要注意!日本で「危険なチャイルドシート」が販売された背景 | FRIDAYデジタル

要注意!日本で「危険なチャイルドシート」が販売された背景

英国王室御用達ブランドが「注意喚起文書」を公開していた!

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2019年、ドイツで発生した事故。木に衝突して後部座席にいた3人の子供は負傷。チャイルドシートは投げ出された。原稿の中身と直接関係ないが、国際基準に満たないチャイルドシートや金具をつければ、命の危険にさらされる(写真:DPA/共同通信イメージズ)

6月の半ば、車の後部座席などに装着するチャイルドシートの世界的ブランド「ブリタックス レーマー(Britax Ramer)」の公式サイト上に、重要な注意喚起の文言が掲載されていた。

「ブリタックス レーマー」は英国王室御用達のチャイルド・シートブランドで、メルセデス・ベンツやアウディ、VWやボルボ、トヨタ、マツダなどの超一流自動車メーカーも純正採用するトップブランドだ。

6月15日、ブリタックス・レーマーが公式サイトで公開した注意喚起の文書

違法金具で装着されたシートの拘束力は「ガムテープ程度」

なぜ、このような注意喚起を行ったのか?

実は、ブリタックス レーマーのチャイルドシートを扱う販売店に対し、『ブリタックス レーマーの製品の中で、後付けISO  FIXに対応しているのはどれですか?』などの問い合わせが増えてきているのだ。

実際、Amazon、Yahoo、楽天、auPAYマーケット…といった国内の大手通販サイトで探してみると、出て来る出て来る! 価格は3000円~5000円前後が中心で、形状や取り付け方法なども正規ISO FIXとほぼ同じ。2020年夏頃から様々な業者が「後付けISO FIX」を販売していたことが判明した。

そもそも、後付けISO FIXとは何をするための金具なのか?なぜ、大手通販サイトで販売され、多くの人が購入しているのか?

◆正しいISO FIX金具

◆後付けのISO FIXの金具(座席から見た場合)

(装着されたものを座席後部から見た場合)

 

チャイルドシートの固定方法には「シートベルト」と「ISO FIX」の2種類がある。かつてはシートベルトを使って装着するタイプのものだけであったが、10年ほど前からISO FIX固定のチャイルドシートが少しずつ普及するようになった。シートベルトを使わず、金具をガチャッとはめ込むだけなので、誰でも簡単に、かつ確実に装着できて、安全性も高い。

クルマ側の対応も進んでおり、2012年7月1日以降は一部のスポーツカーやトラックなどを除くすべてのクルマにISO FIX金具の装備が義務付けられるようになった。

「ISO FIX」の金具は本来、自動車メーカーが自動車を製造する段階で取り付ける部品。「後付けISO FIX金具」とは、ISO FIX金具がついていない座席でISO FIXチャイルドシートを使うための器具で、国際ルールを無視している。

この「後付け金具」を使ってチャイルドシートを取り付けた場合、見た目はそれらしく取り付けられているように見える。しかし、「後付けISO FIX金具」は、「ブリタックスレーマー」がサイト上で指摘した「強度担保」は「シートベルトのかわりに、ガムテープを使って固定するようなもの。事故の衝撃に耐える強度も拘束力もない」(あるチャイルドシートメーカー技術者)

ひとたび事故が発生し、車が大きな衝撃を受けた場合、金具が耐え切れず、チャイルドシートごと子供が車外に放出されて、地面に頭を打ち付けられるなどして死傷する危険性もあるのだ。

現在、上記の大手運営サイト4社では、後付けISO FIXはすべて削除されたが、こうしたISO-FIX金具が世に出回った実態について、チャイルドシートの安全基準を管理する国土交通省自動車局に取材すると「初めて聞く話です。こちらでも調査を行い、販売サイトに指導をします」とのことだった。

国交省では近日中に、国交省が運営する「チャイルドシートコーナー」にて注意喚起を行う予定である。

後付けISO FIXについて調べているうちに、国交省の指導により一掃されたはずの「危険なチャイルドシート」も一部のサイトで販売されていたことが分かった。

現在、日本が採用しているチャイルドシートの安全基準は国連協定規則に則り、非常に厳しく多岐にわたる安全基準を満たしたチャイルドシートだけが認証を得ることができる。その認証を得たチャイルドシートには保安基準適合マーク(Eマーク)が表示される。

一方、Eマークが表示されていない、安全性確認が極めて乏しいチャイルドシートはどれも布製で、事故で衝撃を受けた際の耐久性や強度に大きな不安がある。シートのヒモ部分が切れて子どもが車外に放り出される危険性も十分にある。

車外に放り出された子どもの体は地面に叩きつけられたり、後続車などにひかれたりしたら、即死か、重傷を負う可能性が高い。それくらい危険なシートが全く野放し状態で販売されていたのである。

国交省が2017年にテストをした時の映像の一部。衝撃を受け止められず、子どもが車外に放り出されている

安全基準の知識に乏しい販売業者

実はこれらのチャイルドシートについては、国交省が実際に通販サイトで7製品を購入して安全性のテストを行い、その様子を啓発ビデオとして2017年6月に公開している。このテストの結果について、国交省自動車局は以下のように述べている。

「Eマークが表示されていないものを詳しく調査したところ、これらは極端に強度が低く、本体の大部分が布製で事故等による衝撃を吸収する機能はないものでした。ダミー人形に着用して衝突実験を行ったところ、固定金具は壊れ、ダミー人形は前方に放りだされていました。放出されなくても腹部などを強く圧迫して、重篤な傷害を及ぼすおそれがあります」(国土交通省自動車局審査・リコール課)

これらの商品を扱う複数の販売業者は危険性を認識しているのだろうか。各社に問い合わせてみたところ、驚くような返信があった。

「当社の製品は安全テストに合格しているので安心してお使い下さい」(中国の製造会社)

「安全性について全く認識がありませんでした。当商品は削除します」(日本の販売店)

なかには装着することが可能なチャイルドシートに厳格な安全基準が存在することを知らず、「安全テストに合格している」という誤った認識まで持っていたところもあったのだ。

最初に紹介した大手運営サイト4社(Amazon、Yahoo!、楽天、auPAYマーケット)のうち、3社はすべて違法な商品は削除されている。しかしYahoo!に出店している一部の販売店では、一度削除したはずの違法チャイルドシートが7月上旬、再び販売されていることがわかった。安全基準を満たしているものは商品情報の箇所に「安全基準:ECE R44/04」もしくは「安全基準:ECE R129」という文言が入るが、該当の品の商品情報には入っていなかったのだ。

ヤフー株式会社 広報室は「一部商品についてパトロール対応が十分になされていないことが判明しました。この度のご指摘を踏まえ、改めてパトロール体制を見直しするとともに、ご指摘の商品の販売停止を当社側で行い、その理由(当該ガイドライン)を改めて周知しております」として、サイト上から削除した。

なぜパトロールが行き届かないのか。実際に他のサイトに出店しているある業者はこう明かす。

「Yahooの場合、たとえばA店、B店といった販売者がそれぞれ販売サイトを持っていて、それぞれ独立したお店がYahoo!ショッピングに出店する形をとっています。A店で起きたトラブルの内容が、Yahoo!本体に情報として入っても、A店とB店の間につながりはないので、A店で起きたトラブルがB店の教訓になるケースはほとんどないと思いますよ」

一番肝心なのは「すでに購入した消費者にどのように対応するのか?」ということだ。購入者は恐らく、チャイルドシートやISO FIXの安全基準など知らないだろう。「安くて軽くて持ち運びに便利だから」「ISO FIX金具がついていないシートでISO FIXチャイルドシートを使いたいから」などの理由で購入したと思われる。

そこで「購入者への注意喚起と返金」について前出の4社に確認してみたところ、4社のうち3社は明確に「販売店が対応しなければ運営主体が返金をする」と「返金」を明言。auPAYマーケットは「お客様の意向に応じて適切に対処する」と明言こそしなかったが、返金も含まれると判断して間違いなさそうだ。

だが、大手海外通販サイトでは、いまだに凄まじい数の違法チャイルドシートや違法ISO FIX部品が販売されている。これらは日本からも購入可能だが、「子供の命の保証が低くなる」というリスクを抱えることになる。すでに購入してしまった場合、まずは購入した店舗に連絡して反応がなければ運営会社に問い合わせをして欲しい。

【問い合わせ先】

Amazonカスタマーサポート

ヤフーショッピング ヘルプ

楽天市場 お客様サポートセンター

auPAYマーケット ヘルプ・お問合せ

安全基準を満たしたチャイルドシート(アマゾン)

アマゾンで出品された安全基準を満たしたチャイルドシート。赤いラインで示したような「R129 」と安全基準を満たしたことを示す文言が必ず書かれている
安全基準を満たした世界共通の「Eマーク」が添付されている

安全基準を満たしていないチャイルドシート

2017~2019年にかけて筆者が実際に購入した違法のチャイルドシート。購入後、安全基準が満たされていないことがわかり、返品や返金手続きが行われた。
  • 取材・文・画像提供加藤久美子

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