とにかくムチャクチャだった!東京五輪「トホホ舞台裏」ルポ | FRIDAYデジタル

とにかくムチャクチャだった!東京五輪「トホホ舞台裏」ルポ

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取材をする松岡修造と、応じる八村塁選手。予選3戦で67得点とチームを牽引するも、悔しい予選敗退となった
取材をする松岡修造と、応じる八村塁選手。予選3戦で67得点とチームを牽引するも、悔しい予選敗退となった

8月8日に幕を下ろした東京五輪。7月24日から本格的に始まった五輪取材を振り返るーー。

日本武道館で行われる柔道男子60㎏級の試合を前に、本誌記者キシモトは遅刻の大ピンチに陥っていた。

というのも、報道拠点である東京ビッグサイトからメディア専用バス乗り場に向かったが、誘導の張り紙がなく、案内をお願いしたスタッフにも情報が正しく伝わっていなかったようで、まったく別の都営バスに乗り場を案内されれてしまったのだ。汗だくになりながら1㎞以上全力疾走するも目当てのバスには乗れず。到着したのは試合開始ギリギリだった。

国際空港並みに厳重な手荷物検査を終え会場内に入ると、無観客のはずなのに応援の声が聞こえてくる。各国とも競技スタッフやメディア関係者が一ヵ所に集まり、急造の応援団を結成していたのだ。

初めて観た金メダルは柔道男子の高藤直寿選手。彼は控え室に戻る通路で、スタッフら20人ほどからのねぎらいの言葉や記念撮影の申し出に一つ一つ対応していた。その謙虚な姿勢に感動しながら、無事初日の取材を終えた。

その後も連日のように猛暑日を記録する灼熱の東京を駆け巡り、卓球混合ダブルスの”みまじゅん”ペアや男女スケートボードの快挙を取材。その一方で胸に残ったのは日本選手たちの悔し涙だ。

予選敗退が決まった男子バスケットボールの会場では、テレビ朝日のレポーターを務める松岡修造と、取材に応じる八村塁選手、さらにキャプテンの渡邊雄太選手を発見。「あきらめない姿勢を貫けた。悔いはない」と前を向く八村選手に対し、インタビュー中に堪(こら)えきれず涙を流す渡邊選手。五輪に懸ける熱意をあらためて垣間見た瞬間だった。

無観客とはいえ、会場にはさまざまな著名人が姿を現す。武道館では兄妹で金メダル獲得を果たした阿部一二三選手・詩選手を従えて観覧するIOCのバッハ会長を目撃。とくに詩選手に興味津々の様子で、頻繁に話を振るなど、終始ご満悦の様子だった。

女子トランポリン決勝では橋本聖子大会組織委員会会長の姿を発見した。試合後には競技関係者と近距離で5分ほど話し込む場面もあって、感染対策は大丈夫なのか、と心配になった。また、スタッフと談笑しながらもバスケを真剣な表情で観戦する相葉雅紀も発見。さすがビッグアイドル。オーラが違う。

各所で上がる不満の声

取材を進める中で一番驚かされたのが、8月1日に男子100m決勝が行われた国立競技場だった。入るや否や目につくのは人、人、人! 約7万人収容のスタジアムの10分の1は埋まっていた。

競技スタッフも合わせれば、1万人はいただろうか。記者席はもちろん満席で、通路や階段まで人で溢(あふ)れている。走り高跳びの決勝では、選手の助走に合わせて関係者も両手を打ち鳴らしてリズムを取り、新記録が出れば地鳴りのような大歓声が上がる。熱狂は100m決勝でピークを迎え、試合後のミックスゾーンは押し寄せた各国のマスコミで超過密状態だった。

さらに100mを制したイタリア代表選手を祝福すべく、同国のメディア関係者十数名が柵を乗り越え取材禁止エリアへ侵入しようとする事態が発生。

「入っちゃダメ! 入っちゃダメ!」

というスタッフの叫び声がこだまする大混乱は、侵入した数名のイタリア人が強制退去させられ、なんとか収束した。

現場対応に追われたスタッフの一人に話を聞くと、苦笑いしながらも苦労を聞かせてくれた。

「こんなトラブルはたくさん起きています。決勝戦が増えてくる大会後半は、もっと増えるんじゃないかと思うと怖い。仕事がイヤになりそうですよ(笑)」

会場内ですれ違うスタッフからも、

「連日深夜まで居残り残業だよ」

「忙しくて晩御飯食べられなかった」

といった不満の声が聞こえてくる。

一方で、外出制限や緊急事態宣言によるアルコール提供の禁止への鬱憤(うっぷん)が、外国人選手の間で溜(た)まっているようだ。

選手村を訪れた際には、堂々とセキュリティーゲートから出て近くのコンビニでアルコール類を購入する選手たちを目撃。パンツの裾(すそ)には星条旗が入っていた。ほかにもコンビニ内にはスペインやイランの表記が入ったIDを提げた選手らしき男性の姿もあった。また東京ビッグサイト周辺では、夜9時過ぎまで路上飲みに興じるメディア関係者らしき外国人5人組に遭遇。こうした状況に運営陣は今後、どう対応していくのだろうか。

海外から見た東京五輪

8月2日夕方、取材を終えて東京ビッグサイト近くのコンビニへ。するとパソコンをレジ付近に置き忘れて出て行ってしまった女性客がいた。追いかけて渡すと「メルシー」と一言。目鼻立ちのはっきりした黒髪のフランス人美女だった。そのままコンビニのイートインスペースで話すことができた。聞くとロンドンから3大会連続で取材しているという。

「東京大会はルールが多すぎるわ。会見は入場規制で満足に入れないし、ホテルと会場以外は外出禁止だし……。ワクチンをちゃんと接種しているんだから、もう少し自由に活動させてほしいわ」

――やはりフランスでは東京五輪に否定的な報道が目立つんですか?

「そんなことはないわ。開催したこと自体は肯定的に報道されています。日本のメダルラッシュに驚く記事もあったわ。ただ東京の感染者数が増加していることは問題視されているわね」

――次はパリ五輪だけど、東京はよいモデルケースになっている?

「あんまりかもね(笑)。そもそも3年後にコロナがどうなっているかなんてわからないし。もし無事に開催されるようなら、今度はパリで会いましょう」

グーグル翻訳に日本語を打ち込み、表示された英語を見せるという方法で、最後には連絡先もゲット。早速その夜、お礼も兼ねてメールをしてみたが……残念ながらいまだに返事は返ってきていない。

幕を下ろした東京五輪。アスリートが与えてくれた感動の裏には、普段の五輪とは異なる現場ならではの”異質な空気感”があったーー。

記者で溢れる100m決勝当日の国立。なかには「勤務は終わったが、自分だけ帰るわけにはいかなくて」と自主残業するスタッフも
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バスケを観戦する相葉。NHKのレポーターとしても活動し、大逆転を果たした卓球混合複の準々決勝も取材した
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橋本会長は、混迷する大会でも懸命に競技に挑む選手たちを見て、何を思ったのだろうか
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どの会場でも金メダリストにはマスコミが殺到。取材とはいえ、かなりの「密」具合だ
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コンビニで買い物する選手。近場のスーパーでも、ビールなどのアルコール飲料を購入する選手の姿が見られた
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『FRIDAY』2021年8月20・27日号より

  • 撮影結束武郎(6枚目)

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