卓球を辞めたくて「親とケンカ」水谷隼が語っていた若気の至り | FRIDAYデジタル

卓球を辞めたくて「親とケンカ」水谷隼が語っていた若気の至り

本日からはじまる男子団体戦で2個目の金メダルなるか

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男女混合ダブルスで日本勢で初めて金メダルを獲得した水谷隼(©写真 JMPA)
男女混合ダブルスで日本勢で初めて金メダルを獲得した水谷隼(©写真 JMPA)

東京五輪で4大会連続の五輪出場となった卓球の水谷隼は、同郷の伊藤美誠とコンビを組んだ混合ダブルスで優勝。日本卓球界初の快挙を成し遂げた。

水谷は左利きで柔らかいボールタッチやラケット裁きから「天才」「卓球界のイチロー」と称されてきた。2007年の全日本選手権では、17歳7か月と史上最年少で制し、前回のリオデジャネイロ五輪でも男女通じて初の銅メダルも獲得。日本卓球界の新しい歴史を切り開いてきた。

実はそんな水谷が高校生向けの媒体の取材でこんな話をしてくれたことがある。

「(小学校時代から)ずっと(卓球を)やめようと思っていた。中学校に入ったらサッカー部に入るつもりだった」

いったい、どういうことなのか――。

両親が卓球経験者だった水谷は磐田市出身。5歳からヤマハ発動機に勤務する父・信雄さんが運営する豊田町スポーツ少年団で卓球を始めた。ただ両親の方針もあり、卓球以外にも父親と野球をやったりソフトボールをするなど他のスポーツも掛け持ちしていたが、隼少年が夢中になっていたのはサッカーだった。

それもそのはず、水谷と伊藤の出身小学校である磐田北小は、サッカーのジュビロ磐田の本拠地のヤマハスタジアムは1kmほどの場所にある。特に隼少年が小学校の5、6年の頃、ジュビロ磐田は名波浩らを擁してJ1最強を誇った時代と重なる。隼少年がサックスブルーに憧れたのも自然な流れだった。

運動神経や身体能力が抜群だった水谷はサッカーの腕前も実力も相当だったようで、ジュビロ磐田のスカウトも目を付けていたという逸話もあるほど。また2016年のリオ五輪直前には、自らの名前が入ったジュビロ磐田のユニフォームキックインセレモニーにも参加し「メダルを獲得してまた磐田に帰ってきたい」と語っていたほど。

その一方で、卓球で幼い頃から天才ぶりを発揮していた水谷は小学校2年、4年、6年と全国大会で優勝。しかしジュビロ磐田のお膝元では小学生の間では卓球よりもサッカーが人気絶大で、卓球ではなく、サッカーでビッグになりたい、という夢をもつこと自体、不自然ではない環境だった。

当時の水谷は中学校からは卓球を辞めてサッカー部に入りたかった。でも両親としては、幼い頃から才能をいかんなく発揮してきた卓球を簡単にやめさせたくなく衝突があった。中学校の卓球部に入らないと全国中学生大会に参加できないという事情もあった。「小学校6年から中学1年のころは母親とケンカが絶えなかった」(水谷)。しょうがなく卓球部に所属したこともあり、中学校に行くのもさほど楽しくない毎日だったという。

そんな水谷が卓球に専念するきっかけがあった。それは卓球協会にドイツ留学に誘われたことだった。中学1年で海外遠征でドイツを訪れ、現地の日本人プロ選手の活躍を目の当たりにしていた水谷は「先に岸川(聖也)さんが行っていたし、海外ならちょっと行く価値があるかな……。留学の話が来たらすぐに行きました!」。

中学2年の途中からドイツのプロリーグでプレーすることを決めて、それにともない、より海外でプレーする時間を確保するため、磐田を離れて青森山田中に転入したというわけだ。水谷は最初はドイツの3部に所属していたが、自ら選んだ道だったこともあり、めきめきと力をつけて、高校3年の頃になると1部でプレーし、今につながる実力をつけていった。

もし、母親の反対を押し切りサッカーに専念していたら、ジュビロ磐田でプレーしていたかもしれない……とどうしてもと考えてしまう。だが、卓球協会や母親の粘り強い説得により、水谷は結果的に卓球に専念し4度目のオリンピックで晴れて卓球界初の金メダリストに輝いた。

水谷は8月2日から始まる男子団体でも新たな歴史を刻み、メダルの数を増やして磐田に戻ることができるか。

  • 取材・文斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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