世界王者・井上尚弥 ボクシングの常識を変えた家族の力

トレーナーの父親はボクシングの素人

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’14年5月、座間市にある尚弥の実家にて。左から、父・真吾、母・美穂、尚弥、長女・晴香、次男・拓真

「尚弥の強さは、歴代の日本人選手の中でも圧倒的ナンバーワン。勘の良さ、パンチ力、フットワーク、ディフェンス、どれを取っても欠点がない。まともにパンチを喰らっているところも見たことがなく、まさに常識破りの選手です」(元WBA世界ミドル級王者・竹原慎二氏)

10月7日、WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(25)が、”世界最強”を決める大会『WBSS』初戦で劇的な勝利を収めた。彼が試合開始70秒でフアン・カルロス・パヤノ(34)をノックアウトした瞬間は、会場全体が息を呑んだ。

「(初戦の出来は)100点、完璧でした。相手を倒したワンツーの右ストレートは、ずっと練習してきたパンチ。見切ったというより身体が先に反応した。目標は『WBSS』優勝。内容にもこだわりたい」

試合後、傷一つない顔でそう淡々と語った尚弥。いったいなぜこんなにも強いのか。その常識破りの強さの裏にあるキーワードは、「家族」だ。

尚弥の一番の支援者は、父であり専属トレーナーでもある真吾さん(47)。

世界チャンピオン・尚弥のトレーナーとして名を馳せている真吾さんだが、実はプロボクサーとしての経験はない。彼はいわば、”素人トレーナー”なのだ。

「『プロボクサーにはプロのトレーナーが付く』というのが、ボクシング界の鉄則。そんな中、真吾はほぼ独力で尚弥を世界一の座に押し上げた、ボクシング界でも稀有な存在です」(スポーツ紙記者)

“素人”だからこそ、ヘタなことは教えられない。そんな責任感からか、彼の指導法は細部までこだわり抜かれていた。

「真吾さんは、衛星中継で放送されたボクシングの世界戦を観て、技を覚えました。無駄のないフックや目にも止まらない速さのストレートを始め、約300もの技を研究。さらに、その一つ一つをまず自分で試したうえで、有効な技だけを尚弥さんにコーチしていたのです」(スポーツジャーナリスト・吉井妙子氏)

有効な技を見極める父のスタイルは、尚弥の試合運びにも影響を与えている。

「開始70秒でのKO勝ちは、尚弥さんの頭脳プレーの賜物。本人は『基礎練習を繰り返しているだけ』だと言いますが、その中に、『どこでどの技を出せば相手へのダメージが大きいか』という分析があったからこそ、今回の短時間での勝利に繋がったのでしょう」(前出・吉井氏)

尚弥の強さを支えているのは父だけではない。母・美穂さん(47)もまた、常識破りの尚弥の活躍に一役買っている。

「美穂は15歳で真吾と出会い、19歳で結婚。家族は反対しましたが、彼女は押し切りました。その意志の強さは、尚弥の気迫がこもったプレースタイルに受け継がれています」(前出・スポーツ紙記者)

美穂さんの気丈さを表す逸話はほかにもある。尚弥のプロデビューに伴い真吾さんが専属トレーナーの座を降りようとしたとき、彼女が「あなたでないとダメ」だと言い、踏みとどまらせたという。

努力家の父と情熱的な母のもと、世界が驚く圧倒的勝利を収めた尚弥。今後、彼はどこまで強くなっていくのか。

「尚弥は世界で認められているボクサーです。本場アメリカでは、とにかく強い選手が客を呼べる。その点、彼はテクニックもあり、打ち合いもでき、何より規格外に強いので、人気も出るはず。背が低いというハンデはありますが、実力でそれを克服し、パッキャオ(39・フィリピン人として初めて世界ボクシング主要4団体6階級を制覇)のように偉大なボクサーになれるでしょう」(前出・竹原氏)

世界王者・井上尚弥は、ヴィクトリーロードを歩き始めたばかりだ――。

10月7日、『WBSS』初戦にて。試合開始から70秒で相手をノックアウト
試合翌日の会見では、1歳の息子・明波君の話題で父と頬を緩める場面も
本誌未掲載カット
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PHOTO:浦川一憲(1枚目) 結束武郎(3枚目)

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