5つの性犯罪被告が証言拒否…「二次被害」言い分は正当か否か | FRIDAYデジタル

5つの性犯罪被告が証言拒否…「二次被害」言い分は正当か否か

「事実を広く知らしめることによる被害者への負担」と「事実を伏せられる無理解」はどちらが重いのか

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

複数の女児に性的暴行を加え、その様子を撮影していた男の公判が現在、横浜地裁(渡邊史郎裁判長)で続いているが、被告人質問で検察官と被害者代理人の質問に「この場では答えたくありません」と繰り返す場面がみられた。その理由は「二次被害」だという。

横浜地方裁判所(写真:共同通信)

近藤善広被告(逮捕時33)が問われているのは強制性交等や児童買春・児童ポルノ法違反、強制わいせつ、東京都育成条例違反などの罪で、6人もの児童が被害にあったとされる。毎回、公園でターゲットを物色する……というような同一の手口で犯行に及ぶのではなく、各事件ごとに、やり方は違っていた。

起訴状によれば近藤被告は、

事件1:2019年2月、SNSで知り合った宮城県の小学6年女児に性的暴行を加えた
事件2:18年4月、自身の勤務先所有のモデルルームにおいて小学4年女児にわいせつ行為を働いた
事件3:19年6月・20年3月、4歳と8歳の姉妹にそれぞれわいせつ行為を働いた
事件4:17年9月〜12月、千葉市内の公園において当時4歳〜5歳だった女児に対して性的暴行を加えた
事件5:19年5月、13歳の女子と性交した

として、強制性交等や児童買春・児童ポルノ法違反、強制わいせつ、東京都育成条例違反などで起訴されている。また犯行時はその様子を撮影し、動画像を販売していた。

モデルルームにおける事件2では、公園で少年に小遣いを渡し、「アイドルになれる」と女児に声をかけるように指示。その少年のスカウトに応じた女児が被害にあった。

事件3では、マッチングアプリで知り合ったシングルマザーに近づき、その女性が留守の隙を見て、幼い娘たちへの犯行に及んでいた。

事件4では、公園で遊んでいたきょうだいに声をかけ、巧みに女児ひとりだけを連れ出していた。

6月29日に行われた被告人質問。近藤被告は全ての起訴事実を認めている。弁護人からの質問には「被害者に申し訳ないことをした。犯罪で稼ごうと思っていた自分はとんでもない人間だったと後悔しています」と、反省を口にしたが、対する検察官、そして被害者代理人(被害者参加弁護人)からの質問に対しては、たびたび証言を拒んだ。

「答えたくありません」
「調書で答えていると思います」

近藤被告がこのように証言を拒むのは決まって、事件の詳細を問われたときだった。

検察官「当時の交際相手の娘さんたちに、なぜわいせつな行為を?」

被告「調書の通りです」

検察官「娘さんたちの母親と交際するつもりはあったんですか?それとも最初から娘さんたちを狙っていたんですか?」

被告「調書の通りです」

検察官の質問だけでなく、それぞれの被害者の代理人からの質問にも同様に「答えたくありません」と繰り返す。検察官や被害者代理人が座る後ろには衝立が置かれ、姿は見えないが、奥には被害者参加人が座っている。

検察官が「できれば答えてほしい」と告げると、被告は証言を拒む理由を次のように語った。

「法廷にいる人がほかで話すことにより、具体的に(被害を)想起させる……私としては、二次被害になるので……」

自身の犯行を広く世間に知られることが、被害者にとって更なる被害を与えるという言い分だ。これを受け、裁判長が途中で被告に告げた。

「公の場で話すことが憚られる、それはよくわかります。もちろん、あなたには黙秘権がある。そういう態度を取ることがあなたにとって不利にはならない。しかし、被害者や代理人が、あなたの声を聞ける場は、ここしかありません。被害者からすれば、あなたが何を考えていたのか、直接知りたい、聞きたい、という気持ちがあるかもしれません」

被告はこれを聞き「なるべく話さないように、と焦点を当てすぎていたと思います」と裁判長の意見に耳を傾ける姿勢を見せたが、実際のところ、法廷での被告の証言を聞くこと、それを広く知られることは、近藤被告が懸念するように被害者に多大な負担をもたらすのか。

性犯罪被害者支援を主に行う、らめーん弁護士はその実態を次のように解説する。

「被害者参加していれば、その代理人である弁護士は、法廷に提出される証拠は閲覧することができますので、第一回公判までには被告人の主張はある程度把握しています。その上でなお、被告人質問をするというのは、被告人から直接聞きたいと、被害者参加人が望んだからなのです。被害者参加人は覚悟を持って臨んでいます」

被害者が亡くなっている場合、残された家族は、報道や事件記録などでしか情報を得ることができない。また生きていても、今回のケースのように被害者が幼い児童であれば、本人から話を聞くことが難しいこともある。何があったかを聞けるのは、被告人しかいない。

「被害者参加人はダメージを受けてでも聞きたいことがある。黙秘権の行使を妨げる気はありませんが、誠実であろうという理由で黙るのならば、答えてほしいです」(同)

近藤被告が語っていた「事件内容を広く知られることによる二次被害」も、らめーん弁護士は“伏せられることによる無理解”を懸念する。

「過去の記憶を呼び起こされて具合が悪くなる方がいらっしゃるのも事実です。しかし、性犯罪の内容は、多くの人がぼんやりと想像しているところよりも、実際の被害がはるかに悲惨なので、報道していただいて、悲惨さを広めないと無理解が広がると思っています」

性被害の記事は、ニュースサイトによっては「性的興奮をもたらすためのポルノコンテンツ」と判断されてしまう場合もある。だが、これを避けるために抽象的な表現を用いれば、かえって無理解を広げることにもなりかねない。

近藤被告に対しては次回公判で論告弁論が行われる見込みだ。彼が証言を拒否した事柄についても、論告では触れられることになるだろう。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

Photo Gallery1

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事