信用できる医療機関一覧 「がん免疫療法」のインチキとホンモノ

トップドクターが実名証言、生還患者が体験告白

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現在、さまざまな免疫療法の臨床試験や研究が行われている国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)

「免疫療法と一口に言っても、その方法やバリエーションは実にさまざまで、多種多様です。残念なことに、その中にはきちんとした臨床試験を経ていないのに、あたかも高い効果があるように誇示して法外な治療費を取っているケースもある。それが『免疫療法』という言葉のイメージを悪くさせているんです」

そう語るのは、約30年にわたりがんの免疫療法に従事するトップドクター・福岡がん総合クリニック院長の森崎隆医師(60)だ。

今月1日、京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授(76)がノーベル医学生理学賞を受賞して以来、世間の注目を集めている免疫療法。本来ならばがんに画期的な効果をもたらすはずのこの治療法だが、同時に悪質なインチキ医師によるカネ儲けの手段になっている現実がある。

がんが進行し、主治医から「保険診療では、もう治療法がない」と告げられた患者が、藁(わら)にもすがる思いで詐欺まがいの免疫療法に走ってしまうケースは多い。まったく効果のない治療に数千万円を注ぎ込んだ末に患者は亡くなり、遺(のこ)された家族は生活もできないほど困窮してしまうという事態が起きているのだ。

「そのような紛(まが)いものの医療機関では、免疫療法や、がん治療の専門知識を持っていない人が、単なる営利目的で治療を行っていることすらあります。インチキな治療に引っかからないためには、ホンモノを知ることが重要です。たとえば、がんワクチン治療の場合は必ず血液検査やがん抗原検査(免疫染色)によって事前にワクチン治療が適応できるかどうかを調べます。また、私のクリニックで行っている『ネオアンチゲンワクチン療法』というオーダーメイドのがんワクチン治療(治療費は一回あたり15万円)では、患者さんのフレッシュながん細胞の提供が必要条件となる。何の検査もせずに”がんワクチン”と称し、来るものを拒まずで患者を受け付けているところこそ、注意が必要なんです」(森崎医師)

ホンモノの治療を行っている施設ならば、免疫療法のために培養した細胞の安全性と品質の管理も徹底しているため、副作用の心配もないのだという。

「免疫療法では、副作用として軽度の発熱や炎症の増幅などの症状が表れると言われています。ですが、培養した細胞をきちんと検査していれば、治療によって39℃以上の高熱が出ることはまずありません。よく『高熱が出ることが強力な免疫反応の証』だとうたっている医療機関がありますが、それは真実ではない。さらに、細胞を培養する施設と実際に投与する施設が異なると、品質が損なわれてしまいます。そのため、培養した細胞を数時間以上かけて別の施設へと持ち運び、そこで患者さんに投与するような医療機関も勧められません」(同前)

また、インチキとホンモノの見分け方で大事なのは、患者へのアフターケアだ。たとえば森崎医師の福岡がん総合クリニックでは、患者にワクチンを投与した後も、身体の中で免疫反応がきちんと起きているかを特殊な検査で確認している。免疫療法には、地道な検証が必要なのだ。

オプジーボでがんが消えた

森崎医師が先述するように、免疫療法はまさに多種多様。下の表では、その種類を一覧にしてまとめている。そして免疫療法は、適切に行われれば、がん患者にとって希望となることは紛れもない事実だ。そこで本誌は、免疫療法で使用されている新薬「オプジーボ」によって奇跡の回復を果たした生還患者の体験告白をインタビュー取材した。63歳の男性、平野幸司さん(仮名)は、「オプジーボがなければ、すでにこの世にはいなかった」と振り返る。

平野さんの左肺にステージⅣの肺がんが見つかり、「余命4ヵ月」の宣告を受けたのは5年前の春。肺の腫瘍は7㎝もあり、胸膜播種(胸膜にがん細胞が散らばった状態)を起こし、他の臓器にも広がっている可能性が高いと告げられた。

「若い頃から毎年検診を受けていたんですが、仕事が忙しくて受診を3年間空けてしまった時期があったんです。その間は、自覚症状もまったくなかった。それが久しぶりに検診を受けたら、とんでもない結果が出てしまった。目の前が真っ暗になりました……。すぐに入院して抗がん剤治療を始め、身辺整理に入ったんです。ですが、結局半年ほどで抗がん剤も効かなくなっていきました。ちょうどその頃、主治医からオプジーボの治験の案内を受けたんです」

これが、彼の運命を大きく変えることになった。

「はじめて説明を聞いた時は、少しでも可能性があるならば、何でもやってみたいという心境でした。オプジーボの投与が始まって驚いたのは、それまでの抗がん剤と違って副作用がなかったことです。気持ち悪さも吐き気も脱毛もなく、ケロッとしていられた。でも、治療効果が出る人は10人に2人ほどと聞いていたので、どうなるかは分かりませんでした。最悪の事態を考えて、外来治療に切り替わるタイミングで先生に相談し、家族との思い出作りにハワイ旅行へも行きました」

平野さんは覚悟を決めて人生の最期を迎える準備をしていたが、オプジーボ投与以来、肺の腫瘍は縮小していった。

「画像で見ると、かさぶたのような筋状のものがあるだけで、今はごく普通の日常生活が送れています。今日も釣り仲間と会ってきたところで、時々趣味の川釣りを楽しんでいます。オプジーボが免疫療法と知らずに受けたのですが、当時を振り返ると、本当に今が信じられません」

平野さんの治験責任医師である、KKR札幌医療センター院長の磯部宏医師(62)はこう説明する。

「通常の抗がん剤の場合、腫瘍が増大すれば治療は即中止しますが、オプジーボは投与から2〜3ヵ月で一時的に腫瘍が大きくなり、そこから縮小していくケースがあります。平野さんも、まさにそのケースでした。現在でも治療は継続中ですが、胸膜播種が消え、7×6.5cmもあった肺の腫瘍は線維化して瘢痕組織だけが残っている状態と考えます」

あと数年で劇的に進化する

オプジーボは現在、7種類のがんに保険適用となっている(表)。さらに、他の新薬(免疫チェックポイント阻害薬)との併用も始まるなど、まさに発展の途上にあるのだ。

「オプジーボは確かに劇的に効果が出て、快方に向かう患者さんがいます。その一方で、重篤な自己免疫疾患を引き起こし、それがもとで亡くなってしまうケースもある。まだまだ、”諸刃の剣”なのです。これからは、ネオアンチゲンワクチン療法とオプジーボを併用するなど、新たな治療法も期待されるところです。免疫療法は、今後数年で劇的に変わる可能性があります。私達も経験を重ね、より患者さんにとって有効な治療法となるように進歩させていきたいと考えています」(前出・森崎医師)

今、もっとも注目を集める治療である、免疫療法。下の表では、現在、免疫療法が受けられる医療機関をまとめている。怪しい治療法に惑わされることなく、ホンモノの病院を選択して欲しい。

「がん研究会がんプレシジョン医療研究センター」中村祐輔医師のもとで免疫療法研究が進むがん研有明病院
ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶特別教授の研究によって、一気に免疫療法への注目が高まった
中村医師によるがんワクチン療法により、がん細胞が死滅した決定的瞬間。この療法ではリンパ球ががん細胞を「敵」とみなして包囲し、総攻撃を仕掛ける
表は国立がん研究センターHPを基に作成。※の薬は承認後、1年未満の新薬。☆の薬は他の治療の補助として使用

PHOTO:AFP/アフロ

Photo Gallary6

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