絶望的な「ワクチン停滞」で浮かぶ厚労vs総務vs経産省の闇 | FRIDAYデジタル

絶望的な「ワクチン停滞」で浮かぶ厚労vs総務vs経産省の闇

ワクチンが足りない! 一般人の接種は、もういつになるかわからない本当の理由

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政府のワクチン供給計画が暗礁に乗り上げている。「専門家」尾身茂会長が「普通はない」と言ったオリンピック開幕まであと1週間。「日本国民、五輪開催までに2回接種」という目標は時間切れ。いうまでもなく絶望的な計画だった。ワクチンが、圧倒的に「足りない」のだ。

菅義偉首相の「ワクチンは送った」発言に、自治体が猛反発。尾身会長が「普通はない」と言った五輪まであと1週間。首相には「専門家の助言」を的確に判断することが期待される 代表撮影/ロイター/アフロ
菅義偉首相の「ワクチンは送った」発言に、自治体が猛反発。尾身会長が「普通はない」と言った五輪まであと1週間。首相には「専門家の助言」を的確に判断することが期待される 代表撮影/ロイター/アフロ

菅首相は「緊急事態宣言発出」会見で

「自治体にワクチンを送った。ワクチンは自治体で滞留している」

と、言い切った。各地の自治体からは、当然、反発の声が上がっている。

河野太郎行政改革担当・ワクチン担当相は6日の会見でこう言っている。

「6月末までにモデルナ社から納入されるワクチンは4000万回分の予定だったが、実際には1370万回分しか輸入されなかった」

やけにハキハキと会見した河野太郎は「製薬会社が納入しないのだから仕方ない」と居直った。さらに、田村憲久厚労相はこうだ。

『ファイザー製ワクチンはすでに1億回分が輸入されていますが、およそ4000万回分が、医療機関などで滞留している可能性があります』

「悪いのは国ではなく医療機関だ」という。

このワクチン供給の責任者である大臣2人の発言から、ワクチンが「どこにいくつあるか」すら、把握できていないことが露呈した。そしてその責任は、誰もとろうとしていない。

会見で菅首相はこうも言った

「オリンピックには世界中の人々を一つにする力がある」

そう?だろうか?

すくなくとも「オリンピック中止を求める45万人署名」をした人々は、五輪開催を望んでいないだろう。この人たちを「反日」と言った政治家がいた。

行方不明の「ワクチン」はどこに?

モデルナ社製ワクチンは、契約数のうち約70%近くが未納だ。一方、ファイザー製ワクチンは納入数のうち40%が行方知れず。つまり、どこかで「滞留」している。政府は7月~8月まで1億4000万回分のワクチンを供給する手筈だったが、実際にはその52%、7370万回分のワクチンしか在庫できなかった。

つまり、ワクチンが手元に無いのに、自治体に接種申請の受付だけを急がせたことになる。自治体からは不満の声が上がっている。

「日給17万円で医師を確保、会場も抑えました。けれども肝心のワクチンが届かない。いったん受けた予約のキャンセルをするなど、もうありえない対応をしています。市民に申しわけない」(関西の自治体首長)

厚労省の官僚が言う。

「ワクチンがどこに、何箱あるのか、厚労省の誰も詳細は知らないんです。田村大臣、河野大臣ですら承知していないばかりか、管制塔である官邸の和泉洋人首相補佐官、厚労省大坪寛子審議官も把握していないはず」

ワクチンの供給は、厚労省ではなく首相官邸が「握っている」というのだ。

「1回目接種でさえモタモタしていたところに、菅首相の1日100万回接種がぶち上げられ、総務省が各自治体に『高齢者は7月末までに2回接種』を急がせた。

大規模接種センターが各地で開設され、職域接種が加わった。そうこうするうちに、高齢者の2回接種へとフェーズが移り、業務は3倍、さらに、64歳以下の接種が解禁され、ワクチンがないまま申請を受け続けた厚労省はついにパンクしてしまったのです」(厚労省官僚)

一方で、総務官僚が言う。

「5月には、武田大臣をはじめ総務省総出で1470自治体に接種前倒しを頼み込みました。それなのにワクチンがないんです。自治体からは、準備したのにワクチンが届かないと苦情が殺到している。厚労省からは、明確な返事はない。自治体に無理をさせた我々の立場がありません」

また、経産省官僚も頭を抱えている。

「経産省各課は各産業に対して職域接種の旗振りを担い、ワクチン申請を働きかけたが、土壇場になってワクチンがないと言い出した。

各企業からは、接種会場、医師、看護師、関連企業従業員などを調整して準備万端なのに、いまになって中止などできないと苦情が絶えません」

職域接種、1万人規模のワクチン接種実施のために、ホテルの宴会場を20日間貸し切りとし、医師、看護師をのべ300人用意。費用は3000万円かかった企業もある。

これ以外にも、各役所が管轄する金融や農業系などにワクチン接種が働きかけられた。結局、実際に打てたの一部大企業のみ。

自治体を急かした総務省とともに、経産省も「顔をつぶされた」恰好だ。取りまとめ役と思われた厚労省にも、ワクチン在庫の正確な情報はないのだ。

自治体は「2回目接種のワクチンが届かない」と悲鳴を上げるが、政府は「送っている、在庫しているはずだ」と言い張る。コロナ禍に強めるべき国と地方の連携、信頼関係がまったくない。

世界中がパンデミックに見舞われ、それでもなんとか急ぎ作ったワクチンなのだから、製造が間に合わなくなることだってあろう。総理大臣がワクチンの買い付けに走り、1日100万回の目標を掲げたのは評価されるべきだ。その上で、予定したワクチンが遅れた、もう少し待ってくれ、となぜ言えないのか。この国は、堪えてくれと言えば、じっと我慢する国民性なのだ。これまでもずっと、そうだったではないか。

  • 取材・文岩城周太郎写真代表撮影/ロイター/アフロ

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