初先発初トライ ラグビー日本代表・齋藤が語る「バレットの教え」 | FRIDAYデジタル

初先発初トライ ラグビー日本代表・齋藤が語る「バレットの教え」

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アイルランド戦でスタメンデビューした齊藤直人(写真提供:日本ラグビーフットボール協会)
撮影:斉藤健仁

2019年ワールドカップ(W杯)日本大会以来、1年8ヶ月ぶりにテストマッチを行ったラグビー日本代表。若手の有望株として桐蔭学園高、早稲田大時代から日本代表入りを期待されていたSH齋藤直人が、6月26日のブリティッシュ&アイリッシュライオンズ(ライオンズ)戦で初出場、7月3日のアイルランド代表戦では初先発を果たした。

そんな齋藤は今季、所属するサントリーで世界最高峰の司令塔として知られるボーデン・バレットから気づかされたことがあった。

齋藤は初先発となった世界4位の強豪であるアイルランド代表戦では後半17分、味方をしっかりフォローして代表初トライを挙げ、長短のキックでジャパンのテンポの早い攻撃をリードするなど非凡なアタックセンスは見せた。ただ、初先発の気負いもあったのか、簡単な反則やキックミスが相手のトライに結びついてしまった。

試合後、「ポジティブに捉えられなくて……」と正直に吐露した齋藤は「初トライは嬉しかったですが、一番印象に残っているのはやっぱり自分のダイレクトタッチ(キックミス)で一気に流れを相手に持っていかれたシーンです。テストマッチはワンプレーで決まるというのは身に染みて感じた」と、悔しそうに試合を振り返った。

しかし、6月12日のサンルブズ戦、ライオンズ戦と後半途中出場から出場し、日本代表のジェイミー・ジョセフHCが「プレッシャーがかかった中で、エナジーもあり、的確な判断もしていた。今度は先発という、またさらにプレッシャーのかかった中で彼がどんな仕事をするのか見てみたい」という期待を受け、アイルランド代表戦は後半27分まで堂々とプレー。2023年W杯向けて大きな戦力となり得ることを証明して見せた。

齋藤といえば、高校1年生から桐蔭学園で「花園」こと全国高校ラグビー大会で活躍し、早稲田大1年時からSO岸岡智樹(クボタ)とともにハーフ団を組み、4年時には主将として11年ぶりに早稲田大の優勝に大きく貢献した将来を嘱望されたSHだった。

ただ2020年1月、大学選手権で優勝するとすぐにサンウルブズに参加、シーズンはコロナ禍の影響で、途中で中断したがスーパーラグビーで6試合に出場し研鑽を積んだ。事実、今回、新戦力として一緒に活躍したWTBシオサイア・フィフィタ(当時は天理大4年/現近鉄)らとともに、公にされることはなかったが2020年の日本代表候補入りも果たしていた。

そんな中で、「2019年ワールドカップは出られず悔しい思いをしました。絶対、2023年のワールドカップは出たい」と心に決めていた齋藤はサントリーのS&Cコーチと「武器をどんどん増やしていこう」と話をしていた。

その分、ラグビー選手として「パススピードとフィットネスはずっと継続してやっていて自信がある」と感じていた一方で、他のSHと比べて「フィジカルは強みになり得る部分だったので、筋力を増やして信頼を得られるようにしていこう」とトレニーニングに精を出した。実際体重は大学時代よりも2~3kg増えて74kg代に増えていた。

さらに昨年12月にはサントリーに、世界最優秀選手賞に2度輝いている「オールブラックス」ことニュージーランド代表SOボーデン・バレットがサントリーに加入したことが彼の成長を加速させ、バレットと実際に一緒に練習をするといきなり衝撃を受けた。

「初日からサインは全部覚えていて、すぐにチームに馴染んでいた。スキルはすごく正確で、足もめちゃくちゃ速い。初日からラインブレイクとかしていて、プロフェッショナルだなと思いました!」

「ボーディー(バレット)は人柄も良く、いい人ですし、周りとコミュニケーションを取ろうとしていて、受け身ではなかった。自分がどういうプレーをしたいのか、このコールのときにはこのへんにパスをしてとか初日に言われましたね。スピードやフィットネスは自信があるところなので言われないように意識しました(苦笑)。

また自分にはもっと積極性やコミュニケーションところがもっと必要だと思いました。ボーディーは練習後も自主練をやっていて、才能や身体能力だけではなく、努力して世界のトップ選手になったんだな」

トップリーグの試合中にバレット(左)からアドバイスを受ける齊藤(撮影:長尾亜紀)

齋藤はそんなバレットから勧められたことがある。それはプレースキックの練習だった。

「ボーディーとしゃべっていて、大学でプレースキックを蹴っていたのをYouTubeかなんかで見たみたいで、『絶対、プレースキックを蹴っておいた方がいい。プライオリティーが低くても練習しておいたほうがいい。イギリスやフランスではSHで蹴っている選手も多いし、上にいけばいくほど武器は多い方がいい』と言われました」(齋藤)

バレットは齋藤に大いにポテンシャルをと世界で戦える選手だと感じて、プレースキックを蹴るように言ったに違いない。プレースキックを蹴ることは、他のキック上達にもつながる。

特に齋藤が務めるSHは、ハイボールをピンポイントで蹴って味方に取らせて一気にチャンスを広げるキックが世界的に重要視されている。実際に齋藤はアイルランド戦でハイボールを蹴った。

しかし直接、タッチの外に出してしまい、結果的にアイルランド代表のトライを許すミスキックとなってしまった。ただ、齋藤はバレットの言葉を信じて、今後もキックはもちろん他のスキルも磨いて「世界トップ選手」になるために貪欲に努力を続けていく。

サントリーにはバレット以外にも外国人選手や日本人のプロ契約の選手もいて、練習の虫で、流に「(ラグビー)オタク」とまで言われる齋藤は「ボーディーは練習も楽しそうに常に100%でやっていました。大学のときは常にトレーニングをしようしようと思っていましたが、社会人になって練習に集中するためにもオフの重要性を学びました」という。

練習場から離れると、妻や娘とともに家族サービスに精を出していたバレットらを真似て齋藤はどうやったらオフの日にリラックスできるかと考えて、映画を見るなどいろいろ試してみたという。だがまだ家族もおらず独身寮で一人暮らしの齋藤はしっくり来るものがなかった。

「ラグビーを見ることを仕事して捉えている人もいましたが、自分はラグビーが根本的に好きだったので、(TVなどで)ラグビーを見ることで気分転換できる」と振り返った。結局、ラグビーが大好きな齋藤は、若者がYouTubeを見るように、オフもラグビーをテレビで楽しむことで結果的には大学時代と変わらず、ラグビー漬けの日々となった。

準優勝したサントリーでは2019年W杯で活躍したSH流大から9番の座を奪うことはできなかった。それでもバレットとハーフ団を組んで、プレーオフの決勝でトライを挙げるなど9試合に出場した。世界のトッププレーヤーのバレットと一緒にプレーし刺激を受けつつ、成長を遂げて自信を得たことが、この6月、7月の日本代表での活躍につながったことは明らかだ。

初の日本代表活動を終えて齋藤は「個人としてはこの強度で2試合プレーさせていただいて、初めでしたが本当にいい経験だった。これを次につなげれば意味ないと思うので、次のキャンプに向けていい準備したい。(2023年W杯に向けて)、日々、必ず出るという気持ちを持って行動したい」と先を見据えた。

齋藤にとってコーチ陣に大きなアピールができた遠征となったことは間違いない。齋藤は次のワールドカップに向けた、新しい船に乗り込むことに成功したと言えよう。

  • 取材・文斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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