コロナ第5波の現実が「正しくわかる」驚きのグラフを紹介しよう | FRIDAYデジタル

コロナ第5波の現実が「正しくわかる」驚きのグラフを紹介しよう

正しい議論のために、正しいデータを把握することが大切

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新型コロナウイルスの感染が全国で急拡大している。

8月5日には東京で5千人超、全国でも1万5千人を突破し過去最多となった。一週間の新規感染者数は前週比2倍超と、急拡大に歯止めがかからない。

政府の分科会は、緊急事態宣言を全国に広げるべきかの議論を始めている。

このタイミングで政府は、「患者が急増する地域では、重症患者・重症化リスクが特に高い人を除き、自宅療養を基本とする」という方針を自治体に通知した。

これを受けて東京都では、入院の判断基準の見直しに入った。現状では、「38度以上の発熱・血液中の酸素濃度96%未満など発熱・呼吸苦などの症状が中等症以上」が入院の判断基準となっている。この基準をより厳しくすることを視野に見直しを検討しており、専門家の意見を踏まえて具体的に決めるとした。

この政府方針に対して与野党からは、異論が相次いだ。

「全国一律で実施するのは適切でない」「適切な治療を受けられなくなるという不安が広がっている」「無責任な対応だ。中等症患者も入院する原則を堅持すべき」などだ。

国会の厚生労働委員会でも議論が交わされた。

「(国民の)不安をどう解消するかがカギ」
「入院すべき人が入院できない状況は人災」
「酸素吸入が必要な中等症患者を自宅で看ることはありえない」
「自宅療養が基本は撤回すべき」

こうした批判に対して、田村厚労相は「よりリスクの高い人に治療してもらわないと失われる命を救えない」「重症化リスクの比較的低い人の在宅対応は先手」「フェーズが変わった中での対応」などと答弁した。

新たな事態に対して様々な意見が飛び交っている。

筆者は「フェーズが変わった」という事実認識を正しく持たないと、議論の適否は決められないと感じている。ところが国会の議論やマスコミの報道では、そのフェーズについてのわかりやすい説明・解説がない。公開されているデータの見せ方や分析の工夫で、現状を正しく知る一助にしたい。

新たなフェーズ

マスコミ報道で最も使われるのが、1日ごとの陽性者数のグラフだ。

確かに過去4回の緊急事態宣言は、この数字の拡大期に発出されている。陽性者が増えると人々が危機感を抱くメカニズムは、こうしたグラフを基にした報道で醸成されてきた。

ただし陽性者数の多寡だけでは、「本当の深刻さ」は実は見えて来ない。単純にいえば、陽性者が多くてもどこまでが深刻な状態なのかということもある。

これに対して二人の大学教授が、共同でわかりやすいグラフを考案した。東北芸術工科大学基盤教育研究センターの古藤浩教授と大阪芸術大学放送学科の榊原廣教授だ。このグラフをみてほしい。横軸が陽性者数、縦軸が死亡者数だ。それぞれ一週間の移動平均値で示している。

これによると昨春の第1波と第2波は、陽性者数も死亡者数も小さく、事態の収束も4か月ほどで済んでいる。初めての経験で人々の不安は大きかったが、実は深刻とは言えない状況だった。

しかし第3波と第4波は、一挙に規模が大きくなった。

陽性者数のピークは6000人強、死亡者数も100人強、期間は5か月弱に伸びた。忘年会シーズンや年末年始の帰省が重なったこと(第3波)と、春の新生活スタートや緊急事態宣言への慣れ(第4波)などの影響だろう。大都市だけでなくエリアが全国各地に広がったことも、グラフの円を格段に大きくした要因だ。

ところが第5波は、明らかに動きが異なる。陽性者数は急伸し、1か月足らずで1万人を突破した。これまでに例をみない急伸だが、死亡者数は10人前後で推移している。いまのところ円を描かず直線的に右に進む第5波は、明らかにこれまでとは異なるフェーズに入ったと思われる。

陽性から死亡への連動の行方

こうした状況に対して、例えばNHKのホームページでは、4枚のグラフが掲載されている。

感染者数・入院や療養中の人の数・重症者数・死者数だ。それでも異なる4グラフを見せられて、その意味を解読できる人はどれだけいるだろうか。

ニュースでは、その日の感染者数・重症者数・死亡数が紹介され、病院のひっ迫状況がリポートされ、そして国会などでの議論が紹介される。ところが個別のニュース項目を幾つか見せられて、全体としてどうなっているのかを頭の中で正しく再現できる人はほとんどいないだろう。

4枚のグラフなら、古藤教授が描く1枚の図の方がはるかにわかりやすい。
今年4月1日での値を100として、「新規陽性者数」「入院・治療を必要とする人数」「重症者数」「死亡者数」を折れ線グラフにしたものだ。

これを見ると第3波では、「新規陽性者数」がピークを迎えた後に、他の3つが重篤な順にピークを迎えた。ところが第4波では、「重症者数」の割に「死亡者数」がやや少ないのが少し異なる。

そして今回は、「新規陽性者数」が急伸した後、「入院・治療を必要とする人数」が少し遅れて伸び始め、さらに遅れて「重症者数」が増加に転じた。ただし今のところは、以前より重症化が遅く、数も少ない。

そして一番の違いは、死亡者の数が(この時点では)「プラス」に転じていない点だ。

医療の専門家も解説している通り、65歳以上の高齢者へのワクチン接種が進んだ効果が統計にも出始めている。新規陽性者に占める40代までの割合は8割を超え、今年4月と比べると60代以上は3分の1に減少した。もともと重症化から死に至る人は高齢者が多かったので、そこに歯止めがかかり始めたための変化と見るのが自然だろう。

推定死亡率低下の意味

これを補強するデータとして、推定死亡率の推移グラフがある。発症から死亡までの日数が10~20日程度と考えられていることを前提に、古藤教授が割り出した推定値(註)だ。これで見ると、今春の第4波で大阪が医療崩壊を招いた際に数値が急伸した。

そしてワクチン2回接種を済ませた65歳以上の高齢者数が増えると共に、この1か月で死亡率は減少を続けている。若年層での新規感染者が急増したが、重症者がそこまでは増えてなく、結果として死亡者数が10人ほどで推移しているための下落である。

いうまでもなく新規感染者の急増は由々しき事態であるし、重傷者増加は当然懸念すべきだが、推定死亡率が下がり続けている今は正しい対応を構築する好機と言えよう。

政府は従来の基準で入院を認めていると医療崩壊を招き、結果として治療すべき人々への対応が出来ずに重症化や死亡を増やしてしまう…と考えたようだ。

田村厚労相は「今は平時ではない」と発言したが、新規感染者急増が有事であるなら医療現場ではトリアージュが必須だ。TBS日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』で鈴木亮平演ずる主人公が事件現場で行っている、手当の緊急度に従って優先順位をつける行為だ。これにより死亡者数をおさえ、全体最適化が図れるようになる。

ところが多くの人は、そうは理解していない。

「原則は自宅療養」的な言い方だけが一人歩きすると、人々は不安に陥り、多くの批判を集め、政策選択において無駄な議論に忙殺される事態となる。

政府もメディアも、ここは状況を正しく説明し、最善の対応策は何かをエビデンスベースで議論・報道すべきだろう。

若者中心の新規陽性者の数が抑えられれば、それが一番である。しかし、それが現状ではすぐには叶わないなら、治療が必要な中等症の人たちのベッド確保は最優先課題だ。医療の円滑な実施こそが重症化や死者数増を防ぐことができる。

つまりマネージメント次第で最悪の事態は避けられる。繰り返しになるが、事実を正しく認識し、国民にわかりやすく解説した上で、納得のいく政策を機動的に打ち出してもらいたいものである。

(註)推定死亡率の定義:[推定死亡率]=[定義日~6日前(一週間)の死亡者数]÷(0.5×[10日前から23日前(2週間)の新規陽性者数]としている。

  • 執筆鈴木祐司

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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