阿部一二三が金メダルのために実践した「とてつもない意識改革」
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「まだまだです。これからもっと強くなれるように頑張ります」
金メダルを獲得後、選手村に戻った阿部一二三(23)の第一声である。
妹の詩(21)も金メダルを獲得し、日本初の同一大会きょうだいメダル獲得となった。
この快挙の前後、一貫して阿部は冷静だったという。阿部に帯同していた柔道関係者はこう打ち明ける。
「一二三は緊張している様子はまったくなかった。怖いくらいに集中していました。試合に勝って控室に戻っては、『あと3つ』『あと2つ』『あと1つ』という感じで金メダルまでの試合数をつぶやくだけでした。詩が勝ち上がっていることを報告しても、『あいつなら大丈夫』と言って、心配していないようでした」
阿部と親交のある丸山和也氏は、阿部の“ある変化”に気づいていた。
「初めて会ったのは約5年前です。当時は『自分が世界一だ』という自信に溢れていました。しかし、あるときからライバルである丸山城志郎選手を『彼は強い』とホメるようになったんです」
そこから持ち前の大胆さで豪快に投げる柔道から、相手の動きを見て、間合いを支配していく冷静な柔道へと変わっていった。
金メダルでも冷静――。若き王者は早くも次の舞台を見据えているという。前出の柔道関係者が明かす。
「金メダルを獲った直後は喜んでいましたけど、すぐに『もうちょっと上手く攻められたはず』と自分の試合を振り返っていました。一二三の目標は五輪4連覇です。『まだまだこれからです』と言っていたのは、次のパリ五輪に向けて超えていかなければいけない壁がいくつもあることを自分でわかっているからだと思います」
五輪4連覇も日本柔道初。阿部はとてつもない夢にむかって歩きはじめたばかりなのだ。