水谷隼が削除した 金メダル後”嫌がらせDM”の本当の背景
《とある国から、『○ね、くたばれ、消えろ』とかめっちゃDMくるんだけど免疫ありすぎる俺の心には1ミリもダメージない それだけ世界中を熱くさせたのかと思うと嬉しいよ》
東京オリンピック「卓球混合ダブルス」で、中国ペアを破って初の金メダルを獲得した水谷隼選手。同郷出身で、12歳年下の伊藤美誠選手との“幼なじみペア”の快挙に、日本中が沸いた。
だが、国内とは違い、海外ともつながるネット上では祝福の嵐というワケではなかったようだ。
7月28日に更新した自身のツイッターで水谷選手は、冒頭にあるように嫌がらせメールを受けていることを告白。過去に送られた彼を罵倒するような数々のダイレクトメールのスクリーンショットも添付して公開した(現在は削除されている)。
「水谷選手は名指ししていませんが、その一部には過去も含めて彼の対戦相手となった国のユーザーからのものもあったのでしょう。打ち負かされた…というプライドの問題もあるでしょうが、水谷選手が過去に告発した『不正ラバー問題』も関係していると思われます」(スポーツ紙記者)
“不正ラバー問題”というのは、ラケットの表面を覆うラバーに補助剤を塗る行為のこと。これを塗ることにより反発力が増し、打球のスピードが段違いに早くなる。それだけに“ラケットのドーピング”と言われているが、それに真っ先に声を上げたのが水谷選手だった。
「不正ラバーが横行していることを告発した水谷選手は、‘12年から約半年間、この問題の解決を訴えて国際試合をボイコットした。しかし検査方法もないため、ロンドン、リオ五輪でも日本人選手を除くかなりの選手が使用していました。暗黙の了解となっているからこそ、彼の告発は一部の卓球界のメンツを傷つけたのでしょう」(元日本代表卓球選手)
それだけに“無垢”のラケットを使い続け、ついに金メダルを取った水谷は、称賛に価する。彼は不正に手を染めず、“自分の力”だけで戦っていくことの決意について、「FRIDAY」(‘13年3月1日号)のインタビューでこう語っていた。
<ルールを破り、補助剤を使い続けた選手が有利になり、ルールを守り続けた選手が一からやり直さなければならないなんて、そんな無茶なルール変更は絶対にあり得ません。
本当はロンドン五輪でなにも変わらなければ、卓球をやめようと思っていたんです。ここまでひどい世界は見たことがないと。でも、自分は間違ったことはしてないし、やめるのは納得がいかない。だったら不正を告発してから、やめるならやめようと決意しました>
自らの信念を貫き通して金メダルを獲得した水谷選手を見て、個々の選手の向きあい方が変わっていくことを期待したい――。
- 写真:ロイター/アフロ(1枚目)、濱崎慎司(2、3枚目)