格闘王 前田日明が警鐘を鳴らす「南海トラフ地震は必ず来る!」
発生すれば3分以内に高さ30mの津波に襲われ、 50万人以上の死傷者が出る カリスマ格闘王が緊急提言! なぜ国は日本人を守ろうとしないのか
「俺は真剣に心配しています。『南海トラフ地震』は来るかどうかわからない、ではなくて、必ず来る。今、こうしている間に起こってもおかしくないんですよ」
愛用のパイプを燻(くゆ)らせながら、前田日明氏(62)は圧倒的な迫力でそう語った。

<現在、総合格闘技団体『リングス』CEOや格闘技大会「THE OUTSIDER」プロデューサーを務める〝格闘王〟は近年、「南海トラフ地震」に警鐘を鳴らしている。
前田氏は最新刊『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』でも、3分の1近いページ数を地震に関する内容に費やした。
なぜそこまでの危機意識を持っているのか。本誌はその真意を聞いた。>
日本政府の地震調査委員会は、’13年に南海トラフ地震は30年以内に70%の確率で起こるって言ったんですよ。あれから10年近くが経った。しかも、今年に入って地震が増えている。3月には宮城県で震度5を超える地震が起きた。4月からはトカラ列島で群発地震が発生した。地震の専門家である藤井聡氏(京都大学大学院教授)は、ここ5年が危ないと言う。
もし、南海トラフ地震が来れば、最悪の場合、静岡、伊勢、和歌山南部、高知、鹿児島東側、宮崎の南部は、3分ほどで高さ30m以上の津波に襲われる可能性があります。
数分でどうやって逃げろというのか?
マンションの上層階に避難できるか? できませんよ、オートロックですから。俺がもし防災政策に関わったら、巨大津波が観測された瞬間、マンションはエントランスを開放して、逃げ場の確保に協力することって法律を作ります。
内閣府の試算によれば、死者数は約32万人。負傷者と行方不明者も合わせたら、50万人以上になるでしょう。遺体はどうなりますか? あっという間に伝染病が広まります。津波を被って、道路や鉄道などの交通インフラも崩壊する。そうなると、救援物資も被災地に届きません。
さらに、首都直下地震や富士山噴火につながる恐れもある。直後に巨大台風が上陸するかもしれない。こんな国難が迫っているのに、なぜ国は放置しているのか。与党も野党も南海トラフ地震対策を本気で議論しているとは思えません。
前田氏の新著によれば、土木学会が提案する国土強靭化の対策案を実行すれば、死者は32万人から18万人にまで減らせるという。防災訓練などのリスクコミュニケーション対策も行えば8万人にまで抑えることも可能のようである。だが、そのためには土木学会の試算で毎年2兆円の公的支出が必要になるとのことだ。
日本には1000兆円の借金があると言われるが、それは国民が貸している国債がほとんど。なぜ日本人の資産と命を守るためにもっとカネを使わないのか。怒りを通りこして、もはや疑問しかない。
起こったら救援物資は、1ヵ月は届かないと思ったほうがいい。だから、飲料水や常用薬を1ヵ月分は備蓄しておいたほうがいいですね。あとは家族の安否確認の方法を決めておくこと。俺は今、11階に住んでいるので、30mのザイル2本を用意している。そこにとどまったら危険だという場合に、地上に降りるためだ。
俺に何ができるのか? 命を賭けるというとオーバーだけど、南海トラフ地震の話を言い続けるしかないと思っているよ。十分な対策無しでは復興する力さえ奪われてしまう。
<格闘王がここまで言うのだ。自分と家族を守る備えを怠ってはならない。>


『FRIDAY』2021年7月16日号より
PHTOTO:丸山剛史