クセになる!? ウソ漫談家「街裏ぴんく」唯一無二の存在感のワケ | FRIDAYデジタル

クセになる!? ウソ漫談家「街裏ぴんく」唯一無二の存在感のワケ

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元ジャリズムの山下とのユニットコンビで「M-1」参加

お笑いのアンダーグラウンドにおいて、唯一無二の存在感を放つウソ漫談家の街裏ぴんく。高校時代の同級生に誘われる形で2004年から大阪で芸人をはじめ、約3年後にコンビを解散してピンに。2012年に上京した。 

その後は事務所オーディションに落ち続けたが、2014年に現事務所に腰を据えて本格的に芸人活動をはじめた。コロナ前からライブ出演を控えていたが、今年に入ってから再びライブ活動をスタート。 

春には、同じくピン芸人の中山功太とユニットライブを大阪で開き、先月は元ジャリズムの山下とのユニットコンビ「山下ぴんく」を組み、漫才師としての活動もはじめ、今年の「M-1グランプリ」への参加表明もした。 

ここに来て、ものすごいスピードで芸人人生をまい進している彼の根底には、芸人であることへの葛藤・使命感・希望などのさまざまな想いが複雑に絡まっていた。 

(撮影:川戸健治)
(撮影:川戸健治)

ピン芸人は魅力の塊

「芸人になりたての頃はコンビを組んでいましたが、これが、まぁ合わなくて(笑)」 

インタビュー早々、あっけらかんと笑いながら、過去を振り返った街裏ぴんく。彼にとってピン芸人は天職以外の何ものでもないと語る。 

「ネタを考えて相方に意見を聞いていくうちに、テコ入れされるのが段々ストレスになっていったんです。そのうち、作ったネタをそのままライブでやりたいと思うようになっていき、『ピンになりたいから解散してほしい』と僕から切り出しました。実際に、ピンでネタを披露してみたらウケたんです。ネタを作りやすいし、誰のフィルターも通さずに発表できる。こんな天職はないです」

「ピン芸人は、ストレスなしで自由度高くやれる分、そうとう努力しないと売れないだろうと自分なりに納得しています」
「ピン芸人は、ストレスなしで自由度高くやれる分、そうとう努力しないと売れないだろうと自分なりに納得しています」

コロナとR-1参加資格失効とBe-1参加

「コロナになる前は、月に25本くらいのライブに出て、R-1に出るという1年を繰り返していましたが、2020年のR-1が終わった時に、このサイクルを変えようと決めました。というのも、日々ライブに出ていると、それだけで満足してしまうんです。正直、R-1で優勝する自信もそこまでなくて、心のどこかで将来に対する不安もあって……。基盤を固めるために、事務所ライブと単独ライブの独演会だけに絞りました。ライブに出る回数が減れば、お客さんが独演会に流れるだろうという考えもありましたね」 

その矢先のコロナ禍は地獄だったそう。 

「週一でYouTubeライブを配信していましたが、それ以外は何もしていませんでした。毎週、ライブのために新ネタを作っていたので、そこである程度は発散できていたのかもしれません。でも、お客さんの前じゃないから、いいサイクルが生まれなくて、いいネタもできなかったんです。ライブに出て人前でやることの大切さを実感しましたね」

R-1のルール変更で出場資格がなくなったことを聞いた時は、意外と落ち着いていたと話す。

「R-1の発表がされる1ヵ月前くらいからライブに出ようと思っていましたが、それだけでは決勝や優勝は厳しいだろうと思っていました。なので、11年目以上は参加できなくなったと知った時は、割と冷静でしたね。そして、やっぱり独演会に力を入れるべきなんだな、と。でも、コロナだから独演会を頻繁にはできないし、今までやってなかったことにも手を付けていかなアカンと何となく考えていました」 

「参加できなくなったことは単純に悲しかったですね。11年目以上の技術力とかよりも、とんでもない発想力やセンスを身に着けた大天才が現れることに賭けたんやなと思いました」
「参加できなくなったことは単純に悲しかったですね。11年目以上の技術力とかよりも、とんでもない発想力やセンスを身に着けた大天才が現れることに賭けたんやなと思いました」

R-1に参加できなくなった直後にはじまったのが、双子漫才コンビ「うすくら屋」のシュースケが主催するBe-1グランプリ。これは、芸歴11年目以上のピン芸人のための賞レースだ。

「主催のシュースケさんから直接声をかけてもらいました。この辺りからライブに出たくて仕方なくなってきてたんで、『賞レースだから』と理由をつけて参加しました。久しぶりのライブで、ほとんどの芸人が小手調べ的なつもりだったと思います。実際に、僕はそうでした。賞レースとはいえ、ライブの延長線上にあるやつだろうなと勝手に思い込んでいたんです。 

でも、実際に出てみたら、感染対策も演者への気配りも完璧な、立派な賞レースでした。お客さんの笑い声には、僕たちを応援する気持ちが乗っていた気もしました。舞台袖や楽屋では、お互いのネタを『良かったよー!』と褒めあったりして、芸人の温かさも感じましたね。予選が進むごとにみんなの熱がどんどん上がっていって、Be-1の決勝終わりに『来年も出てください』と言われて、その場で『絶対出ます』と即答してました」

漫談家以外の柱として漫才師に

Be-1出場でライブの良さを再確認した後、気持ちを抑えきれずに、この春からライブ出演を解禁。Aマッソ主催のライブ、虹の黄昏などの単独にも参加した。

「喜び勇んでライブに出させていただきましたが、久しぶりに出てみたら体力が持たない、アドリブを出す余裕がないことに気づきました。1年ライブに出なかっただけで、こんなに違うものかと……。普段からライブに出ることは、ものすごく大切だったんだな、と。そして、僕が今やるべきことはライブだと確信しました」 

この他にも、Be-1の審査員を務めた中山功太とユニットライブを開催したりと、精力的に活動している。 

「功太さんのことは、大阪時代から尊敬していましたが、実際にご一緒できたのは上京後のライブでした。その後、功太さんのラジオに呼ばれてから一緒にライブをすることになって、今では東京・大阪で開催しています。2人のユニットライブは、今後も定期的にしていく予定ですし、他のライブにも呼ばれれば、どんどん出て行くつもりです」

「功太さんとのライブは、あの天才のしゃべりを横で聞ける『俺得ライブ』だと思っています」
「功太さんとのライブは、あの天才のしゃべりを横で聞ける『俺得ライブ』だと思っています」

また、最近では元ジャリズムの山下とコンビを組んで「山下ぴんく」としてM-1グランプリへも参加表明した。 

「1年ほど前に山下さんがTwitterをフォローしてくださったんです。僕はジャリズム世代ではないんですが、DVDとかでよく見ていた尊敬する先輩の一人だったので、とても嬉しかったですね。そしたら、今年の4月くらいにDMが来ました。『また芸人をやりたいのですが、ぜひ街裏さんと一緒に漫才をさせていただけませんか?』という内容で、漫才の台本も一緒に。 

そのころ、独演会のお客さんが以前より減ってきていました。それが、コロナのせいなのか、自分の力不足なのか、単純にお客さんが独演会に慣れてきたからなのか、理由がわらかなくなっていたんです。漫談以外の柱も作らなければと思っていた矢先のオファーでした。 

僕は、漫談の中でしか笑いをとる方法を知らなくて、漫才への興味がありました。それに、自分を客観視できないタイプなんで、厚かましい話ですが、きっと山下さんほどの人なら、自分では気づいていない、僕のいい所を引き出してくれるだろうという期待もありました」 

「漫才1年生なんで、慣れていないことが多くて大変ですが、ピンにはない学びや新発見もあって楽しいですね」
「漫才1年生なんで、慣れていないことが多くて大変ですが、ピンにはない学びや新発見もあって楽しいですね」

「『やらしてください』と返信して、実際にネタ合わせをしてみたら、案の定『ぴんくさんのココは面白いから残していいと思う』とか、自分では気づいていない良さをいろいろと教えてくださいました。 

そのうち、どちらからともなくM-1の日程の話をしていたので、お互いに賞レースで試してみる価値はあるなと思い始めたんでしょう。実際に、6月末に『山下ぴんく』として初舞台にも立ったんですが、初めてにしてはいい笑いをもらえたんじゃないかと思っています」 

好発進したユニットコンビだが、ひとつだけ気がかりなことがあるという。 

「山下さんは本当に優しい方で、よくご飯を食べに連れて行ってくださります。一度、居酒屋に行ったことがあるんですが、僕はお酒が飲めないんでコーラを頼んだんです。それ以降、僕の好物だと思われたようで、ネタ合わせの度にコーラを差し入れしてくださるんです。コーラは好きですが、飲みすぎると体的にあまりよくないかもしれないんで、控えていることをいまだに言い出せずにいるのが申し訳ないです……」 

昨年のM-1で、ピン芸人同士のユニットコンビ「おいでやすこが」の大活躍を受けて、今年の賞レースには、11年目以上の芸歴を持つ芸人たちがタッグを組んで、エントリーを表明している。

第7世代率いる新しい波に負けじと挑戦者として名乗りを上げる中堅芸人たち。予選前から混戦が予想される今年のM-1グランプリにおいて、「山下ぴんく」は台風の目になれるのか? 彼らの活躍に期待したい。

「街裏ぴんく」さんの最新の独演会情報はコチラ

 

  • 取材・文安倍川モチ子

    WEBを中心にフリーライターとして活動。現在は、「withnews(ウィズニュース)」「Business Jounal(ビジネスジャーナル)」などで執筆中。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

  • 撮影川戸健治

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