブームを経てここ2〜3年は第4次ブームの真っ只中です。特徴は、食用とは思えないほど『辛さ』にこだわった新品種が生まれていること。市販の『タバスコ』が約3000スコヴィル(辛さの単位)なのに対し、’17年には『ドラゴンズ・ブレス』が当時最高となる248万スコヴィルを記録。さらに10ヵ月後には『ペッパーX』が318万スコヴィルを記録し話題を呼びました。研究が続く背景には、ギネス記録の更新という目的があるようです。人類はどこまで辛いものを生み出せるのか、その探求心から、今日も世界中で開発が続けられています」
唐辛子の研究が進む中、それらを使った激辛グルメにも変化が起きている。
「大きく二つのトレンドが生まれています。一つは山椒をブレンドした『シビ辛』。もう一つは辛さだけを追求した『ストロング系』です。特に後者は『痛い』と感じるほどの辛みが特徴で、インスタント食品やお菓子を中心にここ1年で商品数が急増しています。コロナ禍による巣ごもり生活の中で、〝おうち激辛〟を楽しむ人が増えていると考えられます。また、ユーチューバーの『食べてみた』動画により、需要が高まっています」
これからも唐辛子の進化は止まらない。

『FRIDAY』2021年7月16日号より
撮影:濱﨑慎治