ジャパン合宿での異質なトレーニング「ワークショップ」の効果

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2018年6月の代表戦。来年は日本中がこうした熱狂に包まれることだろう

今年9月24日から和歌山で行われたラグビー日本代表候補合宿のスケジュール表に、珍しい項目があった。

ワークショップ。

主にビジネスシーンなどで活用されるセミナーの形式で、ある議題について学びあったり、問題解決の方法を話し合ったりするのが主目的とされる。27日に解散したキャンプでは、このワークショップは25日の午前、午後、26日の午後に非公開で実施された。合宿の根幹ともいえる扱いだ。

ラグビーの合宿といえば身体を鍛えたり、ボールを動かしたりするイメージが強いだろうが、選手間での意思統一も重要視されている。

特にいまの日本代表では、主力選手数名が2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げている一方、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチらコーチングスタッフにはワールドカップでの指導経験がない。2019年9月の日本大会開幕に備え、プレーヤーサイドの知見が求められるのは自然な流れだ。2大会連続でのキャプテン就任を目指すフランカーのリーチ・マイケルも、以前から次のように話していた。

「(代表のキャンプでは)前回ワールドカップを経験したメンバーが一生懸命やっています。ワールドカップに勝つために、よく準備しています。ジェイミーはゲームプラン、練習プランを立てて、その内容、精度、スタンダードを高めるのは選手の役割。選手がすごく大事なんです」

複数名の談話によると、今回のワークショップでは今年6月にあった代表戦の振り返り、9月から本番までのフィットネス強化計画の共有、日本代表の目標の再確認などがなされたようだ。

フランカーのピーター・ラピース・ラブスカフニは、ワークショップについてこう語った。
「選手が首脳陣から何を要求されているかをはっきりと伝えてもらいました。目標に向けてすべきことを明確にするのが、ミーティングの目的でした」
また、代表に定着したスクラムハーフの流大は、キャンプ中に「また明日、(話し合った内容を)詰め直していきたいです」と語っていた。ひとつの議題に関して複数回話し合い、とことんまで意識の共有が図られたことがうかがえる。

今回のワークショップでのテーマで、一番注目されそうなのはフィットネスへの意識だ。

イングランド大会時のチームは猛練習による体力強化で勝負に挑んだが、いまは兄弟クラブにあたるサンウルブズでの国際経験を優先。南半球主体のスーパーラグビーでタフなゲームを重ねる傍ら、かつての看板だった持久力の強化は個人に委ねていた。

ただ、自分たちより身体の大きいライバルを倒すには機動力で上回りたい。チームはこの秋、走行距離などを測るGPSのシステムを見直し、これからは心拍数が高い状態でどれだけ走れるか、所定の秒速でのランニングが何度できるかなどをチェックすると、皆で共有した。今回の和歌山キャンプの全体練習では、一切ボールを使わず走り込んできた。フランカーの布巻峻介は、筋力アップの必要性などを含める形でこう言う。

「まだまだフィジカル的なものにチャレンジできる時期だと思う。チームとしてもそこを強化しなくてはいけないと認識しました」

さらに今後の検討課題となりそうなのは「グラウンド外からのプレッシャー」か。来年に向け加熱するであろうマスコミへの対応についても話題となったようだ。

体格のよいジョセフヘッドコーチは大らかそうにも映るが、日々グラウンドに訪れる記者と選手とのやりとり、各種媒体に掲載される記事などにはかなり敏感だとされる。

イングランド大会に出場した左プロップの稲垣啓太は、メディアとの向き合い方についてフラットな立場で証言した。

「メディアとの受け答えって、慣れていない選手は慣れていないんです。緊張して変なことを口走ってしまうことも、ないとは言い切れない。今度、集まった時にそういったことについての指導も入ってくると思います。自国開催で注目度が高まるなかで批判の声が出るかもしれないけど、それは自分たちでコントロールのできないこと。そこでフラストレーションをためないように、という話は、和歌山合宿でもしました」

8月にナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィの暴行容疑が報じられ、9月には右プロップの浅原拓真が酔って寝ていたところを車に引かれるという事故が起きた。相次ぐトラブルの発生で代表選手の立ち位置が問われつつあるなか、リーチは気を引き締める。

「前々から言っていたことですけど、改めて代表選手としての自覚を持って行動するようにしたい。注目度も上がっていますから」

先の候補合宿から選抜された日本代表は、追加招集を含めて計36名。10月14日に宮崎へ集まり、強化合宿に励んでいる。この先は10月26日に大阪・東大阪市花園ラグビー場で世界選抜と国際試合をおこない、11月3日は東京・味の素スタジアムで世界ランク1位のニュージーランド代表に、続く現地時間17日にはロンドン・トゥイッケナムスタジアムでエディー・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ率いるイングランド代表に挑む。同24日はグロスター・キングスホルムスタジアムで、日本大会初戦の相手となるロシア代表とも対戦。来年の大本番に向け、研鑽を積む。

前出の稲垣は、個人的な考えとして、次のように語った。

「いくらいいプランニング、戦術、環境を与えてもらっても、ファンの人がどれだけ応援してくれても、スタッフの方が選手のために動いてくれても、結局、グラウンドで表現をするのは選手なんです。まずは結果を出すことにフォーカスする。そのためには、自分のために、自分がやるべきことをやるだけなんです。ファンのために、というのもすごく大事なのですが、もともとは自分が選んだ道として、自分のためにラグビーをしているわけです。自分が選んだ道で結果を残すことが、結果的にファン、スタッフのためになっていけば……と、勝手に思っています」

一層のハードワークは当然として、今回から重要視されたワークショップという密度の濃い対話。こうしたトレーニングを繰り返し、日本代表という集団が磨き上がる。

取材・文:向風見也(スポーツライター)  写真:アフロ

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