視聴率56%ってホント?「五輪開会式」は誰が観ていたのか | FRIDAYデジタル

視聴率56%ってホント?「五輪開会式」は誰が観ていたのか

お祭りムード一色でもない日本の現実

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23日に行われた開会式について、直前の辞任劇やコロナ禍の影響もあり世論は賛否に割れたが……(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

7000万人以上が1分以上視聴したとされる『東京2020オリンピック・開会式』。

メインスタジアムの建て替え問題に始まり、コロナ禍による1年延期や無観客での実施、さらに開会式・閉会式演出でのゴタゴタなど、異例の出来事が続いた今大会。それでも始まってみれば国民の6割ほどが視聴し、五輪は一挙にお祭りムードになったという声も聞く。

ところが47都道府県を見渡せば、事はそんなに単純ではないことがわかる。スマートテレビの視聴状況を調べるインテージ「Media Gauge」によれば、全国約285万台の平均接触率は37%だった。一世帯8台までのどれかが付いていればカウントするビデオリサーチの世帯視聴率56.4%とはかなり開きがある。

しかも五輪が開催された南関東の接触率が傑出していたが、それより3割以上低い地域はかなりある。つまり国全体が浮かれているとは言い切れないのが現実だ。

では開会式は誰が注目したのかを、データに基づき考えてみたい。

都道府県別の視聴状況

47都道府県別に平均接触率を比べると、地域によって大差があったことがわかる。全国平均は37%だったが、高い順のベスト10は以下の通りとなった。

1位 東京都 (43.43%)
2位 神奈川県(42.15%)
3位 千葉県 (41.21%)
4位 埼玉県 (40.67%)
5位 奈良県 (37.78%)
6位 山梨県 (37.16%)
7位 兵庫県 (37.11%)
8位 栃木県 (36.48%)
9位 滋賀県 (36.44%)
10位 茨城県 (36.16%)

以上でわかる通り、五輪の会場がある1都3県が突出している。人口は日本全体の3割ほどあり、平均値を大きく引き上げていた。この結果、4エリア以外はほぼ平均値以下となった。五輪開会式に特に注目していたのは、南関東という一部地域だったのである。

ではあまり見ていなかったのは何処か。低い順のワースト10は以下の通りとなった。

1位 鳥取県 (29.36%)
2位 高知県 (29.58%)
3位 和歌山県(31.36%)
4位 宮崎県 (32.14%)
5位 沖縄県 (32.17%)
5位 福井県 (32.17%)
7位 北海道 (32.33%)
7位 徳島県 (32.33%)
9位 岡山県 (32.56%)
10位 島根県 (32.6%)

中国四国と九州が多い。基本的には大都市のない地方は、相対的に関心が高くなかったことがわかる。中には北海道のように、マラソンの開催地となり、札幌という約200万人が暮らす大都市を抱えながら低い接触率となったエリアもある。

首都周辺と地方では、東京五輪の受け止められ方は大きく違っている可能性がある。

区市町村別の視聴状況

しかも、その首都圏でも区市町村によって見られ方に大差が生じた。関東約69万台のスマートテレビで視聴動向を調べる東芝TimeOn Analyticsによれば、接触率が高いのは南関東の中でも都市部に集中している。

例えば接触率が42%を超えたのは、東京都では以下の自治体だ。

武蔵野市(42.05%)
世田谷区(42.17%)
文京区 (42.50%)
中央区 (42.78%)
江東区 (43.12%)
稲城市 (44.25%)

神奈川県・千葉県・埼玉県では以下の通りとなった。

川崎市宮前区  (42.11%)
横浜市青葉区  (42.30%)
さいたま市浦和区(42.53%)
さいたま市中央区(43.30%)
浦安市     (43.55%)
千葉市美浜区  (43.95%)

以上のように政令指定都市に集中している。やはり五輪は開催地の都市部のお祭りの様相を呈している。

ただし国立競技場のある新宿区は36.81%、その周辺の渋谷区37.71%、港区36.59%と全国平均前後であまり高くない。競技場周辺に繰り出したり、ベランダや外で花火やドローンを眺めたりで、テレビを見る人が他の区より少なかったかもしれない。

その南関東でも、東京都の奥多摩、神奈川県の三浦半島や箱根方面、千葉の房総半島や銚子方面では、全国平均より大きく下回った。例外として千葉県長生郡一宮町の39.38%があるが、これは同町の釣ケ崎海岸がサーフィンの競技会場となった関係で、町民の関心が特に高かったからかもしれない。

他に群馬県・栃木県・茨城県では、全国平均を上回る自治体はほとんどなかった。

首都圏の郊外や郡部は、実はテレビのライブ視聴率が比較的高いエリアだ。例えば日本テレビの『オモウマい店』や『秘密のケンミンSHOW 極』などでは、都市部よりはるかに高い数字となるのが常だ。郊外の食堂や地域料理などに反応する視聴者がたくさんいるために起こる現象だが、どうやらこうした視聴者にとって東京五輪の開会式は“自分ごと”にならなかったようだ。

二極化の要因として、もう1点考えられる。

開会式中継は夜7時56分に始まり、深夜の11時51分まで続いた。当日は4連休の2日目だったが、都市部には夜更かしの人が多い。ただしそれ以外の地域はそうでもないし、特にコロナ禍以降は早寝する人が増えていた。この辺りも大差が生まれた原因だったかもしれない。

開会式自体にも要因あり!?

地域による接触率の二極化は、開会式のプログラムにも要因があった。

接触率を時系列で追うと、8時台前半に数字は急伸してピークが8時半までに来る。MISIAの国歌独唱、森山未來のダンス、真矢ミキが棟梁となった大工や火消しのパフォーマンス、「世界で観るべきダンサー25人」に選ばれた熊谷和徳のタップダンス、木製の五輪完成、ノーベル平和賞のムハマド・ユヌス氏の「3つのゼロ」メッセージあたりが盛り上がった。

ところがギリシャを先頭にした選手の入場は、最後の日本選手団入場こそ盛り返すが、それまでに5%以上接触率を下落させた。200を超える国と地域の選手入場が2時間近く続くのはさすがに長すぎた。

しかも大会組織委の橋本聖子会長と、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長のスピーチは、当初の予定を大幅に上回る長さで退屈な内容だった。都市部でもここで逃げた視聴者は少なくなかったが、地方で普段から早寝の人々には眠くなる失敗演出と言わざるを得ない。

王・長島・松井や大坂なおみの聖火リレーと聖火台への点灯を生で見られなかった人々は残念だっただろう。

以上のように、57年ぶりのオリンピック東京大会の開会式は、地域によって見られ方が大きく異なった。冒頭で少し触れたように、開催が決定してから直前までゴタゴタが続き、国民の間ではコロナ禍の中での開催に意見がさまざま分かれた。

ところが多くの国民が開会式を視聴したことで、日本全体が一挙にお祭り気分になったように報道されもした。しかし実際は、南関東の都市部こそ視聴率は稀に見る高さとなったが、日本全体を見渡せばそうでもない地域が大半だ。

こうした二極化の中でスポーツの祭典が始まったことを、我々は正しく認識しておかなければならないだろう。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

  • 写真西村尚己/アフロスポーツ

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