横浜市長選 菅総理の盟友の大敗で浮上する「もう一つの解散問題」 | FRIDAYデジタル

横浜市長選 菅総理の盟友の大敗で浮上する「もう一つの解散問題」

彼の美声が聞けなくなる日

8月22日に投開票された横浜市長選は、周知の通り野党系候補者が圧勝した。菅義偉総理が全面支援した盟友・小此木八郎元国家公安委員長(56)が大敗を喫し、引退を表明。横浜を地盤とする菅総理のお膝元での敗北と受け止められ、今後の政権運営に支障を来たすことは必定だ。

退陣につながる「危険水域」と呼ばれる支持率30%割れという調査結果も出始め、総裁選や解散の話題で永田町は揺れている。

そんななか、「もう一つの解散」が静かに取り沙汰されているのだ。

自民党ベテラン秘書はこうつぶやく。

「(小此木)八ちゃんが政界引退をしたら、ギインズは解散かな…」

議員界隈では名の知られていた「ギインズ」(松山政司参議員議員提供)
議員界隈では名の知られていた「ギインズ」(松山政司参議員議員提供)

「Gi!nz」(以下、ギインズ)とは、1997年5月、当時30代の若手参議員議員だった林芳正・元防衛相(60)と山本一太・現群馬県知事(63)のユニットが始めた「政治家バンド」だ。ミュージシャンが政治色の強い歌を歌うことはあるが、現職の国会議員がバンドを組むことは異例のことで、結成当初は大変な注目を集めた。

だが、金権政治や長老支配を批判するメッセージ性の強い曲を望む山本氏と、あからさまな批判を好まない林氏との「音楽性の違い」で、二人は決別。二度のメンバー交代を経て、2001年以降、林氏、浜田靖一元防衛相(65)、松山政司元内閣府特命担当大臣(62)、そして小此木氏の4人で、派閥の枠組みを越えた「ギインズ」が再結成された。

作詞・作曲を手がけたのは林氏。ロック、ポップス、ボサノバ調の曲に、地方分権や骨髄バンク事業を応援する歌詞を載せた。議員活動に支障を来たさないよう4人は夜に集まって練習を繰り返した。

ギター・ボーカルの松山氏は振り返る。

「それぞれの会議や会合後の練習で、夜9時とか10時に赤坂や千駄木の狭いスタジオに集まった。4人のボーカルバンドだけど、メインボーカルは八ちゃん。八ちゃんは音域が広く、フランク・シナトラやビリー・ジョエルも上手に歌えるからね」

ギインズの司会役で「MCハマー」と呼ばれた浜田氏もこう回想する。

「4人の中で、小此木先生がいちばん歌が上手い。スティービー・ワンダーを始め、ジャズテイストの曲などおしゃれな曲も歌える。バンドマスター(林氏)はピアノ、松山先生はギターも弾けて、私は司会の腕を磨いた(苦笑)」

宇崎竜童やクリスタルキングとセッションしたことも(松山政司参議員議員提供)
宇崎竜童やクリスタルキングとセッションしたことも(松山政司参議員議員提供)

2005年には8曲のオリジナルソングを収録した一枚2000円のCDも発売し、収益の全額を骨髄移植推進財団に寄付した。コロナウィルス感染拡大前までは骨髄バンク支援や被災地支援、障害者支援団体のためにチャリティーライブも開催。

そんな話題に事欠かないバンドだったが、トニー・ベネットに憧れていたメインボーカル・小此木氏の政界引退で、ギインズの活動は今後どうなってしまうのか。

当選同期でもある浜田氏はため息混じりにこう語る。

「横浜市長選の出陣式の時点で、負けたら次の選挙は出ない、と話していた。一本気な気質なので永田町に戻ってくることはもうないだろう。20年以上一緒に歌ってきた。彼とはいくつもの思い出があるんだよ……」

バンドマスターの林氏は総理大臣を目指すにために参議員議員を辞職し、鞍替え選挙に臨む。相手は山口3区で当選10回を誇る河村建夫・元官房長官だ。

総理の椅子を狙う者、政界を去る者…とギインズのメンバーたちはそれぞれの岐路を迎える。「今後のことはこれから話し合う」と浜田氏は述べたうえで、寂しそうにこう続けた。

「あいつ(小此木氏)の信念だから、口にしたことを違えないこともわかるんだけど、また戻ってくればいいのに……」

国会での顔とは別の「議員のもうひとつの姿」が見られる貴重な活動だった(松山政司参議員議員提供)
国会での顔とは別の「議員のもうひとつの姿」が見られる貴重な活動だった(松山政司参議員議員提供)

ギインズの再結成はなるか、そのまま解散となるか、永田町では静かにその動向を見守っている。松山氏は語る。

「横浜市長選への出馬を決めて八ちゃんからすぐに電話があった。話の最後に『ギインズは続けるんだろ?』と尋ねたら『松ちゃん、当たり前だよ』と力強く返ってきた。コロナで控えていたけど、今年12月のクリスマスのチャリティーコンサートは開催したい」

選挙の結果はともかく、「年をとっても好きなものに力を注ぐ情熱」はひとの心を動かすものがある。今年のクリスマス、“八ちゃん”の美声は冬空に響くのだろうか。

  • 取材・文岩崎大輔

岩崎 大輔

ライター

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