「キャッシュレス代行会社」への架空投資話で闇に消えた30億円 | FRIDAYデジタル

「キャッシュレス代行会社」への架空投資話で闇に消えた30億円

緊急座談会 警視庁が重大関心を寄せる詐欺事件 10年以上にわたる付き合いで信用させ、’20 年秋に一気に刈り取り IT系社長や若手実業家が狙われ、一人あたりの被害額は数千万円

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Iは会社を3つ経営しており、そのうち1社が投資金の振り込み先に

「普段の私ならこんな単純な詐欺話には絶対引っかからないですが、経営者仲間がけっこう、乗っていて……そういうバックグラウンドに騙(だま)されてしまった。被害者には詐欺師のIと20年近く付き合いがある人もいました。私はIと一緒に他の事業をやっていたので、その間柄でウソはないだろうと思い込んでいた」

30代にしてIT系企業を立ち上げたヤリ手実業家のAさんは終始、歯切れが悪かった。経営者や士業などエリート仲間のネットワークで持ちかけられた″特別で確実な投資話″に乗ったつもりが、一度も配当を得ることなく、4500万円もの大金が泡と消えたからだ。

Aさんが把握しているだけで被害者は30〜40人、被害額は実に30億円超。今回、同じ手口で騙されたAさんの知人のBさん(50代の建築会社社長)、不動産業を営む40代のCさんが集まり、事件の全貌(ぜんぼう)を語り尽くした。

 詐欺師のIは「クレジットカードの決済代行会社に投資して利息で儲けないか」と私たち経営者たちに持ち掛けて30億円もの大金を集め、’20年9月25日に突然、行方をくらませました。

 I自身も3つの会社を経営する実業家でした。

 この投資話に名前を使われたのが「株式会社ジェイブリッツ」という実在する会社です。もちろん、詐欺とはまったく関係ありません。

 皆さん、同じ手口で騙されました。

 Aさんが言っていた「20年近くIと付き合いのある経営者」が私です。今回の投資話はBさん経由で聞きました。Bさんとも6〜7年前からの付き合いです。

 私の経営者仲間が彼に4500万円ほど投資していて、配当も出ていたので僕は信用してしまいました。

 私がIと出会ったのは3年ほど前。共通の友人の結婚式でたまたま隣の席だったんです。私の会社はインターネット通販をしていてIの会社がプロデュースしたアルコール消毒の製品を取り扱っていました。しっかりした商品だったので、それもIを信頼する要因になりました。

たとえば客が飲食店でクレジットカード決済した代金は通常、月末など決められた日に振り込まれる。ところが決済代行会社(今回のケースでは「ジェイブリッツ」)を利用すると、代金は翌日に振り込まれる。決済代行手数料として店側は10〜15%取られるが、取りっぱぐれがなく、運転資金を確保できるというメリットがあるのだ。キャッシュレス化が加速する日本において「有望なビジネスに見えた」と三者は口を揃える。

 決済代行業者が多額のキャッシュを必要とするのも理解できた。「ジェイブリッツ」は全国展開していますしね。(3~4枚目のLINEの画面を見せながら)Iの手口はこうです。期間を設定して投資を呼びかけます。「2000」とか「3000」は募集額。期間によって利息は変動するのですが、だいたい2〜5%。手数料が10〜15%であることを考えれば妥当かなと納得していました。

 人によっても利息は変えていたみたいです。僕は1週間〜10日間の投資で7〜8%の利息を支払うと言われました。

 実は私、最後の投資被害者だったようで一度もリターン(利息)がないまま飛ばれました。昨年9月半ばから約4500万円もIに預けたのに……。

 私は昨年7月から約1500万〜2000万円ほど突っ込みましたが、何度か利息は貰えました。

 僕も利息は貰えましたが、昨年の7月から総額2億円ほど投資したので、痛手は大きかった……。僕が6000万円ほど出して、あとは経営者仲間に「稼げるらしいからやってみないか?」と声をかけて、3人から集めました。仲間の投資額は私が元本保証するしかなく……。

10年以上も時間をかけて経営者人脈と信頼関係を築いたIだったが、詐欺はスピーディだった。キャッシュレス化の波に乗ったストーリーを考え、昨夏からカネを集めると同年秋に忽然(こつぜん)と姿を消したのだ。

 昨年9月20日に振り込まれる予定の利息が入ってなかったので、23日に「大丈夫?」と電話したら、「払えない」という趣旨のことをモゴモゴ言いだした。

 23日はまだIからガンガン電話が来ていました。「追加で入金できないか?」「投資を考えている友達がいるなら私が会いに行って説明するから」と必死だった。最後のひと集めがしたかったのか、失踪した25日にも私は投資を持ち掛けられていました。

 別の被害者が、Iに渡したカネが一銭も「ジェイブリッツ」に投資されていないことを突き止めて、はじめて私たちは詐欺に遭ったとわかりました。

 私の会社は港区にあるので、すぐに麻布警察署に行きました。すでに複数の被害者が相談していたようでIの名前を出すと、「ぜひ話を聞かせてください」と捜査員が前のめりになりました。弁護士にも相談して告訴の準備を進めています。

 僕はまずIをとっつかまえて、元本だけでも取り返そうとしたのですが、会社はもぬけの殻(から)でした。

 Iは板橋に新築2階建ての自宅を構えていたので「持ち家ならいくらか財産になるだろう」と期待して行ってみたら、なんと借家でした。2階建ての賃貸なんて……最初から逃げるつもりだったんでしょうね。自転車が置きっ放しでした。

 恨み辛みしかないです。長年一緒に仕事をしてきただけにガッカリです。

 そもそも「ジェイブリッツ」は翌日決済をやっていなかったんです。ちょっと調べればわかることをなぜ……本当にお恥ずかしい限りです。自己破産も考えましたが、被害者仲間や税理士、弁護士さんに相談していくうちに「損失は自分のビジネスで取り返そう」と前向きになれた。Iを見つけ、刑務所にぶち込むことをライフワークにする所存です。

聡明なエリートたちがことごとく騙されたのは、その目を曇らせるほど詐欺師が巧妙だったからか、あるいはカネの魅力が眩(まばゆ)いからか――。

妻、一人娘とIが暮らしていた一戸建て。自転車が放置されていた
被害者とIとのやりとり。新規勧誘のほか、何%で何円投資しているかのリストも日報として送られていた
Iは経営者仲間に「ジェイブリッツ社内でも、社長と営業担当しか知らない特別な案件」だと嘯いていた

『FRIDAY』2021年7月23日号より

  • 取材・文葉月雪子

    ノンフィクションライター

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