こずるい菅、だんまりの安倍…「余韻なき五輪」に近田春夫が吠える | FRIDAYデジタル

こずるい菅、だんまりの安倍…「余韻なき五輪」に近田春夫が吠える

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政権、対IOC、電通…コロナ禍のオリンピックであぶり出された「ザンネンな日本の姿」 

東京五輪が閉幕した。すったもんだの末、異常なまでにミソがつきまくったコロナ禍のオリンピックに、日本人は何を学んだのか。近田春夫さんに真正面から切り込んでもらった。 

オリンピックにまつわるモヤモヤを一気に解消すべく、毎度のことながら忖度なしに語っていただきました。8月19日に新著『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』(文春新書)発売。(撮影:安部まゆみ)

「菅は、本質的な問題について答えずに済むやり方をわかってる」

——これまでのグダグダやモヤモヤを整理してみたところ、五輪関連の問題は軽く20を超えていて、いささか引きました。

近田春夫さん(以下 近):大体2013年の招致を巡る贈賄疑惑のところから、竹田ナントカって人の弁護費用にJOCが2億円も出しているんでしょ。いろいろありすぎてもう忘れてますよね。揮発性っていうんですか、置いとくと蒸発しちゃうぐらいに記憶ってすぐ薄れちゃう。閉会式の翌日にはもう、オリンピックの余韻もないもの。パラリンピックまでの間に、オリンピックの感動も蒸発しちゃってるんじゃないですかね。 

——延期も中止もなし崩しになって、いつの間にか開催することに。そこに菅さんの言葉を聞いた覚えは一切ありません。覚えているのは「安心安全な大会を」だけです。

近:それはあの人のいちばんの技術ですよ。それができるのは権力者の側にいるから。記者会見でも、同じ質問は2度できないという構造を作っちゃってるから、何でもいいから答えたらそこで終わっちゃう。官房長官時代からこずるくて、本質的な問題について答えなくても済むやり方をわかってるんですよ、あの人は。何か質問しても「それは答える必要ありません」と。安倍もそうだけど。 

2013年、招致に関して最後のプレゼンをする安倍元首相。思えば立候補ファイルに「この時期の東京は温暖で、最高のパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」と大嘘を書いたために、酷暑に倒れる選手続出となったのだ

「これで選挙に行かなかったら、日本人はもう何も語る資格がないよ」 

——とにかくずーっと、はぐらかされてきました。

近:これが通用するなら全国の小学生も、先生に怒られたら菅のやり方をすればいいんですよ。「なんで宿題やってこないの」って言われたら「それは答えられません」とか「そのご指摘は当たっていないと思います」と、シャアシャアと言えばいいんですよ。だっていちばん偉い人がやってるんだからサ。

今回のオリンピックでは、いろんな人たちがそれを学んだと思うんだ。安倍っていう人も結局だんまりを決め込んじゃって腹が立つし、小池百合子も開会式ではすごい地味だった。 

——唯一目立ったのは、天皇陛下が開会宣言をされているのに立たなかったところ。 

近:いくらなんでも気づかないもんなのかなって(笑)。今回、天皇陛下は「こういう状況でやっちゃって大丈夫なの? やめたほうがいいんじゃないの?」と、遠回しに言ってくれてたと思うんです。なのに加藤官房長官や菅は「宮内庁長官のお言葉として受け止める」って、あれもずるいですよ。

——天皇陛下は本当にご立派でしたね。

近:それは改めて思いました。天皇制が云々とか、否定とか肯定とかそういうことではなく、人間としてこの素晴らしい人が日本の象徴として有らせられるということは、自分たちにとって誇らしいことだなと。 

——それに比べて政治家たちは…。

近:今の政権はそういう体質の人が集まってやってるんだなということはよくわかった。こういう経験をして、どれだけの人が来るべき選挙に行くか、そこに答えの全てがあると思う。これで投票率がまた50%とかだったらもう、日本人は何にも語る資格がないよ。

コロナ禍で行われたオリンピックの、ここに至るまでのプロセスで、日本の権力者たちがどういう行動をとってきたのか。それに対する考え方を示すのは選挙しかないんですよ。オリンピックの話からそれちゃうけどサ。 

——いえ、この2年間で非常にわかりやすく、正解を示唆していただきました。

近:いろんな意味であぶり出された。オリンピックがなかったら同じ人たちが内々で仕事を回し合って、甘い汁を吸ってたと思うんですよ。だけど、それとアスリートの人たちというのは全く関係がなくて。そこだけはごっちゃにしちゃいけないところなんだよ。

この後、慌てて立ち上がった菅首相が背広のポケットを直している間に天皇陛下の開会宣言は終了。今回のグダグダを象徴するようなシーンだった

IOCは一流ホテルなのに、選手はなんで選手村の段ボールベッドなんですか?」

——IOCとオリンピック選手との関係性も、考えさせられましたね。

近:選手が何も言えない状況を作っちゃってる。選手はIOCに対してどういう立場かというと、ドッグレースの犬だよ。「俺らは犬なのか? ダミーのウサギを追いかけてるだけなのか?」って、それぐらいのことを、選手はIOCに対してなぜ言わないのか。

アスリートファーストというならIOCの上にアスリートがいるはずなのに、それは絶対ないもんね。だってIOCは一流ホテルに泊まるんだよ?「なんで俺たちは選手村の段ボールベッドなんですか?」って、誰も言わないじゃん。IOCも選手村で暮らして、自炊すればいい。IOCが選手より強すぎるという関係性について、選手はもっと声を上げるべきだよ。 

——東京タワー観光して参加資格証を剥奪された選手がいる一方で、バッハは銀座散策。

近:加藤官房長官の話では、バッハは入国後15日を経過してるんで、どこに出ても大丈夫ということですよね。今回いちいちすごいのは「なるほどね!」と思う言い訳や言い逃れを、みんなものすごくやるんだよね。 

——選手だってそのまま帰らず、ホストタウンに行って交流を深めたかったのでは。

近:全然かまわないわけですよ、ホントはね。なんか「アメリカの選手が国立競技場で喫煙」とかいう記事があって、中学生だったら怒られるかもしんないけど、喫煙でそこまで記事が出るってもう笑えるよね。

選手のタトゥがやけに増えたなという印象も強かった。「あんまみんな言わないけどサ、思うよね。それ言いたかったんだ。この人たちは日本に入ってきてから、一体どこのプールだったら泳げたんだろうって心配しちゃった」と近田さん

「広告代理店はクライアントの『お使い坊や』。自分より力のある人間を慮る」

——開会式や閉会式についてはどう思われましたか?

近:開会式は感想を聞きたいという仕事があったので一応観たんですけど、閉会式は最初に国旗を持って現れた、そこんところの音楽がやたらと暗かったんで、「なんか景気悪いな」と思って消しちゃった。そのあと古関裕而の「オリンピック・マーチ」になったらしいですけど、そこまでがまんできなかった。

開会式の演出に関しては、あんまり面白いとは思わなかったけど、出演者の専門職的な意味での技術は、みんなちゃんとあったと思う。今回いろいろミソがついちゃったし、先入観的にね、どこか意地悪な目で観ちゃうのもしょうがないんだけどサ、演じている人たちは、世間からそういう目で観られてるだろうなっていうプレッシャーの中で、ホントにものすごくよくやってたなと思いますよ。出し物が楽しめたかというのとは別にしてね。 

——ダサかった、ショボかったという感想も多かったですね。

近:僕もCMで広告代理店の仕事はよくやりましたけど、昔は監督が「それ最高だね」となったものにクライアントが「変更してくれ」と言ってきても、「自分はこれいいと思ったんで」と、絶対にアーティストを守ったんですよ。でも今は、全員とは言わないけど傾向として「クライアントが言ってきたんでNGにしてください」って、守ってくれないわけよ。単に「お使い坊や」になっちゃって、表現よりもそれこそ忖度とか斟酌みたいな、自分より力のある人間の心の中を慮る。 

——その結果、ワケのわからないものになってしまうというのはありそうですね。

近:オリンピックって、競技自体が枢機的なものなのに、開会式は本チャンの競技よりお金がかかってるわけでしょ。それも変だと思うよ。

MIKIKO氏の演出で観たかったという声も多い開会式。パフォーマーの人たちは痛い視線を感じながら、さぞや辛かったに違いない。閉会式はフランスのトリコロール飛行に全部持ってかれた感も強かった

「日本でなければできなかったと言われるのは、リーダーが素晴らしいからじゃないですよ」

近:あと、よくすり替えられるんだけどサ、海外の新聞記者や選手たちが、宿舎のスタッフやボランティアの人たちがいい人だったと言うでしょ。日本人は基本的にいい人だと思うんですよ。真面目だし優しいし、差別的でもないし。でもそれは権力者じゃないからね。すり替えたことを百も承知で「ほら見ろやって良かったじゃないか」と、話を置き換える人たちもけっこういる。 

——「日本でなければできなかった」と言われるのは、あながち間違いではないと思います。

近:でもそれはリーダーが素晴らしいからじゃないですよ。そこだけは勘違いしないでほしいんだよね。それを菅が偉そうに、責任を果たしたとか言うと、ホント腹立つよ。

今回はとにかく「みんなそれぞれ我慢を重ねているのに、これがOKだったらもうなんでもOKじゃん」っていうことが多すぎて、そこんとこどうなのよって思いましたね。

「例えば我々ミュージシャンとかは、ライブやったりすることに対していろいろ厳しく言われてるじゃない? だけど開会式のときの国立競技場の周りの人だかりや閉会式のフランスの様子を見ていると…」確かに、これで自粛ムードを保てという方が無理だ

「選手を応援するのとオリンピック開催に反対するのは別のこと」

近: 今回僕が話すことは、もういろんな人が話してるから新鮮味はないかもしれない。ただ僕はそれでもね、一人でも多く言ったほうがいいと思ってるんですよ。SNSの時代って、「これはもうあの人が言ってるからいいかな」ではなく「ああ、この人もそう思ってるんだ」という、それが力になる気がするので。 

——SNSも、例えば五輪開催賛成派と反対派で、ガッツリ分断されてます。

近:オリンピックを取り巻く政治的な問題と競技そのものは本来別のことなのに、そこをごちゃごちゃにして感情的になって、整理ができないまま自分と違う意見の人に対して喧嘩を売るようなことが多すぎて。

選手を応援するのとオリンピック開催に反対するのは別のことだよ。もうちょっと状況をニュートラルに眺められたら違うんだろうけど「それを言ってるお前が気に食わない」という分断が生まれているのはちょっと、みんな幼すぎるかなとは思いますけどね。どんな場合でも何を語るかではなく、いかに語るかだと思うんですよ。売り言葉に買い言葉では、相手は心を閉じちゃうよね。

数々の分断を生んだ五輪。写真は開会式当日のデモ。「1984年のロサンゼルスの時からアマチュアの祭典では立ち行かなくなっちゃって、そこから変なものになっちゃって。あそこでやめたってよかったのかもしれないと思う」

「小山田圭吾の問題は記事を書いた人も共犯で、彼だけを責めるのはおかしい」

——辞任ドミノも考えさせられました。

近:自分はミュージシャンだからサ、小山田圭吾の件で言うと、当時記事を掲載した3誌は軽くごめんなさいと言っただけで、事後検証をしていないですよね。『クイック・ジャパン』は1号分の発売を取りやめたようだけど。今回このことがなかったら、コメントとか出してこなかったと思うんですよ。

彼のやってしまったことは本当に良くないことだけど、当時記事を書いた人たちだって共犯で、小山田圭吾だけを責めるのはおかしいと思いますよ。特に山崎洋一郎(『ロッキング・オン・ジャパン’941月号』で小山田圭吾をインタビュー)なんて音楽評論家なわけじゃん。それで編集長もやってたわけでしょ。なぜそういうことになったのか、ちゃんと文章で説明しなければダメだと思う。

元ラーメンズの人の件に関してはちょっと違っていて、その二つは分けて考えるべきだという気はするんですよ。小山田圭吾は辞任で、元ラーメンズの人は解任で、菅は「彼のやったことは言語道断です」と言ったけど、それはすごく政治的というか、それが言語道断だったら例の森っていう人の発言だって、それこそ言語道断じゃないですか。

「小山田圭吾のあとを引き継いだ田中班(DJであり音楽プロデューサーの田中知之氏)は本当に大変だったと思いますよ。ご苦労様でしたと言いたいです」。個人的には近田さんの「オリパラ音頭」も聴きたかったです

「オリンピックが大きなお金を生むところに全ての問題がある。それはよくわかったはず」

——これからは規模を縮小し、毎回アテネでやればいいという意見もありますが。

近:ホントにそう思いますよ。大体種目が多すぎるよ。無理だもんね、観るの。そんなに種目増やしてどうするのって。ただこれから先、若い子たちで「よおし、僕は絶対砲丸投げやろう!円盤投げやろう!」とかっていう人の数よりは、やっぱりスケボーやろうと思う人の数のほうが多くなると思うんだよね(笑)。だってお金にならないじゃないサ。そのあとどこかの会社に就職したとして、そこから先の方が長いからね。だったらホントにもう、ワールドカップみたいなほうがわかりやすいかなと思うよね。

悪貨は良貨を駆逐するというけど、オリンピックはものすごく大きなお金を生むっていう、そこんところに全ての問題があるんだなということが、今回は前回以上によく見えましたよね。国と国とが競い合うこと自体がもう、世の中を平和にしないものになってる気もするし。

——山積した問題を解決していくために、できることはあるのでしょうか。

近:ワイドショーなんかはその時々の井戸端会議みたいなものだからサ、本質的な問題を理解するためには言葉で整理して、記事にしていくしかないと思うんですよ。そういう意味ではマスコミとか報道には責任がありますよね。今回の件に関しては徹底的に、どうしてこういうことになってしまったのかを、文章で残してほしい。終わったあとって検証しやすいと思うから、「今さらもういいよ」という風潮にさせてはいけないというのは感じます。

そして最後に、この国はいい国だなと思う。たとえこういう発言をしたところで、僕は殺されないと思うんで。全体主義の国から比べたら、まだマシですよ。その平和な国が平和じゃなくならないように、普段から心して生きていかないと。いつどうなるかわからないということは肝に命じて。

近田さんの新著『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』(文春新書/8月19日発売)。実弟・渡辺忠孝氏や作詞家の橋本淳氏、平山三紀(現・平山みき)氏との対談などを通し、稀代の作曲家・筒美京平、さらには本名である渡辺栄吉氏の魅力的な人間像に迫る

近田春夫(ちかだ・はるお) ’75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。タレント、ラジオDJ、作詞・作曲家、プロデューサーとしても活躍。

’81年にビブラトーンズを結成。’87年にはビブラストーンを始動し、日本語ラップシーンの黎明期を支えた。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)。現在はバンド「活躍中」、ユニット「LUNASUN」のメンバ—としても活動。著書に『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(近田春夫・下井草 秀/リトルモア)などがある。

■近田春夫さんの古希と音楽生活50周年を記念して開催されるイベント『B.P.M. Syndicate』の特設サイトはコチラ

  • 取材・文井出千昌

    フリーライター。学生時代に『近田春夫のオールナイトニッポン』を聴いてカルチャーショックを受けたまま現在に至る。物ごとを多角的に視るクセがついたのも近田さんのおかげと尊敬してやまない。

  • 撮影安部まゆみ写真アフロ撮影協力Asagaya/Loft A

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