毎日完売!「おはぎに見えないおはぎ」の驚くほどの美しさ | FRIDAYデジタル

毎日完売!「おはぎに見えないおはぎ」の驚くほどの美しさ

フォロワー12万人!“映えおはぎ”に仕込まれた、店主のS N S戦略

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こんなカラフルなおはぎが日替わりで登場する

東京都内、桜新町。住宅街、それからアニメ『サザエさん』発祥の街として知られている。この街の一角に一箱約1800円(税別)のおはぎを求めて、毎日長蛇の列ができる店があるという。

おはぎに行列……? 豆大福に並ぶ話なら何度か聞いたことはあるけれど、あのどん、としたフォルムの、小豆和菓子ですよね?? お彼岸になると張り切って実家のお母さんが作っている、おはぎを並んで買うんですか??? と疑問が積み重なってきたので、『タケノとおはぎ』店主の小川寛貴さんに直接話を聞いた。

「輪っぱパッケージと日々変化する季節のおはぎでフォロワーが増えました」

まずはこのページにアップされたおはぎの写真を眺めてほしい。これ、ぜんぶが豆餡から作られたおはぎだ。着色料は使わず、自然の素材から着色。保存料も使用していないので、賞味期限は1日。崩したらこの美しさは消滅するので、運搬にも最大限の気を遣うという、このアートのようなおはぎたち。どんなきっかけで、世界中からファンが集まるヒット商品になったのだろうか?

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――大好きなお祖母様・タケノさんの作ってくれたおはぎを再現しようとしたことが、店をオープンしたきっかけだと伺いました。

「そうなんですよ。甘さ控えめで、握り拳くらいありそうなおはぎが祖母の定番でした。でも高齢ですからいつこの味が途絶えてしまうのかわからない。そう思ったら、飲食業をしていた僕がこの味を継ごうと思ったんです」

――差し支えなければ教えて欲しいのですが『タケノとおはぎ』をオープンする前は、どちらかで飲食業をされていたんでしょうか?

「東急田園都市線沿いのスペインバルで働いていました」

――え、ってことは……和菓子との接点なし、ですよね。

「そうなんです。独立したときは洋風惣菜を売っている……デリカテッセンの店でした。これもすごく楽しかったんですよ」

――桜新町に出店しようとした理由もありますか?

「いや、特にはないんです。この周辺で物件を探していたら、たまたま出会ってしまったというくらいでしょうか」

――オープンから5年間で、(コロナ禍前は)海外からも購入をしたいとファンができるようになりました。ここには何か戦略があったはず……と睨んでしまいます……。

「やっぱり大きかったのはインスタグラムです。とにかく、ウチのおはぎを知ってもらうためにどうすればいいのか。そこでひらめいたのが、7種類のおはぎを入れて、丸い輪っぱに詰めることでした。ケーキとか……洋菓子は買って帰ってきても、一度お皿にのせてから撮影をして写真をインスタにアップしますよね。

この皿に乗せるひと手間を省けるように考えたのが、輪っぱ。これなら映えるし、買ってからすぐにインスタにアップしてもらえると思ったんです。おはぎでビジネスをしようと思ったら、ただ売るだけではこの可愛さは知ってもらえないですから」

――それが今ではフォロワー12.4万人にまで成長して、次のステージですよね? オーダーメイドおはぎの『春まど』を企画されました。9個入りで6000円〜のアートのようなおはぎは、1ヵ月先まで予約が埋まっているとか。

「ありがたいですよね。おはぎってすごいんですよ。“ウェディングおはぎ”のオーダー、喜寿や米寿のお祝い、映画の完成舞台挨拶……(うれしそうに)。その人たちの人生の節目の真ん中におはぎがあるってすごいなあと思います」

「全国おはぎツアー、やりたいですね」

――(写真のような)これだけの色使いでも着色料は使用されていないんでしょうか?

「はい。基本はもち米とあんこがベースです。粒あんとこしあんのおはぎ以外は、インゲン豆を使った白こしあんに旬の食材で着色しています。あんまりフレッシュのままは使えないので、自分たちで漬け物やピューレ、パウダーなどに加工しています」

――料理のレシピみたいです。

「そうなんですよ。だからスイーツを作っているというよりは、料理を作っている感覚です。白インゲン豆はヨーロッパ地方ではペースト、スープ、サラダなどで食卓へ登場する率が高いんですよ。だから何にでも合うだろうなと思ったし、食材同士の接着剤になってくれる利点もある。実はあんこって、豆ならなんでもあんこになるんですよ。例えば枝豆ならずんだ餅になるとか、そういう感覚です」

――日替わりのおはぎですけど、お花か何かにインスピレーションを受けるのでしょうか?

「出勤途中に紫陽花が咲いていたら『ああ、今日はこれをイメージしよう』とかそんな感じです。最初は一人で考えていたんですけど、最近はスタッフの案がほとんどです。『今日はうちの庭のこんな花が咲いた』、『スーパーでこんな食材を売り始めた』とかアンテナを常に張っていてくれるから、僕は聞いて、形にするだけです。うちのおはぎを見て季節を感じてくれたらいいですよね」

――ここまで読んでくれた人も、おはぎが食べたいと思っているはずですが、地方発送はないんですよね……?

「うちのおはぎは賞味期限1日のみ、ここを変える予定はありません。当日に食べてもらうのが一番おいしいですから。でも地方に僕たちが行って、おはぎを売る計画はあります。7月末には名古屋の高島屋さんに期間限定で出店させてもらいました。これを機に“おはぎ全国ツアー”でもできたらいいなあ」

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取材中に小川さんはおはぎのことを何度も「可愛い」と言っていた。この愛情こそ、ブレイクにつながるとは思うけれど、それはあくまでも理想系。現実的なことに着目して、“輪っぱ”作戦を成功させた。やはり黙っているだけではモノは売れないし、衰退していく。考えることの重要さを小川さんは知っていた。

「いつまでもこのブームは続かないと思います」。そう小川さんは言っていたけれど、彼なら新戦略を打ち立てて新しいアイテムを作るはず。

こんなことを考えながら食べたおはぎは、ほど良い甘さで心をほんわかとさせてくれた。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真提供タケノとおはぎ

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