予約2ヵ月待ちも! なぜ家庭用プリンターの品薄が解消しないのか | FRIDAYデジタル

予約2ヵ月待ちも! なぜ家庭用プリンターの品薄が解消しないのか

リモートワーク浸透のはずが、紙が必要な機器が求められるとはどういうことなのか

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某大手家電量販店では写真のようなチラシがあちこちで見られた
某大手家電量販店では写真のようなチラシがあちこちで見られた

デジタル化が進めば、紙は必要なくなるはずだが…

7月16日にリニュアルオープンした、ある関西の大手家電販売店。あるコーナーに足を運ぶと、品切れや手配に時間がかかることを知らせるチラシがあちこちに貼られていた。

上記の販売店では、オープンから3日間、抽選で毎日30台ずつ、家庭用多機能プリンター「CANON TS3130S」(税込み5280円)、「EPSON EP882A」(同19800円)、「EPSON EP712A」(同13750円)が抽選販売で出された。しかし3機種とも最新機種でなく、一昨年発売の「展示処分品」。店頭に並べてあったものをかき集めて販売していた。同家電販売店の店員はこう明かす。

「最新機種で、この価格帯のものを一挙にこの数、今、揃えるのは難しいです」

昨年の春先から続くコロナ禍に、半導体の世界的な不足が意外なところでクロスして、一部家電の確保が一般市民にとって困難になっている。その中でも、家庭用プリンターの供給不足は想像以上のものがあり、価格帯によっては店頭にあるサンプルのみとなっているものも多数ある。

日本のプリンターの販売シェアを占めるのは、まずキヤノンとエプソン。40パーセント前後のシェア率でここ最近、争いを続けている。それに、ブラザーを加えた3社で国内のプリンター市場はほぼ構成される。その3社の家庭用A4インクジェットプリンターを家電販売店の店頭でみることが難しい状況となっているのだ。なぜなのだろうか?

「コロナの影響で、テレワークが多くなったのが一番ですね」(販売店員)

え、なんで?と一般市民の方が思うのは、間違えていない。紙に頼らないテレワークなどによる、デジタル化を進める政府の「働き方改革」に即して考えると、テレワークが増えると、プリンターなど紙媒体が必要な家電の存在意義はなくなっていくはず。しかし現実には、テレワークに比例したデジタル化は実現していない。むしろ、紙媒体の需要が高まっているというパラドックスが生み出されているのが現状なのだ。主要メーカーのひとつ、キヤノンマーケティングジャパンの広報部はこう明かす。

「テレワークを行なわざるを得なくなった会社は、大企業ばかりではありません。中小の企業さんもそういう事態になっています。そこでは、まだFAXが主流なのです」

テレワークを行うために、家で書類が印字できる家庭用プリンターの需要が高まったというのが実態なのだ。そしてその傾向は、実はコロナ禍の始まった昨年の1~3月期にすでに表れており、キヤノン販売のホームページに昨年度の、その時期のインクジェットプリンターの前年との売上比を見てみると、前年度の34パーセント増となっている。全国に出された最初の「緊急事態宣言」が昨年4月初め。それ以前からテレワーク化を見越した、家庭用プリンター購入が始まっていたということになる。以後の需要の増加は推して知るべし、なのだ。

昨春の最初のプリンターの納期待ちは、そういった状況で始まったが、それ以後も、供給が需要に追い付かない状況が続いている。そして、その要因は複合的に絡んでいる。

この店では、お客さんが購入を希望して予約しても入荷は7週間後。それでも改善されてきているほうだという
この店では、お客さんが購入を希望して予約しても入荷は7週間後。それでも改善されてきているほうだという

予約しても1~2か月は待つ

まずはプリンターの組み立てを、主要なメーカー3社がほぼ国内では行っていないことがあげられる。コロナ禍で海外からの荷物を積んだ船が簡単には日本には来られなくなり、組み立てや部品を供給している国や地域が「コロナの影響でロックダウンしている場合もありました」(ブラザー販売広報部)。いかに、需要があっても、製品が来ないことにはどうにも出来ない。こうなってはもうお手上げだ。

品薄になったプリンターに、拍車をかけたのが、半導体の世界的な不足。プリンターの中で半導体はプリンターのデジタル作動に一役買っているが、ただでさえ、不足しているところに、今年3月の茨城県で起きた「ルネサス那珂川工場」の火災事故が追い打ちをかける形となった。8月初めに、トヨタが5日間、工場のストップを発表しているように、家電に限らず、車などあらゆるところで半導体不足は深刻な影響を及ぼしている。

「海上輸送を確保できてないのも事実ですし、半導体が品不足になっている影響が出ているのも事実です」(エプソン販売広報部)と、メーカー側も認めるように、これにより販売店に「入荷待ち」を強いる状況の改善見通しがたたなくなっているのが現状なのだ。

家庭での需要の高い1万円から3万円程度のプリンターの場合、最も不足していた頃の、納品まで4か月程度かかる状態からは少し改善されているものの、現在も予約してから約1~2か月待ちが平均。「品物がなくなっていることで、販売店さんにご迷惑をおかけしているのは間違いないです。先の見通しも、こうなる、とはいえないです」と、メーカー3社の広報担当が声を揃えるように、家庭用プリンターの供給不足が解消されるめどはまだ立っていない。

真のテレワーク、つまり完全デジタル化ができていれば、実は起こらなかった家庭用プリンターの供給不足。政府のいうコロナ禍での「働き方改革」だが、こんなところにも、大きなほころびが出現していると言わざるをえない。

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