果実よりヘタがお宝!「捨てられるほう」のスゴい効用 | FRIDAYデジタル

果実よりヘタがお宝!「捨てられるほう」のスゴい効用

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あの「イベルメクチン」だって土の中に眠っていた!?

新型コロナの治療に効果が期待されると話題のイベルメクチン。あれ、実はゴルフ場の土の中から採ってきた、放線菌という微生物がつくり出す成分。

土にしろ植物にしろ、自然というのは宝の山だ。とんでもないものが、どこに眠っているのかわからない。たとえばフルーツの、いつも食べてる甘くておいしい部分、実は成分的には“ハズレ”だと聞いたら驚くだろうか。

「良薬は口に苦しと言いますが、“食べておいしくないところ”には有効成分がたくさんあります。食べずに捨てちゃうところに宝の山があるんです」と言うのは、九州大学農学研究院の清水邦義准教授。自他ともに認める自然界のトレジャーハンターだ。

苺のヘタや甘夏の葉、あるいは間引かれた青い実。そんな“残りかす”には、どうやら機能性成分がてんこもりらしい。一体どんなお宝が眠っているのだろうか。 

いつも食べてる甘くておいしい部分、成分的には“ハズレ”!?

九州が誇るブランド苺「あまおう」の“捨てる”部分を調べてみると…

宝探し。それはインスピレーションでチョイスした対象を、徹底的に分割するところから始まる。まずは「あまおう」をこれでもかというほど分けまくる!(下図参照)

赤い実の部分以外はすべて残渣。いわゆる「捨てちゃうところ」である。こうして細かく分けた上で、それぞれの有効成分を調べていくと…

私たちが普段食べているのは甘くておいしい赤い実の部分だけ。けれど、茎、茎根、蔓、蔓葉というように細かく分割して成分を調べてみると、有効成分が一番少ないのは実の部分だということがわかったのだ!

「抗リパーゼは抗肥満効果が期待できるところですが、実の部分にはほとんど活性がありません。抗菌活性も抗アレルギーも同様でした。メラニン生成というのは抑制すれば美白効果、促進すれば白髪の予防になりますが、赤実はそのメラニン促進抑制と、老化を防ぐ抗酸化作用の部分に出てくるのみです。表組で見ていただくと明確に、食べられていない部分に活性があることがわかります」(清水邦義先生 以下同)

おなじみの「あまおう」にこんなにもたくさんの有効成分があり、しかもほぼ捨てられているなんてちょっとショック!

甘夏でも同様の分析をしてみると、やはり果肉より残渣の方が非常にたくさんの活性があり、中でも抗酸化作用が大きかったのは葉っぱと外皮、内皮の部分だったという。さらに温州ミカンでは、間引いて捨てられる青ミカンにはアロマにも使われるリナロールという香り成分の含有量が非常に多く、成熟したミカンにはほとんど含まれていないことがわかった。

「おいしさと機能性はトレードオフのような関係になっている場合が多々あります。私たちはどうしてもおいしいところだけを追求するけど、例えばミカンなら、リナロールという機能性成分がほとんどなくなった実を食べているんです。

おいしいだけではなく、健康や癒やしも考えていくと、機能性食品やサプリ、化粧品などに応用できるものはたくさん隠れている。それを上手に見つけていけば、役に立たない天然素材というのはないんですよ」

「婆ちゃんの知恵袋」。それは最新科学への入り口だった!

「例えばタケノコの皮。古来より、日本ではおにぎりを包むのに使われたりしていますよね。中国ではお茶の風味を維持するための包装用としても使われていました。なぜだろうと思って調べましたが、論文は一切ありませんでした」 

九州にはタケノコの産地が多く、全国の約7〜8割のタケノコを生産している。けれど可食部位は収獲量の50%で、残り半分は捨てられているのだ。 

「今は安心安全な抗菌剤が求められています。もしかするとタケノコの皮は何らかの抗菌活性を有しているのではないだろうか。そんなモチベーションで調べると、スティグマステロールやデヒドロブラシカステロールという抗菌活性物質があることが明らかになりました。やはりプラスαの効果があって使われていたんです」 

婆ちゃんが「スティグマステロール」だの「デヒドロブラシカステロール」といった舌を噛みそうな成分を知っていたとは思えない。だが「竹の皮で包むと腐りにくい」という正解には、とうの昔に辿り着いていたのだ。婆ちゃん恐るべし

噂や伝承はあなどれない。熊本の米農家には、稲の成長を促進させるため、水田にタケノコの皮を撒くという伝承があるようだ。

「これも調べてみると、タケノコの皮に1−トリアコンタノールという植物成長物質が含まれていることを見つけました。

竹は現在、放置竹林などが問題になっていて、付加価値の高い使い方がなされていません。けれどいろいろな部分の生理活性を調べたところ、表皮の緑色の部分には非常に高い美白活性があり、ヒアルロン酸産生の促進効果も示唆され、さらに皮膚の弾力を保つコラーゲンを高める効果もあることがわかりました。

これは既に実用化され、化粧品に使われています。要するに、いったん道筋さえ作ってしまえば捨てられたりせず、一気に商品化まで行くということです」

『炭素固定』、燃やしたり捨てたりせずに、自然の恵みをそのまま使い切るという考え方 

農作物の廃棄物は、燃やせば二酸化炭素を排出し、地球温暖化の原因となる。海に捨てれば海洋汚染につながる。地球環境を考えても、なんとかしたいところなのだ。

「今は脱炭素とかSDGsと言われています。天然資源をゴミとして燃やすのではなく、形を変えて私たちの生活の中に取り入れたなら、結果的に炭素放出量を下げることになります。

『炭素固定』というと森林を増やしたりするイメージが強いですよね。確かにそういう大きな取り組みも大切ですが、与えられた森林資源や農産物を私たちの生活に役立て、使い切るということも、ひとつの脱炭素社会ではないでしょうか。脱炭素社会と消耗品は、徹底的に関連するんです」

「捨てちゃう部分」の活用は、社会貢献や福祉にも繋がる!

「長崎はビワの産地です。そして山ばかりです。農家の方たちは高齢化が進んでいます。そしてビワの木から実をとるのは案外重労働です。けれど実と同じくらい、葉に付加価値をつけて販売することができれば、葉を取るほうがよっぽど労力が少ないんです」 

ビワの葉には抗炎症作用があり、骨粗鬆症にも効果的だ。近年は美白効果、保湿効果にも有用なことがわかってきた。

「ビワの葉に価値があるとなれば、これまで実を収獲するために作っていたビワ農家の価値観がすべて変わってしまう。葉を作るためのビワの木に生まれ変わる。それによって農家の高齢化にも対応できます。ビワ茶を作る肯定で大切な、葉裏の繊毛を取る作業を身体障がい者施設の方々が行うことにより、福祉にも貢献できます」

こうして九州大学の協力のもと、福祉に理解のある健康食品会社から売り出されたびわ茶は、味も好評で人気が高いという。

株式会社スカルパが九州大学にその効能等の研究を依頼しているびわの葉を使用した「長崎ゆめびわ茶」。エグミの原因となる葉裏の繊毛は、障がい者就労支援施設「三和ゆめランド」の方たちにより手作業で丁寧に取り除かれ、すっきりとした飲み口に

人間はみな骨や血、肉などからできているが、それぞれに個性がある。同じように植物だって、みんな違う個性を持っているのだと、清水先生は言う。

「廃棄物や未利用の植物は生物由来の再生可能な資源、つまり『バイオマス』です。その有効活用には、それぞれの植物が持つ個性を見出すことが非常に重要です。人間だって、自分の子どもだったらなんとかしていいところを見つけようとするでしょう? すると必ず何らかの才能を見つけることができる。人材育成と同じようにとらえると、わかりやすいと思うんですよ。バイオマスの中にだって、まだまだ大谷翔平選手がいるかもしれないですから」 

大谷翔平選手とともに浅田真央ちゃんも大好きな清水先生。「大谷選手のような、真央ちゃんのような…」世界中が喜ぶ逸材を求め、今日も気が遠くなるような数の天然素材を分析し、トレジャーハンティングを続けている。

清水邦義(Shimizu Kuniyoshi)九州大学農学研究院 森林圏環境資源科学研究分野 准教授・博士(農学)。地球上に何万とある天然素材の個性を見つけ、健康と持続可能な社会のために活かすことを目標とし、日夜研究を続ける。「日本木材学会 日本木材学会賞」(2014年)ほか、受賞歴多数。

  • 取材・文井出千昌

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