ついに日本公開の”ヤバい映画”『ライトハウス』監督が語る秘話 | FRIDAYデジタル

ついに日本公開の”ヤバい映画”『ライトハウス』監督が語る秘話

『ウィッチ』で一躍注目浴びた新鋭・ロバート・エガース監督に単独インタビュー

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『ライトハウス』 7月9日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー © 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

2020年、コロナ禍の中にもかかわらずヒットを記録した映画がある。鬼才アリ・アスター監督による『ミッドサマー』だ。大学の卒論研究のため、スウェーデンの辺境の村を訪れた学生たちが恐ろしい目にあう様子を描いた本作は、コアな映画ファンのみならず、怖いもの見たさのライトファンにまで広がり、一大ブームと相成った。

その作品を配給したのが、アメリカの新興映画会社「A24」。2012年に設立されてまだ10年足らずだが、『ムーンライト』(’16年)や『ルーム』(’15年)、『ミナリ』(’20年)など、米アカデミー賞受賞作を多数輩出。一方で、『ヘレディタリー/継承』(’18年)や『ミッドサマー』、『レディ・バード』(‘17年)、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(’17年)といった斬新な傑作を次々と世に送り出してきた。

そして……アリ・アスターの盟友であり、A24の申し子であるロバート・エガース監督の新作『ライトハウス』が、ついに日本公開を迎える。2019年に制作された本作は、2020年の第92回アカデミー賞撮影賞にノミネートされたスリラー。19世紀末のニューイングランドの孤島を舞台に、ふたりの灯台守が閉鎖生活の中で壊れていくさまを全編モノクロのクラシックスタイルで描いていく。

『TENET テネット』(‘20年)のロバート・パティンソン、『スパイダーマン』『アクアマン』のウィレム・デフォーの狂気じみた怪演も大きな魅力だが、やはり特異なのは時代と逆行するかのような世界観。今回はエガース監督に単独インタビューを行い、海風にさらされながら行ったというあえてのロケ撮影のこだわりを聞いたほか、彼の作品に共通する「動物の怖さが異常」な部分について、質問をぶつけてみた。

映画ファンの中で話題になっている「ヤバい映画」の陰にあった、作り手の真面目すぎるこだわり。ぜひ楽しんでいただきたい。

〈あらすじ〉
1890年代、ニューイングランドの孤島。誰も住んでいないかの地にやってきた、ふたりの灯台守がいた。彼らはこれから4週間、灯台と島の管理を行うのだ。ふたりきりで過ごすことになった彼らは、嵐に巻き込まれて孤立してしまう。そして、夢とも現実ともつかぬ異様な体験をしてゆくのだった……。

© 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

――ロバート・エガース監督の作品が大好きなのですが、「動物が怖い」のが特徴的だと感じています。『ウィッチ』を観た際にウサギやヤギのイメージが変わりましたし、『ライトハウス』ではカモメがトラウマになりました……。

エガース:そう言っていただけてうれしいです、ありがとう。ストーリーを語る上で不気味に撮りたいと思っているので、そのように受け取っていただけたなら狙い通りです(笑)。

僕はいま「spooky(不気味な)」という言葉を使いましたが、英語の感覚だとシリアスさに欠けるというか、ちょっとおかしな感じ、というニュアンスも含まれるんです。自己卑下的な意味も込めてこの言葉を使っているのですが、たとえば動物の描写においては少しシリアスさを和らげるところがあるかもしれません。

――ちょっとファンタジックな意味合いがつくというか……。

エガース:ただ、全体的には緊張感をずっと追いかけています。雰囲気やテンションなど……。そうした中で、ちょっと埋め合わせ的にシリアスさを取る、という風に動物の描写を用いている部分はありますね。

© 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

――緊張感でいうと、『ライトハウス』では相当過酷な環境下で撮影されたと聞いています。32日間に及ぶ撮影では、キャスト・スタッフは波しぶきと強風にさらされ続けたとか……。エガース監督の作品は「自然」が一つのテーマであり、ロケ撮影も必須かと思いますが、そうした状況も、緊張感を生み出すには必要なのでしょうか。

エガース:もちろんサウンドステージ(映画等を制作するための防音完備のスタジオ)に反対というわけではなく、スタジオで作った大作で良いものもたくさんあります。たとえスタジオ内で撮っても、まるで実際にその場所で撮ったような感情や臨場感を醸し出せる映画はありますしね。

ただ、ある特定の感覚においては、やはり実際にその場所に行かないと生まれてこなかったり、実際の環境下で撮らないとその雰囲気を作れなかったりすることも多いですよね。

たとえば、ヴェルナー・ヘルツォーク監督(※『アギーレ/神の怒り』や『フィツカラルド』など、過酷なロケ撮影で知られる)の作品は年代もバラバラだし、綺麗な画面ではないこともある。映画監督としての僕が求めている画とは違うのですが、成功している部分においては、魔法のように素晴らしい映像が映し出されている。そういった意味で、本当にそういった環境で撮る必要性というのは、確かにあると思います。

© 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

ただ、先ほどもお伝えしたように僕はサウンドステージが嫌いなわけではなくて、メリットも多く感じています。なんといっても、自然とか環境に左右されないから、コントロールがしやすいんですよ。だから機会があればサウンドステージで撮影したいと思いますし、作品によっては劇中と同じ環境で撮ることが必要だとも思います。両方を選択できたらいいですよね。

――なるほど。スケジュールも含めた運営のしやすさや、アクシデントが発生しにくいという点では、おっしゃる通りサウンドステージは魅力的ですね。

エガース:バジェットの大きな大作をやっていてフラストレーションがたまるのは、動けないところなんですよね。昔はできたかと思うのですが、いまはあまりにも人員含めた規模が大きくなりすぎて、実際にその場に行くことができないことも多い。その場合は、セットを作ったりして観客を騙さなければならなくなります。その点、ヘルツォーク監督の作品は海外でもどこでも行って撮影しているので、そうしたフレキシブルさは良いなぁ、と常々思っています。

たくさん話してしまってごめんなさい。僕がテンションが上がって話す内容って、自分の作品ではなくて他の方のことばっかりなんです(笑)。

© 2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

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『ライトハウス』は、多くの映画ファンがいまかいまかと公開を待ち望んでいた作品。ようやく劇場で観られることに、感慨もひとしおだ。インタビューの最後にそのことを伝えると、エガース監督は「それだけ待っていただいた価値がある作品と思ってもらえたら、嬉しいですね。できることなら、日本の公開日に合わせて日本に行きたかったです」と語った。

その言葉を受けてかは定かではないが、7月7日に行われた本作の先行上映会では、オンラインではあるがエガース監督が登壇し、トークを行った。彼の日本の観客への想いが垣間見える。思えば、エガース監督の盟友であるアリ・アスター監督(『ミッドサマー』)の来日が、実質的にコロナ禍前ほぼ最後の来日PRとなった。1年半もの間、海外の映画監督とファンの交流は途絶えているわけだ。

世界的なパンデミックが落ち着いたとき、新作を引っ提げてエガース監督が日本を訪れ、国内の映画ファンと“再会”する――。そんな日が待ち遠しい。


『ライトハウス』
7月9日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
【監督】ロバート・エガース『ウィッチ』
【脚本】ロバート・エガース/マックス・エガース
【撮影】ジュリアン・ブラシュケ『ウィッチ』
【製作】A24
【出演】ウィレム・デフォー『永遠の門 ゴッホの見た未来』/ロバート・パティンソン『テネット』

2019年/アメリカ/英語/スタンダード/モノクロ/109分/5.1ch/日本語字幕:松浦美奈/R15+
原題:THE LIGHTHOUSE/配給・宣伝:トランスフォーマー

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

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