東京五輪男子ゴルフの裏で「女子ゴルフ新規大会開催」の裏事情

日本選手団のメダル奪取が続く東京五輪。金メダル候補の１人、男子ゴルフ日本代表の松山英樹が満を持して登場し、首位と１打差の単独２位で最終日を迎える。

「今年４月、男子ゴルフ界の最高峰『マスターズ』を制覇しての凱旋試合。栄光の『グリーンジャケット』を手にした松山が地元の利を生かし、再びゴルフファンを歓喜させてくれるでしょうね」（ゴルフライター）

７月初旬、拠点の米国で新型コロナウイルスに感染も、五輪出場に向けて7月22日までに帰国。24日には舞台となる埼玉・霞ケ関ＣＣで練習ラウンドを行った。

「26日には女子エースの畑岡奈紗の希望から、若武者・星野陸也も交えて、チームジャパン３人が水色を基調にしたそろいのウェアを着てプレー。同行した服部道子コーチは『（畑岡が）丸山（茂樹ヘッドコーチ）さんからアプローチのレッスンを受けることもできた。非常にいいムードのなか、“チームジャパン”としてできている』と笑顔でした」（スポーツ紙記者）

ただ、もう１人の日本代表の稲見萌寧の姿は見られなかった。なぜなら、29日開幕の国内女子ツアー『楽天スーパーレディース』出場のため兵庫県に向かったからだ。

「『チームジャパン』と言いつつ、男子の大一番の裏で女子ツアー開催となったことに疑問の声を上げる人もいます。それも新規開催ですからね。ゴルフ界が一枚岩となって、国内のゴルフ競技を盛り上げようとしているわけですから」（スポーツ紙デスク）

今年２月26日、日本女子プロゴルフ協会（ＪＬＰＧＡ ）は「ＪＬＰＧＡ主催競技」の新設と開催にあたり、21年から３年間、楽天の特別協賛が決定した旨を発表した。

「通常なら、ＪＬＰＧＡによる初の主催競技（公式競技を除く）だけに、コロナ禍だったとはいえ、大々的に報じそうなもの。しかし、発表はリリース程度でした。『特記事項』には東京五輪男子ゴルフ競技（４日間制）と同週の開催となることを考慮し、‘21年度は３日間競技で会場地域も重ならないように検討と明記していた。配慮は感じられましたが、どうにかならないかと思う人もいたでしょうね」（前出・ゴルフライター）

とはいえ、ＪＬＰＧＡにとっては苦肉の策であり、この機を逃せない事情も垣間見える。

「この『楽天スーパーレディース』の新設で、‘21年女子ツアーの試合数は38試合となり、賞金総額は史上最高の42億2000万円。すでに空いている週が猛暑の合間ぐらいというほど隆盛を極めていた。開幕戦は３月１週目と決まっているし、男子ツアーの日程を考慮すれば最終戦も動かせないため、新設にはこの週しかなかったということです」（前出・スポーツ紙記者）

同時にＪＬＰＧＡと楽天の両者にとっては、「ｗｉｎ-ｗｉｎの関係」ということも見逃せない。

「ＪＬＰＧＡの小林浩美会長は以前から『新たな将来像』を打ち出していて、それが欧米のように、『協会が主催者となってツアー全体を管轄していく』というスタイルです。そのためには、例えば『放映権問題』を解決しなければならないが、楽天には『Ｒａｋｕｔｅｎ ＴＶ』がある。スポーツはもとより、約23万本のコンテンツを配信する楽天グループの動画配信サービスは魅力です」（前出・スポーツ紙デスク）

７月26日には、ＪＬＰＧＡのＨＰで、「楽天スーパーレディース」の３日間ＬＩＶＥ配信（無料）決定が発表された。

「一方の楽天側にしても、優良コンテンツの確保はモバイル事業にとって不可欠。人気コンテンツとなりうる女子ゴルフは、渡りに船だったはず」（前出・スポーツ紙デスク）

楽天は今年４月、女子ゴルフ代表の稲見とスポンサー契約を交わした。

「当時は黄金世代の渋野日向子やミレニアム世代の古江彩佳と代表争いの渦中だったとはいえ、稲見にとっては五輪本番直前にホステス大会とは厳しい。トップクラスのベテラン選手でさえ『通常の３倍以上も疲れる』と言うし、コロナ禍でもプロアマ戦があり、有観客試合となれば、気遣いが半端ない。

本人は『ホステス大会だし、初日は誕生日なので頑張りたい』と笑顔で話していたが、本音は松山と星野を応援しながら、服部コーチと畑岡と一緒に攻略法をチェックしたかったはずです」（前出・ゴルフライター）

男子オリンピックより１日早い31日に終了した「楽天スーパーレディース」は21歳の吉田優利が制し、初代チャンピオンに輝いた。ゴルフファンにとっては、男子オリンピックと女子の新設ツアーのダブル観戦という贅沢な週末を過ごすことができた。

果たして稲見は、オリンピック本番で実力を発揮することはできるのだろうか。