金正恩が思想徹底に躍起 軍幹部を震撼させた「処刑動画」の中身 | FRIDAYデジタル

金正恩が思想徹底に躍起 軍幹部を震撼させた「処刑動画」の中身

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今年7月。軍の指導講習会で幹部たちに歓迎される金正恩氏。笑顔とは裏腹に動画公開で厳しい姿勢をみせた(画像:KNS/KCNA/AFP/アフロ)
今年7月。軍の指導講習会で幹部たちに歓迎される金正恩氏。笑顔とは裏腹に動画公開で厳しい姿勢をみせた(画像:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

〈女性兵士を抱き上げ、社交ダンスだの、タンゴだの、(K-POP)アイドルダンスだの……。醜悪にも尻を振り続け、許されざる反党、反国家的な罪を犯した〉

辛辣なナレーションとともに紹介されたのは、朝鮮人民軍幹部の処刑だ。「革命の名のもとに」、断固とした厳罰が下されたという――。

指導者・金正恩氏が軍の総政治局宣伝扇動部に作らせた動画が、北朝鮮国内で波紋を呼んでいる。映像は30分ほど。冒頭は、解説者のこんな言葉から始まる。

〈チュチェ(主体)思想と社会主義精神で一色化し、軍内の反社会主義的行為が浸透できないように強力な闘争を断行しなければならない〉

金正恩氏が動画で警鐘を鳴らそうとしたのは、風紀の乱れ。特に韓国や米国のカルチャーに感化された、「反社会的主義的行為」だ。映像では、実際に罪を犯した実例が紹介されている。

〈連合部隊政治部の指揮官チェ某という輩は、党と首領(金正恩氏のこと)に任された責任ある地位を、生まれ持ったモノであるかのように考えていた。誕生日の宴会を5年ごとに開いていたのだ〉

慌てて自己批判書提出

北朝鮮において、整周年(5や10で割り切れる年)に行われるイベントはとても重要だ。誕生日を祝えるのは最高指導者だけ。紹介された「指揮官チェ某」の行動で特に問題視されたのが、今年5月の宴会だという。動画の存在をイチ早く把握した、『デイリーNKジャパン』編集長・高英起氏が語る。

「新型コロナウイルスの防疫規定で、人が集まることは禁じられていますからね。にもかかわらず、部隊の兵士を募って宴会を開いたんです。しかも資本主義に染まった退廃的な曲を演奏させ、歌って踊っていたとか。K-POPなどを流していた可能性があります」

動画では「チェ某」だけでなく、5人の指揮官が派手な服装や言動で腐敗、堕落したと指摘。一家もろとも政治的、法的処分を受け、処刑された者もいるという。高氏が続ける。

「動画を見させられた軍幹部たちは、震えあがっていますよ。自分もいつ処刑されるかわからないと。家族や部下が反社会主義的行為をしていないか、厳しく点検。動画を作成した総政治局の指導通り、慌ててすぐに自己批判書を作り提出しています」

取り締まりが行われているのは、軍だけではない。今年1月に行われた朝鮮労働党党大会で、金正恩氏が民衆への徹底を強調した新しい法律がある。「反動的思想・文化排撃法」だ。

「新法は、外国のコンテンツの取り締まりをより強めています。法律には、以下のような違反事例が記されている。〈該当する物を視聴または保管した者は、1万北朝鮮ウォン(約170円)から5万北朝鮮ウォン(約850円)の罰金を課す〉と。罰金は日本円に換算すると軽く感じるかもしれませんが、北朝鮮の人々にとっては相当な負担です」(高氏)

一方で、こうした動きは金正恩氏の焦りともとれる。

「北朝鮮で、韓国のドラマや映画が浸透しているのは周知の事実です。正恩氏は、その流れをなんとか防ごうと躍起なのでしょう。国家は、決して軍事力や政治的圧力だけで倒れるわけではありません。外国の文化が流入し、徐々に国民の意識が変わっていくことが遠因です。北朝鮮でも自国にとって都合の悪い作品が、ジワジワと人民の間に広がっている。正恩氏の危機感が強いことを表しています」(高氏)

いくら取り締まり動画や法律を作っても、現代のデジタル社会では外国からのコンテンツ流入は避けられない。処刑で国民を脅す手法は、もはや時代遅れになりつつある。

  • 写真KNS/KCNA/AFP/アフロ

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