五輪やコロナで四重苦!それでも好調な夏ドラマの「意外な共通点」
波瑠、小芝風花、二階堂ふみ、永野芽郁、 比嘉愛未、白石麻衣、新木優子…… 女優たちの視聴率争いも熱い!
東京五輪とコロナ禍に翻弄されるなか、良作ドラマが続出!
夏休みで視聴者の在宅率が大きく低下するため、「7月スタートの夏ドラマは数字が取れない」というのが業界の常識だ。ゆえにイメージを大事にする大物俳優は出演を避けるのだが、「そこにコロナと東京五輪が加わった今クールは四重苦」だと民放編成担当は自虐的に笑う。
「TVerなどの見逃し配信も、五輪で放送スケジュールがイレギュラーになるから忘れられがちで……そんな状況下で気を吐いているのが『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ系)。見逃し配信が歴代トップクラスの再生数を誇っているというから大したもの」
人気漫画が原作で、作者は実際に交番勤務もしていた元警察官。ライターの大山くまお氏らウォッチャーも「今クール一番のオススメ」と口を揃える。
「交番勤務の女性警察官のリアルな日常が描かれています。凄腕警察官の戸田恵梨香(32)と後輩の永野芽郁(めい)(21)のバディ感、先輩後輩感も素晴らしいですし、脇を固めるムロツヨシ(45)らも芸達者でいい。良質な職業モノでもあり、男社会の中のシスターフッド(女性同士の連帯)を描いた作品でもあります。今後シリーズ化に期待したい作品です」
「戸田の転機になる」という声も。
「彼女が〝天海祐希&木村佳乃の後継者たり得るか〟の試金石的作品として注目しています。美貌の女優だけど、美貌売りをしない『姉御的ポジション』に立てるかどうか注目です」(放送作家)
永野が新型コロナに感染して、ドラマの進行がストップしたことも、かえって注目を集める一因となった。
「ただ、現場の被害は甚大でした。どれだけ余裕をもってスケジュールを組んでも、ひとたび感染者が出たらすべて組み直し。何話か削減して放送するなどの帳尻合わせの必要性まで出てくることがわかった」(キー局プロデューサー)
シングルファーザーとシングルマザーたちがSNSで知り合って一つ屋根の下で子育てをするという新しい家族の形を描いた『#家族募集します』(TBS系)は「昔ながらの下町の人情とSNSやシェアハウスという新しい要素が結びついて、どのようなドラマになっていくのか楽しみ」(大山氏)と期待大だったが、仲野太賀(たいが)(28)の感染で危機的状況にある。
「大幅な撮影スケジュール遅延に五輪中継が重なり、第2話から第3話まで1ヵ月も空いてしまうという異常事態に。TBSドラマ部には、早くも厭戦(えんせん)気分が漂っています……」(TBS関係者)
医療ドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)に出演していながら、田中圭(37)は大人数での誕生パーティに参加して感染するという致命的なミスを犯したが、「スケジューリングの妙で救われた」と制作会社スタッフが苦笑いする。
「3月から撮り始め、7月中旬にはクランクアップしていたから、影響なかったんですよ。不幸中の幸いです(笑)。ただ、ドラマ自体は『コード・ブルー』など過去のフジの医療モノと比べると小粒。ヒロインの波瑠(はる)(30)はどんな作品でも平均点は出すけど、印象に残らない。彼女の代表作、思い浮かばないですよね?」
深田恭子(38)の緊急降板により『推しの王子様』(フジ系)で代打に立ったのは、比嘉愛未(まなみ)(35)。これまで優等生的な配役で脇に立ってきた彼女が、いかに化けるかが注目されたが——。
「ゲーム会社の社長(比嘉)が、自身が手がけた乙女ゲームの推しキャラにそっくりなイケメン(渡邊圭祐・27)を理想の男に育てるというコメディ。深キョン仕様だなと思わせるセリフが随所に見られ、比嘉のキャラではミスマッチ感がぬぐえず……。ずっと視聴率的に苦戦している放送枠で本作の数字も振るっていない。主演の顔ぶれを替えるとか、攻めたドラマ作りをして注目してもらわないとジリ貧ですよ」(前出・プロデューサー)
本作で唯一、「攻めていた」のがイケメン役を演じる渡邊の起用だろう。フジは彼と同じく『仮面ライダー』出身の赤楚(あかそ)衛二(27)を『彼女はキレイだった』に投入しているが、若手イケメンはいま業界注目のコンテンツである。
「赤楚は昨年出演した『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)で、多くの女性ファンを獲得しました。独占配信しているTSUTAYA TVの視聴ランキングはずっと1位。加入者増加に大きく貢献しています。テレ東は早くから配信サービスに注力していて、この7月の月間再生回数は民放トップです」(制作会社スタッフ)
〝花より男子〟の時代が来るか。
フレッシュなキャスティングや大胆な戦略で「試行錯誤の夏」
現場泣かせの夏ドラマにもメリットはある。どうせ数字が取れないなら——と大胆な戦略やキャスティングを試せるのだ。『漂着者』(テレビ朝日系)もそのひとつ。
「『TRICK』など尖(とが)った作品を送り出した〝ナイトドラマ〟枠に秋元康の企画&原作&脚本作品を持ってきた。全裸で海岸に漂着した謎の男ヘミングウェイ(斎藤工(たくみ)・39)はまるで、キリストのよう。わけのわからない面白さに注目です」(ドラマウォッチャー・北川昌弘氏)
謎多き展開で、最終話までSNSやネット民が犯人予想で盛り上がった秋元作品『あなたの番です』(日本テレビ系)の成功よ、ふたたび——となるか。
「白石麻衣(28)の演技にも注目。ミステリーのヒロイン役はありましたが、純粋なラブストーリーには出ていない。秋元氏のお手並み拝見ですね」(民放編成担当)
『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)は、経費節減が進むなか野外ロケ必須の医療事件モノを扱ったそのスケール感が評価されている。
「鈴木亮平(38)が演じる主人公・喜多見のテキパキ感が小気味いい。都知事(石田ゆり子・51)と厚生労働大臣(渡辺真起子・52)の対立構造など、キャスティングが豪華で話の軸もいろいろある。菜々緒(32)の存在感も抜群」(北川氏)
ありそうでなかった「戦隊もの」×「ジャニーズ」を実現させたのが『ザ・ハイスクールヒーローズ』(テレ朝系)だ。
「主演は『美 少年』の6人。テレ朝が囲い込みに躍起になっている人気ユニットなんですが、意外にもハマッている。騙(だま)されたと思って見て損はない」(放送作家)
ジャニーズで言えば、『Sexy Zone』の中島健人(27)も小芝風花(24)と『彼女はキレイだった』で共演しているが、前ページで紹介した赤楚のほうに注目が集まっている。女子高生からの熱烈支持をバックに眞栄田郷敦(まえだごうどん)(21)が相手役に抜擢された『プロミス・シンデレラ』(TBS系)も苦戦中だ。
「ヒロインの二階堂ふみ(26)自身が原作漫画のファンで意気込んでいたのですが……設定も脚本も大人の鑑賞には耐えないレベル」(キー局プロデューサー)
業界屈指のイケメン、中川大志(23)が主演する『ボクの殺意が恋をした』(日テレ系)は「警察の殺し屋組織に所属するヒットマンがターゲットに恋をする、という設定がファンタジー」だと制作会社スタッフが呆(あき)れる。
「新木優子(27)は映画『悪と仮面のルール』のヒロイン役がミステリアスで、期待したんですが……あの映画はセリフが少なかったからよかったのかな」
若きイケメンの躍進が今年の「夏ドラマ」の特徴だが、テレビ局が重視するコア視聴率との相関関係は見えていない。
「見逃し配信やサブスクの視聴者は、DVDなど関連グッズ購入にも積極的で購買意欲が高い。局やスポンサーの最重要ターゲットです。今後はコア視聴率より、永野のように配信で人気の俳優が重視されるでしょう」(民放編成担当)
コロナを経てドラマも変わるのだ。
『FRIDAY』2021年8月20・27日号より
- 撮影:近藤裕介、小川内孝行(田中、中川)