内向きで閉鎖的…「日本型組織」はなぜ同じ失敗を繰り返すのか | FRIDAYデジタル

内向きで閉鎖的…「日本型組織」はなぜ同じ失敗を繰り返すのか

不正や隠蔽を繰り返す「組織」の問題点を2人のジャーナリストが徹底分析!

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かんぽ生命の保険不正販売の際、謝罪する経営陣ら

なぜ日本の企業や組織は同じような失敗を繰り返すのかーー。内向きで閉鎖的、上意下達といった性質を持ち、不正や隠蔽などの問題を起こし続けている。今年、そんな日本型組織の問題に切り込んだ、2作の著書が刊行された。

『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』の著者・藤田知也氏と、『保身 積水ハウス、クーデターの深層』の著者・藤岡雅氏という2人のジャーナリストによる対談の前編をお届けする。

●とにかく責任から逃げる幹部たち

藤田 『保身 積水ハウス、クーデターの深層』は、発売後すぐに読みました。積水ハウスの地面師事件や、その事件の責任を問われた社長が会長を追い落としたと言われる「クーデター」は報道で知っていましたが、『保身』には、その舞台裏が克明に描かれていました。

阿部俊則社長(当時)のクーデターによって事実上の解任に追い込まれた和田勇元会長をはじめ、何人ものキーマンが取材に応えていて、本当に面白かった。取材を始めた経緯はどのようなものでしたか。

藤岡 ありがとうございます。地面師事件が17年8月に発覚するとジャーナリストの伊藤博敏さんやノンフィクションライターの森功さんの取材でその実態が次々に明らかになりました。地面師とは地主を装い、他人の土地を勝手に売却し、そのカネを持って逃げてしまう詐欺師のことですが、その手法自体は高度成長期に使われたもので、なんとも古臭いものでした。

なぜ積水ハウスのようなハウスメーカーのトップ企業が、時代遅れの詐欺師たちにあっさりと騙されてしまったのかーーそこに強い疑念を持ちました。

藤田 そこで内紛が起きたわけですね。

藤岡 はい。18年2月に日本経済新聞の北西厚一記者が、取締役会のクーデターをスクープし、経営陣を批判する和田さんのインタビューまで掲載されました。当初、和田会長の退任と阿部社長の会長就任、仲井嘉浩新社長の就任は若返りの円満人事とアピールされていたので、大変なことになったと思いました。

藤田 それで、すぐに積水ハウスの本社がある大阪に向かった。

藤岡 ええ。しかし、積水ハウスの幹部たちに当たっても、みんな「守秘義務」を盾に語ろうとしない。広報の幹部にいたっては、つい最近まで実力会長だった和田さんのことを「何を勝手なことを言うとんねん、あのおっさん」みたいな物言いで批判している。全力で何かを隠そうとしているのではないかと感じました。

地面師事件をきっかけに権力争いが起きたことは明白でしたが、取材で明らかになったのは、クーデターの動機に、地面師事件の責任をとらされそうになった阿部社長の強い「保身」がうかがわれたことです。「保身なんかでクーデターを起こすのか……?」と思ったのが、この本を書くきっかけでした。

藤田 なるほど、そこからまさに積水ハウスの組織としての問題点に切り込んでいったわけですね。

藤岡 藤田さんの『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』も興味深い内容でした。上は責任を取らず、部下は厳しく罰せられる。積水ハウスもそうですが、日本郵政という組織のガバナンスに大きな問題があることがよくわかりました。

藤田 かんぽ生命の不正販売や内部通報制度の機能不全、ゆうちょ銀行の不正引き出し問題や投信の不正販売……近年の日本郵政グループの不祥事は枚挙にいとまがありません。当初は単純な不正勧誘かと思ったのですが、いざ取材をはじめてみると突っ込みどころ満載だった。郵政の経営陣は批判されると「配慮が足りなかった」とは認めるものの、自分たちの非は認めようとせず、抜本的な改革にも繋がらない。

それ以上に驚いたのは、幹部たちは、現場で起こっている事態を把握しているはずなのに、いざ問題になると、現場が勝手に暴走したかのように主張するのです。

藤岡 にわかに信じがたいことですね。具体的にはどういうことですか?

藤田 たとえば、かんぽ生命では、保険を満期よりも早く解約し、再び契約することで手数料を荒稼ぎする手法が横行していたのですが、こうした問題がありそうな契約を集計し、『募集品質データ』として幹部で共有していたのです。疑わしい契約は月に数千件も発生していて、それらが問題発覚後は不正のおもな調査対象となった。ところが幹部たちは「問題のある契約がまさかこんなにあったとは!」と驚いた表情をして見せるのです。

藤岡 なかなかの演技派ですね(笑)。

藤田 私が「いやいや、あなた知っていたでしょ? データを共有して問題を認識していたじゃないですか」と質問しても、「これは現場の郵便局員を指導する目的のデータであって、実態把握をするものではない」と苦しい言い訳を並べる。ところが、「経営陣が必要な措置を取らなかったのか」と聞かれると、「きちんと対策は打っていて、それで改善すると思っていた」とも言い出す。だったら問題を認識していたということになるんですがね……。

一事が万事、言葉遊びのような言い訳が多くて議論が進まない。こうして管理職以上は軽い処分で済ませるのですから、結局は保身の塊のような組織なのでしょう。こんなことが次から次へと出てくるので、いつの間にか本ができるくらい情報が集まってしまったのです。

積水ハウスの阿部氏(右)と和田氏

往生際が悪すぎる

藤岡 なぜ郵政は言葉が通じない幹部たちばかりになったのでしょうか?

藤田 たぶん上が言うことは否定してはいけないという思想に支配されていて、経営陣の発言や主張をファクトや実態よりも優先させてしまう体質があるからでしょうね。だから屁理屈を並べる釈明が生じやすい。役人由来の「ミスがあってはならない」という思いも強いのかもしれませんが、いまは「ミスは認めない」体質に変貌している。

藤岡 藤田さんは18年に起きた「かぼちゃの馬車」をめぐるスルガ銀行の不正融資問題も取材し、著書も出されましたよね。スルガ銀行と比較すると、どうですか?

藤田 問題発覚後にたどった経緯が、大きく違いましたね。スルガ銀行の不正融資問題では、調査が進む過程で経営陣が観念し、不正を認めて一から出直そうとする姿勢が見えました。企業で組織的な不祥事が起きたとしても、事実に向き合い、問題があったと率直に認められれば、組織はその後、復活を遂げるチャンスがあります。

ところが日本郵政グループの場合はなかなか観念しない。「決定的な証拠がなければ、非は認めない」という意思が強く、それが墓穴を掘って問題をさらに深刻化させる原因になっています。

往生際の悪さについては、積水ハウスもかなりのでしたが、どうでしょうか?

藤岡 クーデターまで起こしちゃうんですからね(笑)。しかも人事権を振りかざす社長の保身に与した社内役員が多数派を占めてしまった。組織ぐるみの往生際の悪さが際立っていました。その後、社外役員によって作成された地面師事件の阿部社長の責任を指摘した「調査報告書」を徹底して隠ぺいしていくのですが、社員としてはこういう経営者がトップに就くと絶望的ですよね。まともな組織改革なんてできませんから。こうして執行役員や支店長クラスが何人も積水ハウスを離れました。

藤田 確かに。普通は社外役員から調査報告書を突きつけられた時点で観念しますよね。謝ってしまえばそこで終わってしまう話であるのに、頑張っちゃうところがすごい(笑)。

それにしても地面師事件では、本物の地主から「取引している相手が違いますよ」と内容証明が届いているのに、詐欺師との契約を強行しちゃったというのは不思議ですね。

藤岡 本物の地主からの内容証明だけでなく、地面師グループ自身も、取引の過程でいくつものミスを繰り返していました。地主に扮した地面師グループのひとりが、地主の誕生日や干支を間違えるといった初歩的な間違いをおかしたのに、取引は止まらなかった。

ましてや決済の当日には、測量のために不動産に入った積水ハウスのスタッフが、本物の地主の通報でやってきた警視庁の警察官に任意同行まで求められているのです。それなのに地面師に55億5900万円も払ってしまった。

藤田 調査報告書では、そうした積水ハウスが詐欺だと気づけたはずのポイントが「9個」もあったと指摘しているんですよね。

藤岡 そうなんです。現場がそうしたアラートを無視して契約に突き進んだのは、阿部社長が、現地を視察したり、稟議書に急いでハンコを突いて、この取引に求心力を与えたからです。「社長案件は絶対に成約しないといけない」という力学が働いたのでしょう。積水ハウスという日本的組織の問題が表れた、象徴的な例だと思います。

(後編に続く)

  • 話者藤田知也

    早稲田大学大学院修了後、2000年に朝日新聞社入社。盛岡支局を経て、02~12年、「週刊朝日」記者。19年から経済部に所属。著書に『強欲の銀行カードローン』(角川新書)など

  • 話者藤岡 雅

    拓殖大学政治経済学部卒。編集プロダクションを経て、2005年12月より講談社『週刊現代』記者。福岡のいじめ自殺事件やキヤノンを巡る巨額脱税事件、偽装請負問題などを取材

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