「賞レースだけがすべてじゃない」サンドウィッチマンの想い | FRIDAYデジタル

「賞レースだけがすべてじゃない」サンドウィッチマンの想い

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ただただ仲間とのふざけあいを楽しんでいるサンドウィッチマンの二人

第何世代とかじゃなく

「おじさん芸人が、汗だくになって本気のロケをしてますからね。しかも、こんなラインナップが見られるのはこの番組だけだと思う。もともと面白い芸人たちですから、番組を通じてそれに気が付いてくれる方が増えてくれたら、うれしいですね」

サンドウィッチマンの伊達みきおは、そういっていたずらっぽく笑う。その隣で、「第7世代がロケしているのとまったく雰囲気が違う。捨て身の姿勢が伝わってくるのがこの番組の見どころです」と、富澤たけしが、半分本気で、半分茶化すような表情で相づちを入れる。

BSフジで放送中の『サンド道楽』は、これといった趣味のないサンドウィッチマンの二人に、新たな“余暇の楽しみ方”となりそうなアクティビティやレジャー情報をプレゼンする――という情報バラエティ番組だ。

(伊達)「50近くなって趣味がどうとか言ってる場合じゃないんですけど、老後を考えたときに楽しいことをしたいなという気持ちはあるんですよ。でも、『趣味は何ですか?』って聞かれると、即答できるものがないんですよね……強いて言えば、東北楽天ゴールデンイーグルスの試合を毎日チェックすることくらいかなぁ」

(富澤)「ゲームとかやりますけど。語れるほどのものはないんですよね……」

番組のコンセプトは決して強引なものではない。二人には本当に趣味がないのだ。そこで同番組では、ゲストの実力派芸人が二人に新たな趣味を授けるべく、実際にその趣味を体験(ロケ)し、プレゼンする。だが……この“実力派芸人”が、ひと癖どころか何癖もありすぎるのだ。#1から#9までの顔ぶれとプレゼン内容を見ると、

・ハマカーンが瓦割り&西洋剣武術をプレゼン

・三拍子が味噌の魅力をプレゼン

・磁石が新しい弓矢競技&へディスをプレゼン

・なすなかにしが世界のボードゲームをプレゼン

・ロケット団が歌舞伎&和太鼓をプレゼン

「アパッチ野球軍」を彷彿とさせる攻めすぎのラインナップである。しかも、「へディス」に関しては、いったいそれが何なのかすらもわからない。芸歴20年を超えた“お笑い成人世代”が、額に汗してロケに挑む。冒頭の伊達が話すように、実力派の20年戦士が体当たりでロケをする姿は、冗談抜きで貴重かつ面白いのだ。

それにしても、だ。実力派ではあるが、ど真ん中ではないこの人選、一体どういう基準で彼らが選ばれているのだろうか? そう尋ねると、「彼らのような実力がある芸人を呼んで、何か番組ができないかと思った」と明かす。BSフジ番組担当者も、「実力はあるけれどなかなか陽の目を浴びていない芸人と何かできないか――それがサンドウィッチマンの意向でした。その気持ちから『サンド道楽』は生まれたんです」と説明する。

(伊達)「チャンスを与えたいとかそんなおこがましい気持ちはないんですよ。僕らも一緒にライブに出ていた仲間。単純にそんな仲間たちと会いたいんですよ(笑)」

(富澤)「公私混同ですよね」

(伊達)「彼らにはロケに行ってもらうことにはなるんですけど、スタジオでその模様を一緒に見ながら笑う。僕らが会いたい芸人がゲストになる」

(富澤)「近い将来、瞬間メタルが登場すると思います」

(伊達)「ワハハハハ! 瞬間メタル、いいねぇ!」

説明不要だろうが、サンドウィッチマンは2007年の『M-1グランプリ』において、敗者復活戦から決勝進出を果たし、最後の直線で大まくりを成し遂げた。今年6月に放送されたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、陽の目の当たらないどん底期、芸人を辞める寸前だった心境が吐露されている。自分たちもかつては「ダークホース」だったからこそ、陽の目を探し当てることの難しさを知っている。

(伊達)「やっぱり運とかタイミング…が大事なんでしょうね。2007年のときは、敗者復活戦から決勝に上がるのは、僕らか磁石って騒がれていた。もし、あのとき磁石が勝ち上がっていたら、そのまま彼らが優勝していたと思う。まったく逆の立場になっていたかもしれない。

ただ、磁石は人柄に難があるからなぁ(笑)。優勝しても人気は出なかったかもしれない」

(富澤)「いまだにかっこつけてるもんね」

(伊達)「うん。でも、面白いのは間違いない」

陽の当たる場所へ行くために、運やタイミングを手繰り寄せることはできるものなのか?

伊達は、「気持ちの持ちようだと思います。気持ちが変わるだけでまったく変わってくると思う」と答える。

(伊達)「僕らで言うと、2004年のM-1の決勝に東京ダイナマイトが進出したことで、大きな刺激を受けました。彼らが決勝に行く姿を見て、『それまでの人気なんて関係ない。面白かったら行けるんだ』って。その時までって、ある程度有名じゃないとM-1の決勝には行けないと思っていたし、どうせダメなんだろうなっていう気持ちがあった。でも、東京ダイナマイトが決勝に進出した現実を見て、ただただ俺たちは、決勝まで行くという気持ちが足りなかっただけなんだなって。 そこから本気になったというか、火がつきましたね」

(富澤)「ある後輩が結婚したとき、僕らに報告しに来たんですけど、本気で頑張りますって言っていたんですよ。そしたら結果を残せるようになった」

(伊達)「腹をくくるのは大事ですよね。それさえできれば誰にでもチャンスはあるってことだと思います。ただ、大前提で面白さは必要。ずっとスベってるやつが、どんだけ腹をくくっても、やっぱり厳しいとは思うよ(笑)」

(富澤)「自分がスベり続けているのに、それでも愚直にそれを続けようとする芸人もいる。わかるんだけど、そこじゃないよっていう話なんです。それに気付けるかどうか。そこの判断も必要ですよね」

面白くても陽の当たらない芸人に対して、しばし“くすぶっている”という言葉が使われる。だが、伊達はこの言葉に難色を示す。

(伊達)「売れていない人たちのことを“くすぶってる”って表現するのは簡単だと思うんですけど、なすなかにしなんかはずっと面白いですからね。ちゃんと面白い。ただ世の中の時流にちょっと合わないからって、それを安易に『くすぶってる』とは言いたくない。『サンド道楽』は、くすぶっている芸人がゲストなんじゃなくて、ちゃんと面白い芸人がゲストの番組なんですよね」

売れる、活躍する。それらの言葉は、何をもってそう言い切れるのか、実はあやふやだ。テレビに出ていなくても舞台や営業でお金を稼いでいる芸人もいれば、テレビに出ていても実力に疑問符が付く人だっている。世間と目が合わない芸人たちを、勝手にくすぶっていると位置づけるのは大間違いだと、『サンド道楽』は教えてくれる。

では、くすぶっていると表さないとすれば、どんな言葉がいいのだろう?

(伊達)「注目の……とか」

(富澤)「それは違うだろ。注目の芸人ではない(笑)」

わはははは! と笑い声がこだまする。彼らが何かを語るとき、辛気臭い雰囲気は一切ない。だからこそ、彼らの周りには人が集まってくるのだろう。

無冠の成人芸人たちは、もう酸いも甘いも嚙み分けている。「この世代って面白いんです。それが伝わるような番組にしていきたい」。そう伊達が話すように、注目以上に刮目すべき芸人たちのロケ、それを楽しめるのがこの番組の醍醐味だろう。

(富澤)「M-1の出場資格もなくなって、賞レースから卒業させられちゃう芸人がたくさんいる。どうしたらいいの?ってならないように。駆け込み寺としての『サンド道楽』でありたい」

(伊達)「『サンド道楽』が面倒をみます(笑)。我々の趣味はどうでもいいから、いろんな苦楽を共にした芸人仲間たちが来て、一緒に楽しんでる姿を見ていただきたいですね」

(富澤)「そういうやつらと会うのが趣味だった……最終回はそういうオチでいくと思います(笑)」

先の『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、富澤は「面白いのに運が無かったり、何かの要素でうまくいっていないやつらもたくさんいる。せっかく自分らが番組できたりして、「こういう人呼べないですか」とか言える立場になってきたから、何とかして出せたらいいなと思いますけど。みんな面白いし、みんないい奴だから」と披瀝している。

『サンド道楽』は、2011年10月から2021年3月まで放送されていた『東北魂TV』の後継番組として始まった。「東北を応援するというお笑い番組をやりたい」という二人の声から生まれた『東北魂TV』。そして、面白いのにたまたまうまくいっていない芸人たちと何か一緒にやりたいという気持ちから生まれた『サンド道楽』。

誰かのために――。日曜23時には、サンドウィッチマンの想いが詰まっている。

『サンド道楽』はBSフジで毎週日曜日23:00~23:30に放送中!(https://www.bsfuji.tv/sandouraku/

  • 取材・文我妻弘崇撮影丸山剛史

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