「クズ芸人の先駆者」とろサーモン久保田が明かす芸風の核心 | FRIDAYデジタル

「クズ芸人の先駆者」とろサーモン久保田が明かす芸風の核心

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なぜ久保田は、魑魅魍魎の芸能界で何度も這い上がれるのか

現在、安田大サーカス・クロちゃん、コロコロチキチキペッパーズ・ナダル、岡野陽一など、サイコ、性悪、借金癖といった一面を持つ“クズ芸人”がバラエティーを賑わせている。その先駆者とも言える存在が、とろサーモンの久保田かずのぶだ。 

早い段階で関西の賞レースを総なめし、「M-1グランプリ2017」で優勝を果たすなど輝かしいキャリアを持つ一方で、インスタライブでの不用意な発言をきっかけに露出が激減したりと、浮き沈みの激しい芸人としても知られている。 

なぜ久保田は、魑魅魍魎の芸能界で何度も這い上がれるのだろうか。大阪時代に培われた“リアル”な笑い、SNS時代における芸人の是非など、彼が放つ魅力の核心に迫る。 

「どうしても伝えたいワードがあるなら、弱火くらいの炎上なら思ったことは言います。感情を押し殺してまでこの仕事しようとは思わないんで…」(撮影:スギゾー。)

「久保田って本当はこんなヤツなんだ」

――ここ最近、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、『マッドマックスTV』(テレビ朝日系)といった番組で活躍されています。ご自身では、なぜ需要が増えていると思いますか?

久保田かずのぶ(以下 久保田):YouTubeをやり出してから、世間の人が僕に抱いていたイメージが全然違かったみたいなことじゃないですか。これってナダルとか“クズ芸人”って呼ばれてる人たちに多い現象みたいで。YouTubeはデカいかもしれないですね。ありがたい話です。 

テレビで僕が言うことって、過激な単語だけ切り抜かれてテロップになったりするんですよ。本当は前提として「なんでそんなことを言ったのか」っていう流れがあるんですけど、テレビじゃ表現でけへんっていうか、させてくれへん。でも、YouTubeだと全部見せられるから、視聴者が「久保田って本当はこんなヤツなんだ」っていう紐付けができるようになったんだと思います。

――Amazonプライム・ビデオ『ドキュメンタル』シーズン9の優勝後、獲得した賞金で『とろサーモン久保田、テレビ局の枠を買う。』(千葉テレビ)をスタートさせています。こちらも大胆な使い道で久保田さんらしいですね。

久保田:ある作家さんと、キャリーオーバーになった賞金の2000万で何かやろうって話をしていて。その中で僕のほうから「どっか番組買い取れないですかね?」って提案をしたら、作家さんが千葉テレビの人を紹介してくれたんですよ。 

もちろん僕の希望通りやれてるし、アプローチの仕方、トレンドやトピックスを含めて、世間に向けての出し方はこれでいいのかなと思ってます。TVerで見られないっていうのがいいんですよね。東京のキー局ではできないリアルなことがやれますから。何かあればお偉いさんに頭下げて終わりですよ(笑)。

42歳まで生きてきたノートの分厚さが違う

――これまで、離婚や東京進出時の苦労、インスタライブの炎上など、いろいろと壁があったと思います。ただ、すべてプラスに転じているのがすごいですよね。

久保田:僕の場合、起こった出来事は芸に昇華することしかできないんですよ。不器用なんで、それしかできない。揉めて事件が起こったって、僕は平気で舞台で言いますもん。「おい、失礼だろ!」って方もいないし、何よりお客さんが笑ってくれますからね。 

――現在、クロちゃんさん、ナダルさん、岡野陽一さんなど“クズ芸人”と呼ばれる芸人さんが大活躍しています。その先駆者とも言える久保田さんだけが、大きなダメージを受けてきた気もしますね。

久保田:僕はやっぱり“リアル”なんですよ。嫌なものは嫌だし、叩かれたら「やめろや!」って言いますから。ナダルとかは何も言わないでしょ。あいつは芸能界という瓶にホルマリン漬けにされて、世間に反抗したら瓶ごと捨てられると思ってる意外と臆病な人間(笑)。僕は水中からでも手ぇ出して「おい、ここにいるぞ!」ってタイプ。意思表示してるのが一番違うのかな。 

どうしても伝えたいワードがあるなら、弱火くらいの炎上なら思ったことは言います。感情を押し殺してまでこの仕事しようとは思わないんで。だから、僕はタレント向きじゃないと思う。芸人向きですね、イメージとしては。

――それは、リスクを負っても巻き返せるというような自信もあってのことですか?

久保田:そりゃもう、この世界入って42歳まで生きてきたノートの分厚さが違うというか。ほかと比べるもんじゃないけど、自分の中ではそう思ってるんですよ。他人が経験してないことをしてるし……神様にも言えないこといっぱいあるだろうし(笑)。その分、もしお笑いを辞めたとしても、何かしらで生きられるかなとは思ってます。 

周りはみんな「言っちゃダメ」って感情抑えるけど、それを聞きたいって人もいるんですよね。だったら自分の周波数をどこに合わせんの?って。そりゃみんなが大好きなラブソングばっかり歌えるんやったらいいですけど、そんなヤツいないし、僕はできないし。

とくに今なんてめっちゃ細分化の時代で、YouTube、ツイッターやインスタグラム、オンラインサロンもある。打席はめっちゃ立てるわけで、好きな人たちがいろんなところでジャンルを選べればいいのかなって。だから、全員に合わす必要はないと思うんですよ。昔はYouTubeとかなくて、「漫才で一番になれ」みたいな価値観しかなかったから、そこは全然違うでしょうね。 

「他人はええから自分に光当ててほしい」

――M-1グランプリといった賞レースでも結果を出したうえで、YouTubeやSNSのよさを取り込んだりする姿勢がすごく柔軟だと思います。

久保田:それはもう、リミッター外したんですよ(苦笑)。やっぱ僕も、上の人とかとシガラミがあるんですよ。急に漫才の出番なくなる時があったりして、「なんでですか?」って聞くと「芸が粗い」とか言われたりね。僕からしたら「いや、ウケてるやん」って思うんだけど、そういう大人のシガラミとか古い価値観に縛られるのが、ホンマもうええわって。

昔はスポットライトってスターにしか当たらなかったんですよ。だから陽の当たらないところで生きてきたけど、ありがたいことにM-1優勝後はいろんな媒体でチャレンジできるようになりました。許せないのは、最近舞台のスポットライトも浴びてないのに「オンラインサロンやYouTubeで稼いでます」って芸人。自分に酔ってそれを自慢されても、道端で酔い過ぎてゲロ吐いてる若者くらい見てられないと思ってます。あくまでも個人の意見ですが(笑)

――芸人なら舞台に立てと(笑)。ただ、とろサーモンのお二人も若手時代に関西の賞レースを総なめされてますよね?

久保田:それが東京に進出した時に、全部ポケットから落ちていったんですよ。いろんなものを持ってたはずなんですけどね。せっかく勝ち取ったトロフィーを売ったこともあります。それくらい金なかったんです。

ただその当時から、ずっと募金はしてました。きっかけは、けっこう前にやった大阪の単独ライブ。開演前に僕が水買いに行ったら、入口のところに親子連れがきてたんですよ。入ろうか迷ってるのかと思って、「席空いてるんで入ってください」って伝えたら、お母さんが子どもに「ねぇ、行きたかったんだけど……」って言いながらためらってる。 

その後、「子どもが好きできたんですけど、お金がないから雰囲気だけ味わわせたくて」と言って帰っていきましたよ。それ聞いて、「お金なかったら笑うことさえでけへんのか」って衝撃受けて。そっから募金するようになったんですよね。ちょっとええ話過ぎるけど(苦笑)、本当の話です。

――一方で、YouTubeチャンネル「もう久保田が言うてるから仕方ないやん〆」の「【お蔵入り動画】誹謗中傷者と会ってみた。」では、久保田さんに誹謗中傷した相手と直接会って話し合うというハラハラするような企画も敢行しています。

久保田:ネットで誹謗中傷する人間は、他人の気持ちを理解する能力がないんですよ。そらそうですよ。顔を合わせることもなく、スマホやPC画面の前で目を真っ赤にしてカチカチ文字打ってますから(笑)。僕の中で誹謗する人のSNSの略は、「S」寂しい人間が、「N」名前隠して、「S」存在意義をいいねで主張する、これに尽きるんですね。 

そもそも時間の無駄ですよ。1日24時間あるうち、約8時間は睡眠をとる。そして、ほとんどの人がだいたい9時~17時で8時間働く。合計16時間、食事をする時間を入れたら19時間ぐらい。準備も入れて20時間ですかね。この残った4時間を有効に使ってほしい。 

他人がどうとか、このタレントの発言がどうとか、それをSNSでほかの人に共有するとか……。そんな無駄で馬鹿な時間に使うなって。自分の人生、生きろや。自分にフォーカス当てろや。自分の人生設計さえない者が、夢を与える人間のプランを邪魔するなと思います。 

あと、誹謗中傷で傷ついた人の後処理についても、どっちつかずのコメンテーターの人や、ほかの薄いニュースと同じくらいの熱量でしゃべるニュースキャスターが、「誹謗中傷はやめましょう」って促しても無理ですわ。「家が炎上してますよ」って言うてるわりに水かけない、かけてるつもりだけど消えてないのと同じ。意見やなくて、お知らせにしか聞こえないんですわ。 

みんなが動き出す言葉を発信したり、あなた自身も動いたりしてくださいよて。真っ直ぐな熱い意見を言うとか、物事の核心を突くような人もいないから、もう自分で動いてみようと思たんです。以前、僕宛にそういうことやってほしいって声もたくさん届いてましたしね。 

“論より証拠”。僕の動画を見た人には、その証拠が証明になって正しい方向へと促せると思いました。案の定、「【お蔵入り動画】〜」には2〜3000件のコメントがきましたよ。ここまで読んで身に覚えがある人は、是非この動画を見てほしい。他人はええから自分に光当ててほしいと思いますね。 

YouTubeチャンネル「もう久保田が言うてるから仕方ないやん〆」の「【お蔵入り動画】誹謗中傷者と会ってみた。」

フェイクなヤツは無視されて劇場から淘汰される

――もともと人を楽しませるのは好きだったんですか?

久保田:笑うとか笑わせるとかは好きでしたね。学生時代は、めちゃくちゃポップでしたよ。この世界に入って、スーツ着て挨拶しない大人たちを見てから黒くなっていきました(笑)。そこから、もう全部解放していこうと。じゃないと、もう辞めてまうわと思って。 

もともと服飾系の専門学校に行こうとしてたところを、相方に誘われてお笑いの世界に入ったんですよ。だから、そこまでお笑いに固執してないというか。でも、やっぱ楽しかったから続けてるし、好きな先輩ってリアルな人たちが多かったんですよね。 

笑い飯、千鳥、麒麟とか、ゴリゴリの世代。そういう人たちと毎日おったんですよ。フェイクなヤツは無視されて劇場から淘汰されるような感じ。本物が多いですよ、あの当時は。南海キャンディーズもいたし、中山功太もいたし、今考えるとすごいメンバーでしょ? だから、あの頃の環境も僕の芸風に影響してるかもしれないですね。

――YouTubeチャンネル「もう久保田が言うてるから~」の動画でも、中山功太さんとの絡みが多いですよね。

久保田:あの人は会った時から変わらず、僕とキャッチボールしてくれてる気がします。自分の感情を捨ててタレントになろうって決めた人に投げると、ボールが返ってこない時のほうが多いんです。「そこは何も言われへんわ」って人もたくさんいるし。もちろん相方もそうですけど、中山さんもちゃんとボールを投げ返してくれる芸人の1人なんですよ。 

――中山さん以外にも、「もう久保田が言うてるから~」に出ている芸人さんたちは、久保田さんとの絡みがすごく楽しそうなんですよ。テレビよりも生き生きしているように見えます。

久保田:簡単な話ですよ。オリラジの藤森(慎吾)もそうですけど、テレビでは売れっ子の人たちと絡むわけでしょ? やっぱみんな光のところにいるんですよね。でも、芸人なんて根っこには絶対闇がある。普段は感情を出さないように、その部分を眠らせて生きてるんですよ。僕は闇のほうだから、会った時にそういう気持ちが解放されるんじゃないですか。全員、表に出さないだけで、心の奥の奥に久保田は潜んでるんですよ(笑)。 

僕もテレビと違ってYouTubeでは伸び伸びやってます。そういうトコだと思うんですけどね。正直に生きてるヤツが認められるってことでしょ? みんな陰で努力してるけど、好き過ぎるから努力って言わないだけで、それは正直じゃないですか。僕の正直は目の前でタバコ吸うのもそうだし、全部明け透けに見せるってところでしょうね。お笑い娼婦ですよ、僕は(笑)。 

プロが集まってんねん。「かわいそう」とかねぇから(笑)

――久保田さんの言動って、結果的に同業者を後押しするような動きにも見えます。

久保田:そんなつもりはないけど、何かの縁で会ってるんやったら一緒に飯ぐらい食えたらなと思いますよ。だからって僕は、芸もせずに金だけで後輩を囲うような大阪の先輩にはなりたくないんで。あくまでも芸事をやりながら、みんなの風通しが良くなればなとは思いますけどね。 

今って「これ言ったらアウト」とか、過剰になってる芸人がめっちゃ多い。たとえば芸人Aがバラエティー番組の「好きな女性芸人ランキング」で最下位になったと。それで本番中、別の芸人Bが「何か言い返しいや」ってフォローしたらしいんです。そしたら、それを見てた芸人Cが楽屋でBに「なんであんなこと言うの? かわいそうやん」なんてことを言い出す。いやいや、プロが集まってんねん。「かわいそう」とかねぇから(笑)。

雑誌の企画なら言い返しようがないじゃないですか。でも、テレビなら言い返せばいくらでも面白くできる。それが芸人やコメディアンであり、バラエティーですよ。「かわいそうだからやめな」って……(天を仰ぐように)考えられないっすわ。キレイな仕事ばっかりしてるから、道端でこけたぐらいの汚れで笑いにできなくなる。自分で自分の首絞めてることに気付いてないんですよ。

――たしかに演者側が過剰なフィルターを掛けるのはちょっと違う気がしますね。現在、洋服のデザインを手掛けるなど多彩な活動もされていますが、今後の目標はありますか?

久保田:もちろん東京でも自分たちの番組を持ってみたいし、あとはラジオやってみたりとか、洋服のブランド立ち上げたりとかですかね……。わかんないですけど。 

まぁ当面は笑いながらバラエティー出てとか、そんなんでいいすかね。感情押し殺してまで朝の情報番組に出たいとか思わないし。あの人(麒麟・川島明)は、天才やからMCもできるプレイヤーもできる。でも、あれだけテレビに出ていながら、まだ国民が知らないのは、ものすごくHなこと考えてる人だという事実ですね。これ以上はやめときます、川島さんこういうのもチェックされる方なので(笑)。 

僕はニュースのコメンテーターも、クイズ番組でボケずに出るみたいなこともでけへんかもしれない。でも、そちら側のスペシャリストもいて、その人はこちら側をリスペクトしてるだろうし。結局、人生なんてないものねだりで“隣の芝は⻘い”みたいなもんなんですよね。 

今はやれることを広げつつ、自分でバランス取って楽しい真ん中の境界線作っていこうかなと思ってます。最後に急にそんなこと突然言うなよと思われそうですが、実は僕、お笑いより池田エライザさんが大好きです。

  • 取材。文鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。4月20日に『志村けん論』(朝日新聞出版)が発売された。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

  • 撮影スギゾー。

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