『ドラゴン桜』でも魅せた長澤まさみはラストシーン・シンデレラだ | FRIDAYデジタル

『ドラゴン桜』でも魅せた長澤まさみはラストシーン・シンデレラだ

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高視聴率で幕を閉じた『ドラゴン桜』でも、視聴者を「涙のラストシーン」で惹きつけた長澤まさみ
高視聴率で幕を閉じた『ドラゴン桜』でも、視聴者を「涙のラストシーン」で惹きつけた長澤まさみ

最終回の平均世帯視聴率20.4%。今年放送された全ドラマの中で最高視聴率を獲得した日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系)は、‘05年に放送された前シリーズの最終回20.3%をも上回る快挙を成し遂げた。

「元・暴走族の弁護士・桜木健二(阿部寛)が落ちこぼれの生徒たちを再び東大に導き、龍海学園の存続を巡る売却問題でも、まさかの大逆転。日曜劇場らしい手に汗握る展開にも賞賛の声が寄せられました。

そんな中、最終回では前シリーズに生徒役で出演した紗栄子、小池徹平、中尾明慶、そして声のみながらジャニーズ退所後ドラマ初出演となった山下智久、さらに新婚の新垣結衣まで登場。中でも長澤まさみとガッキーが手を取り合う仲睦まじいシーンは、歓喜の声に包まれました」(ワイドショー関係者)

しかし最終回の最高の見せ場は、この場面ではない。涙腺崩壊を呼び起こす名場面が、最終回のラストシーンにやってくる。

「生徒1人1人に、ラストメッセージを送った桜木が、教壇の横に立つ元教え子で弁護士・水野直美に対して『バカがつくほどお節介で、お人好しで、困ってる人間をほっとけねぇ。情に厚く、仲間想いで、大昔に受けた恩をいつまでも大切にしている』『水野どうもありがとう』と言って頭を下げる。

そんな桜木に対して涙をこらえきれずに嗚咽、声にならない声で『先生』と言う水野演じる長澤の演技を超えた涙には、視聴者からも『ガチ泣きっぽい』『水野宛のセリフってアドリブ?』といったコメントが寄せられました。桜木に対する、ドラマ『ドラゴン桜』に対する万感の思いが込められた、今作で最も印象に残るシーンとなりました」(放送作家)

長澤は‘00年、東宝「シンデレラ」オーディションに応募して、当時史上最年少の12歳でグランプリに選ばれて芸能界デビュー。‘04年に映画『世界の中心で、愛をさけぶ』に主演。興行収入85億円の大ヒットを記録した。

‘11年には、映画『モテキ』でセクシーシーンを解禁して、清純派ヒロインから大人の女優へと脱皮。‘15年是枝裕和監督の映画『海街diary』、‘17年『散歩する侵略者』と話題作に出演して、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。しかし、ここまでのプロフィールは、女優・長澤まさみのプロローグに過ぎない。

「三十路となった‘18年、月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)でコメディエンヌとしての才能を開花させると、同じ年劇団☆新感線と宮藤官九郎がタッグを組む異色作『メタルマクベス』に出演。

ボンテージファッションに身を包み、歌って踊る。初演で長澤自身が尊敬する松たか子が演じたランダムスター夫人役に挑戦。『舞台は勉強の時間』と話している彼女にとって新たな可能性を探るきっかけとなる作品になりました」(ワイドショー関係者)

その一方で‘19年には、木村拓哉主演の映画『マスカレード・ホテル』でヒロイン役を演じて、興行収入46億円越えの大ヒットを飛ばす。さらに中国でロケを敢行した大作『キングダム』では、妖艶な山界の王・楊端和役を演じて二度目の日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。30歳を超え、長澤まさみの快進撃には目を見張るばかりだ。

そんな長澤が、デビュー20周年に選んだ映画が、実際に起きた少年による祖父母殺人事件に着想を得た異色作『MOTHER/マザー』である。

「この作品で長澤が演じたのが、金にルーズで怠け者。男を見る目もなく、だらしない。お金に困ると子供をダシにして親にお金をたかる。毒親と呼ぶべき強烈なキャラクター秋子です。長澤自身も『最後まで共感できなかった』と話すこの役どころ。

しかしその一方で『まるで自分の身近で起こっていることのように受け止められ、心に刺さりました。だからぜひ、秋子を演じてみたい』『人にどう思われるかということは考えなかった』『自分が興味を持ち出演を決めた』と出演への強い思いを口にしています」(制作会社プロデューサー)

この作品は、‘14年に埼玉県川口市で起きた17歳の少年による祖父母殺人事件を基にしているが、この事件の取り調べを行なっていたのが現在、テレビ番組でコメンテイターなどを務める元埼玉県警捜査一課の刑事・佐々木成三氏である。

「この事件が”犯罪を取り締まる”ことではなく、”犯罪を防ぐ”ことを世の中へ伝えるために、刑事をやめるきっかけのひとつになった」

と、佐々木氏は話している。そのくらい、この事件は凄惨で救いようがない。

「追い詰められた秋子が、息子・周平(奥平大兼)を祖父母の殺人に駆り立てていく様は、まさにポスターのコピー『すべてを狂わせる<この女>聖母(マリア)か。怪物か(モンスター)。』そのもの。その姿をドキュメンタリータッチに撮ってゆく大森立嗣監督の手腕にも高い評価が寄せられました」(前出・制作会社プロデューサー)

しかし救いようのない物語に奇跡のようなラストシーンが訪れる。1人で罪を被り、刑務所に入った周平に接見した夏帆演じる亜矢から、

「周平くん、あなたのことが好きだって。今も好きだって」

と伝えられ、秋子は放心状態のままかすかに微笑む。救いようもない物語の最後に用意されたこの微笑は母の愛なのか。ラストシーンで見せた長澤まさみの菩薩のような微笑が、今も記憶の彼方からなにかを訴えかけて来る。

「秋子のような社会からはみ出した女性を長澤のようなスターが演じるのは、CMなどの絡みもあり、簡単なことではありません。あのラストシーンには、女優・長澤まさみがこの映画にかける覚悟のようなものを感じました」(放送作家)

「ドラゴン桜」でも魅せてくれた長澤まさみ。”ラストシーン・シンデレラ”が、次はどんな最後を魅せてくれるのか。次回作にも期待したい。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO香川 貴弘

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